Epi15 こんなことになるなんて

 眼前に広がるパラダイスは、夢でも見ているのではないだろうか。

 明穂の下着姿。それは出る所は出て、引っ込む所は引っ込み、促されて着替えようとしてズボンを脱いだら、歓喜の声が上がり下着姿のまま、俺に接近してきた。


「大貴。下ろしてもいい?」

「え?」


 なにを。という前にするっとパンツが下ろされて、俺は今丸出しです。

 なにがって、アレ。しゃがんでいた明穂の眼前に繰り広げられる痴態。


「生は初めてだー」


 明穂って、きっとすごいスケベなんだ。


「いいよね?」


 もう返事もなにも無い。

 なすがままで明穂に蹂躙されました。


「あ、あたしにも遠慮しなくていいからね」


 その後、乱痴気騒ぎが収まると服を着て、満面の笑みを浮かべる明穂が居た。


「これでまた一歩。次はいよいよかなあ」

「えっと、なにが?」

「キスでしょ、ハグでしょ、イジリでしょ。その次はもうあれしかないじゃん」


 脱童貞。

 脱処女。


「ってこと?」

「そう」


 お母さん。俺もいよいよ男になる時が近付いてます。

 じゃない。


「家に電話しておかないと」

「まだしてなかったの?」

「明穂に犯されてたから」

「犯してないよ。同意の上でちょっと頂いただけじゃん」


 スケベな女の子は好きですか? 俺は意外と、いやいやかなり好きだったようです。

 家に電話したら「帰って来るんだよね?」と念を押された。泊まること自体は明穂の両親が許可してればいいんだけど、俺がそのまま帰らないと母さんが泣き叫ぶそうだ。やっと和解できたと思ってたのにって。パソコンも買ってあげたのに、とかいろいろ煩いから、明日学校が終わったら必ず帰ると伝えた。


 そう、明日も学校はあるのだ。


「明日学校あるんだけど」

「同伴出勤?」

「同伴登校じゃないの?」

「夫婦みたいでいいよね」


 このままなし崩し的に関係を持ってもいいのだろうか。


 夕食の時には明穂の父親も同席してた。


「泊り?」

「いいよね?」

「あんまりおいたが過ぎると禁止するけどな」

「そこは節度を持って行動するから大丈夫」


 その節度ってのはどの程度までが許容範囲なのでしょうか。


「あの」

「なんだい大貴君」

「節度って、どの程度が許容範囲なのでしょうか」

「そうだなあ。妊娠させない。ってのかな」


 壊れてる。

 この家の家族は妊娠さえさせなければ、きっと乱交も厭わないのだろう。


「それだけですか?」

「他に何が? あーそうか。性交がどうかってことか。まあ、その辺はねえ。やるなって言ってじゃあ厳しく制限したら、それに従うのかって問題がある」


 一呼吸おいてから。


「大貴君の年齢の時に自分がどうだったか、と考えれば当然そんな制限無視するに決まってる。守れない約束事を押し付けるくらいなら、一定程度は許可する代わりに、それ以上は駄目の線引きさえしっかりしてればそれでいい。それが妊娠」


 一理あるのか、それとも経験則なのか。


「大貴。だから言ったじゃん」

「えっと」

「大丈夫だって」

「でも」


 明穂のお母さんからもひと言。


「明穂の体を思ってくれてるなら、きっと大事にしてくれるでしょ。だったら駄目って言えないし。大貴君のようにちゃんと考えてくれるなら、間違いは無いってそう思えるからね」


 だそうで。

 という事は、この先の関係も近い将来あるってことなんだろう。明穂はすっかりその気だし。

 緩い。実に緩い。でも、それに甘えて羽目を外せば家族の期待を裏切る訳で。

 許す代わりの線引きか。


「まあ、父親の立場としては、絶対に許さんって言いたいんだけどな。それを言うと明穂がね。暴れると手を付けられないじゃじゃ馬だから」


 なるほど。あの感じからしてなんとなく、そうじゃないかと思ってたけど。一度言い出したら聞かないし。強引だし。


 食後は明穂の部屋でまったり、ではなく、少し勉強しておくことに。


「勉強少し疎かになってたから」

「あたしは大丈夫だけど、大貴は小説も書かなきゃいけないもんね」


 明穂と一緒に勉強してるけど、要領がいいのか教え方も上手で、わからなかった部分がすんなり頭に入ってくる。伊達に学年五位以内に居る訳じゃなかった。勉強する上でのコツみたいなのを、ちゃんと把握してるんだなって。


「さすがだね。俺一人じゃこんなにできないし」

「学校の勉強なんてただの積み重ねだし、むつかしいとか無いんだよ」


 勉強を終えてやっとのんびり、と思ったら「お風呂入ろ」で、無理やり風呂場に引き摺り込まれ、二回戦となったのは言うまでもない。


「もう勘弁して」

「鍛えないと駄目かな?」

「そういう問題じゃないと思う」


 明穂のすべてを見てしまい、いや、見せ付けられて脳みそテンパってる間に、しっかり蹂躙されてしまいました。一切躊躇ないんだもん。


「目に焼き付いてる」

「なにが?」

「明穂」

「良かったね。これで一人でも楽しめるじゃん」


 感触も手に残ってるし。


「思い出してできるね」


 ベッド、ちょっと狭いけど並んで寝るなんて、これも初体験。

 すぐ隣に明穂が居て温度が伝わってくるし、ちょっと動くと触れるし、刺激が何度も襲ってくるから寝られるかわからない。


「あ、あき、ほ?」

「なに? 三回目あり?」

「無い」


 止め処なき欲求の果てに俺は搾り尽されるのだろう。ここで精魂尽き果て干からびるのをただ待つのみ。

 明穂の手の感触がずっと続く。


「寝られないんだけど」

「あたしはこのままがいいな」

「ちょっと収まりが」

「あたしの手、だけじゃなくて全身が大貴を求めてるんだよ」


 よくこの状況を両親も許すものだ。普通に考えてあり得ない。ラブコメでもここまで頭のおかしい展開なんて無い。あ、でも、俺の小説にはこんな展開沢山ある。

 これってつまり、変態小説の再現?


「もしかして小説の再現してる?」

「してないよ。大貴のすべてが欲しいだけだから」


 一滴残らずとか、なにをって感じだけど。


 その内、草臥れてお互い寝てしまったようで、朝になると抱き合っている状態で目覚めた。


「顔近い」

「おはよ」


 ベッドから出て自分の姿に気付いたけど、時すでに遅し。やっぱり喜ぶ明穂が居た。


「朝からサービス精神旺盛だね」

「違うと思う」


 いつのまにかパジャマを剥かれてマッパだった。

 そのままベッドから出るから明穂が喜んだわけで、更には明穂もまた同じ状態で、朝から卒倒しそうな状況に陥り服を着るまで、落ち着けなかったのは言うまでもない。


「朝からってのもいいかなと思ったけど」

「無いから」

「大貴は欲がないなあ」

「明穂が性欲過多なんだと思う」


 やっぱあれだ、泊りは歯止めが利かなくなるから、夜には帰るようにした方がいい。俺もつい流されちゃうし明穂も抑え利かないし。この歳で互いを貪るなんて健全じゃ無いでしょ。

 次のステップに至ったらきっと互いにケダモノになるのは間違いない。


 朝食を済ませ両親にしっかり挨拶し、学校へと向かうんだけど、すごく照れ臭いし、この近辺で学校の誰かに会ったりしたら、逃げ出したくなるかもしれない。


「この近所に同じ学校の人居ないから」

「そうなの?」

「見たこと無いよ。電車はね、同じ方向の人沢山居るけど」


 つまり電車内では多くの人に目撃されると。

 変な噂立っても嫌だな。


「気にしなきゃいいんだよ。あたしはむしろ宣伝したいくらいだし」

「いや、それもどうかと」


 しっかり腕組んで密着しながら登校する。こんな生徒他に居ないし。

 学校最寄り駅に着いて歩き始めると、他の生徒の視線が痛い。車内でも結構痛い視線が突き刺さってたけど、明穂はそんなの意に介さないんだもんな。神経が図太すぎるのか人は人、自分は自分で割り切りがすごいのか。


 校門には風紀委員会の面子と先生が一人立ってる。


「同伴出勤も結構だが、お前ら、少しは遠慮しろ」


 と先生に突っ込まれても明穂は離れないし。

 この学校、規則が緩く生徒の自主性を重んじるって建前があるから、先生も煩く言わない。


 こんなことがあって、校内で噂のカップルなんて、囃し立てられることも。

 仲睦まじい、それ自体は問題無いけど、校内で如何わしいことはするなって、先生に注意されて、「公私は弁えてます」と明言して突っぱねる明穂だし。

 やっぱり不思議なんだよね。

 なんで俺なのか。そしてなんでここまでべったり張り付くのか。

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