不可解な記録者の雑記録

@kayu_recorder_

第0話 不可解な未観測情景

 ある放課後。商店街らしきところを歩きながら、二人の少女が話をしている。都市伝説の話だ。

「ねぇ、並行都市っていう都市伝説知ってる?」

「何それ。」

 答えた茶髪の少女のは、さして興味もなさそうにスマホをいじっている。明らかに興味がなさそうだ。しかし、話しかけた黒髪の少女はめげずに話しかける。

「私たちが生きてるこの世界と、全く同じ時間の軸で、だけど違う空間。そんなところに、神椿市って言う都市があるんだって。」

「神椿?」

「そう、神椿。それで、たまにそっちの神椿市に迷い込んじゃうひとがいるって。」

「へぇ、本当にあんたは都市伝説好きだね。」

「だって、興味あるんだもん!共有したいじゃん?」

 まぶしいばかりの笑みを浮かべ、黒髪の少女は笑う。茶髪のほうはというと、一瞬だけ、眩しそうに目を細めた。それで?、と続きを促す。

「よく続きがあるってわかったね!そう、それでね?その裏側にあるっていわれてる都市があるの。」

「ほう?」

 茶髪の少女が少しだけ興味を示した。ここぞとばかりに食いつく。

「そこは、柊市って呼ばれてるらしいんだけど、神椿市から一定数迷い込むひとがいて、そこに迷い込む人はね、死んでるんだって。」

 茶髪の少女は、なぜかひどく興味をそそられたようで。スマホをいじる手を止めて黒髪の少女に向き直る。

「あ。興味示してくれたっ!!えっとね~」

 二人は交差点を渡る。

 目の前を、別の二人の少女が通り過ぎていった。桃色の髪の少女と、濃い青色の少女である。しかし、誰も気づいていない。

 ぶつかりそうになったというのに、黒髪の少女たちは避けようともしない。

「ねぇ、今私たちの話してたね。」

 桃色髪の少女が口を開く。嬉しそうだ。

「私たちって言うか、神椿市の話だけどね。」

「『魔女』の話はなかったねぇ。でも、私たちって有名人?」

「なわけ。私たちって誰にも認識されないじゃんか。」

 諦観した様子で濃い青色の少女は言った。肩を竦める。

「それにしても、柊市・・・?ってなんだろう・・・」

 そう、今回の主人公は、冒頭の少女たちではない。そして、私でもない。この、現実にはない髪色をした少女たちが、主人公である。

 これは、私の雑記だ。不可解な少女たちの、不可解な記録。未観測だった情景を、廃棄都市、と呼ばれていた柊市から記録しよう。

 魔女たちの生き様は、私的にとても素敵で、綺麗だから。


 私はここでそろそろお暇しようか。

 それでは。

 またいつか。

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