49:大黒朱鳥はかく語りき

 正直に言うと、育てると言ったのはその場の勢いだったと思う。

 でも不思議と後悔はしなかったし、何とかなるだろうとも思った。

 ほら、実家が近いし、姉さんたちもわかってくれるかなって。

 ……実際はまず説教を食らったけど。

 けど最終的にはやっぱりわかってくれたし、沢山協力もしてくれた。


 璃亜夢さんのお母さんも、あんなことは言っていたけど、孫を気にしている様子だった。

 何かあれば連絡をくれるし、金銭的な援助も申し出てくれた。

 茉莉花さんの保育園での歌の発表会のことを伝えると、行かない、と断られたけど最終的には見に来てくれた。

 歌い終わって舞台上から手を振ってくる茉莉花さんに、手を振り返している様子に僕も安心した。


 少しずつ少しずつ、変わってきているのだと。

 それが嬉しかった。


 璃亜夢さんは変わったのだろうか。


 璃亜夢さんが母にはならないと決めたことを後から教えてもらった。

 連絡は取れる状態にあるし、誕生日にプレゼントを贈ってくるけれど、彼女は茉莉花さんをまだ迎えに来ない。

 人殺しは母親になれない。きっと今もそう思っているのだろう。


 だけど璃亜夢さんがそう思っていたって茉莉花さんが璃亜夢さんをお母さんだと言うなら、璃亜夢さんは間違いなくお母さんなんだ。

 その事実を彼女は思い知るべきなのだ。


 僕はいつだって夢見ている。

 君たち二人が、並んで、笑って歩いている光景を。

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