48:未来に笑顔が残るなら

「茉莉花は貴方の籍から抜いて、私の子とします。でも私は育てません。育てられません。貴方と同じようなことにならないとも限りませんから。茉莉花は……大黒さんが面倒見てくれる、そういうことになりました」

 面会室の透明なプラスチック板を挟んで戸籍に関する書類を見せながら、母は璃亜夢にそう告げる。

 その言葉に璃亜夢は驚きしか出てこなかった。


「あの人、バカじゃないの。結婚もしてないのに、子供とか……、有り得ないでしょ」

「そうね。でも私はこれで良かったと思ってる。大黒さんには申し訳ないけど、私に貴方の娘は荷が重いわ。……孫なのにって責められてもしょうがないわ」

「私は責めない。私は娘に向き合えないから」

 璃亜夢は俯きながらそう呟く。


 有り得ない。

 本当に有り得ない。

 だけど嬉しいとも思えた。

 あの人は、私も茉莉花も諦めないでいてくれたのだ。

 いつか病院に連れて行かれた夜に、船越と話していたことを思い出す。

『でも欲を言うなら、僕は成長した茉莉花さんが璃亜夢さんと並んでいる歩いている姿が見たいなあって思ったんです。お互い笑顔ならなお素敵だ』

 その未来の実現を望んでいてくれているのか。

 璃亜夢はただ嬉しくて泣いてしまった。

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