21:そこからが更なる過酷(注意)
※今回の話のラストは著しく気分を害される恐れがありますのでご注意ください。
育てるのかと永延に聞かれて、璃亜夢は何も答えられなかった。
犬などペットの世話もしたことがない自分に、こんな生き物の世話ができるのか。
……正直、出来る気がしなかった。
しかし連れて帰ってきてしまった以上、やるしかない。
そもそも何を食べるのか知らない。
本来の親と子供なら、母が母乳を与えるものなのだろう。
しかし璃亜夢としては自分の殆ど平たい胸から母乳が出るか不思議だった。
牛乳で良いだろうか。
璃亜夢はそう思ったが、哺乳瓶は当然なかったから、タオルに温くした牛乳を染み込ませて吸わせることにした。
流石に無理かと璃亜夢は諦め気味にやってみると、意外にもこの小さな生物はタオルの端を口に咥えて、少しずつ牛乳を吸った。ちうちうとタオルを咥える様子に、こいつはやっぱり生きてるし、母乳ではなくタオルを咥えさせられている様子が哀れに思える。
「ふふっ」
璃亜夢はタオルを口に咥えている姿を無様に思えてしまった。
***
この生物との奇妙な同居生活は日中は平和だった。
夜になって一変する。
それまで大人しかった生物が急に喚きだす。
疲れからうとうとと転寝していた璃亜夢だったが、突然鳴き声をあげる生物に璃亜夢は慌てて起き上がる。
また腹を空かせたのかと思い牛乳を温くして飲ませて一旦静かになる。
しかし一時間もしない内にまた鳴き声をあげる。
また腹を空かせたのかと牛乳を与えようとしたが、今度はタオルを咥えようともしない。
嫌な予感がしてこいつの尻を触るとしっとりと濡れており少し臭った。
そもそもおむつなんて用意しているはずもなく、適当にタオルを巻いていたが水みたいな便が漏れている。
その光景に璃亜夢はげっそりとする。
適当にティッシュで拭いてまたタオルを巻くと静かになった。
それからその生き物は数時間毎に喚き、璃亜夢を呼びつけた。
腹が減ったと鳴いて、股が気持ち悪いと喚いた。
それ以外でも喚き散らかし、璃亜夢はこの意思疎通ができない生物に震え上がった。
寝ることも許さず鳴き喚く生物に精神が参っていく。
数ヶ月腹が膨らんでいき精神的に追い詰められていく感覚に苦しんできたが、まだ夜は眠ることを許されていた。
だけどこいつはそれを許さない。
眠ろうとするとすぐに起こされ、理由もわからず鳴き喚く生物の機嫌を取らなくてはならない。
『母親』でも辛いのに、璃亜夢にその自覚なんて欠片もない。
軽く始めた『飼育』にあっさりと心が折れた。
次にそいつが鳴き喚いたとき、璃亜夢はそいつの口にタオルを詰め込んだ。
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