犠牲者第1号


 隣のおばさんが気絶して、レヴァル、非常に困惑していた。マセコが横目でにらんでいるのも不気味だった。


 そして、マセコ、ドアに向かって叫んだ。


「ハカセ! まずいぞ、すでに犠牲者が」

「犠牲者?」

「異世界のエルフが外にいると、ご近所で大変なことが」


 ハカセがそっとドアを開けた。


「何事ですか」

「だから、レヴァルをこのまま外においとくと、ああいう結果が続いていく。かくかくしかじかで……、事件は現場で起きている!」


 ハカセ、泡をふいてる鈴木トメ(仮名)を研究者の視線でじっくりと観察した。ある方からの目撃情報によると、

『昭和37年生まれ、7人姉妹の末っ子鈴木トメ。59歳(ツィッター掲載情報)』


「これは、まずいです」

「さっきから、そう言ってる」

「ちょっと、お待ちなさい」


 ハカセは再びドアを閉めると、しばらくして、A4サイズのバインダーを持って出てきた。


「な、なんですか?」

「回覧板です」

「へ?」


 マセコ、昔から、このサラの育ての母を苦手としていた。たいていマセコの常識を超える行動をしてくるからだ。


「か、かいらん、回覧板?」


 ハカセ、メガネをクイっと顔の正面にもどすと、すこぶる冷静な声で表情も変えずに解説した。


「回覧板とは、この町内、15箇所の家々を順繰りにまわして、町の出来事などを、お知らせをする連絡版のようなものです。大抵のお知らせはお役所から回ってくるのですが、時に個人的にお知らせが必要な場合、組長より不定期で回覧板をまわすことがあります。たまたま、今年は私が組長当番です」

「いや、そこじゃなくて。なぜ、いま、回覧板?」

「ご近所の方々に、美形の男がいますという注意喚起を回覧いたします」

「ハカセ!」

「なんですか」


 マセコは顔を左右にふった。


「ハカセ……、それ、逆にまずい」


(つづくかも・・・)

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