22
「……
そう言ってオルダはミュートを見た。ミュートは一瞬
「ありがとう、オルダ」
それを聞いてオルダは、
「…………誰かと別れるのって、こんなに悲しかったんだね……一度、ハックを殺されたのに……友達を殺しちゃったのに……いつの
オルダは、
「で、あたしはどうしたらいい?」
ミュートは、オルダを真っ直ぐ見詰めた。
「なにもしなくていい。さっきのハックと同じ、ただ私に身体を
ミュートは数歩オルダに近付くと、「じゃあ、はい」と言って、両手を伸ばし肩の辺りまで上げた。オルダは、恐る恐るミュートに近付き、両手を伸ばした。だけどその腕は
「い、いいの? そんな簡単に身体を差し出して、……降参は
ミュートを見るオルダの表情はすごく
オルダの気持ちも少し分かる。ミュートはいつだって他人に心を
ミュートは他人との距離がすごく近いんだ。あけすけで
ミュートは腕じゃ足りないとばかりに、両手の指までぴんと伸ばした。
「そうかもね。でもこれしかないんでしょ?」
「う、うん、まぁ、でも……」
「ほら、いいから」
そう言ってミュートは自分からオルダに近付いていった。そして、一歩
「おお! なんか力が
そうミュートが
「ねぇ、こんなのはどうかな。私の
……そして……もしかしたら私は、普通の人間に戻れるかも、しれない。……それともそのまま死んじゃうのかなぁ……。
どうかな、あなたにとっては悪い話じゃ、ないんじゃない。……私は
オルダのその
「そんなの、いらない」
薪が
「あたしは
そしてミュートは、強く、まるで締め付けるように、オルダを
「……まぁ、でも、
残念そうなオルダの顔が、その言葉で
やがて2人の身体の輝きが同じくらいになり、光が消えた。オルダはミュートから身体を離し、「終わり」と小さく
僕はミュートに近付いていった。ミュートは右手を左肩に乗せ、左腕をぐるぐると回しながら、僕に笑顔を向けた。身体の
ミュートの笑顔は晴れやかだった。まるで若返ったように
「この
とオルダは
「……ち、ちげえ、今のは俺じゃねえ、この
と
「猫の
「……ん、ああ、まあな、魂を抜いたわけじゃねえからな。……たくよ、入り込むのに苦労したぜ。あと僅かでくたばるってのに、必死こいて生きようとしてやがったからよ。俺が乗り移りゃあ助かるってのに、なかなか身体を明け渡さねえ。今だってよ、気ぃ抜くと身体の
ミュートはハックからオルダに視線を移し、優しげに語り掛けた。
「この猫ね、親に
「……へえ、そうなんだ。というより、知り合いだったのね、この猫ちゃんと」
「うん、
……だからさ、なんて言えばいいのかな……
オルダがこれからどうやって生きていくにしても、誰かの痛みを
そのミュートの言葉に、オルダは何か言葉を返そうとするけど、ただ
オルダは短い
「……考えてみるよ。考える。必ず考える。絶対に」
それを聞いてミュートは、この話はおしまいとばかりに、両手を上げて一つ伸びをすると、その場に腰を下ろした。
「それで、あんたらはこれからどうするの?」
「……どうって?」
オルダもミュートと同じように腰を下ろした。ハックもオルダの隣に前足を伸ばして
「今までみたいに人助けをして回るの?」
「うん、そのつもり。じゃないと
「やっぱり、人を食べながら?」
ミュートに
「
長い
「……本当は違う……ホントはただ、元の姿に戻りたいだけ……。ハックと一緒に人間に戻りたい……。戻る方法、ずっと探してるけど見付からないの……。手掛かりの一つさえ、見付けられない……。……戻る方法なんてないのかもね……。
ハックの身体はなくなってるんだし……どこをどんなに探しても見付からなくて……魔女になった時に、多分私が
私のこの身体だって、元の部分なんて残ってないのかもしれない……数え切れないほどの人を食べて、
人に戻りたい……
「もし……」とミュートはためらいがちに切り出し、少しの
「……ハックには言ったんだけど……その、もしも、あんたらがよければ、手伝おうか? 元に戻る方法、探すの」
「え、……どうして?
オルダはきょとんとした顔を浮かべた。
「……私たち、あなたたちにとんでもないことしたんだよ? 寿命と身体を奪って、……そして殺そうとした……。それにもう、あなたたちの旅は終わったはず」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます