城の町 傲慢忠義
1
僕たちは
「
「うっそーん」
「……。ごめん、忘れるね」
「なんでよ。
「
「なにが?」
「
「それはすぐにはね。やがて消えるでしょうけど。まあ
「選ばれた言葉だけが残るんだね」
「
「……にしても、
「ちょっとなに
祭の町を出てから、3日が
「ねえ、ミュート? 本当にこの道であってる?」
「いや、だってずっと
「まあ、そうだけど」
「この
「城の町かぁ。どんなところなんだろ?」
「そりゃあ、大きなお城が
「それは少し楽しみかも。あ、でも気を付けなきゃね。人さらいが出るっていうし」
「まさか、
「どうしたの?」
ミュートは鼻をスンスンと鳴らし始めた。
「なんか
「えっ?」
「ホントに?」
「うん、ホントだよ。
「……それホントにいい
そんなやり取りをしながら進む
「あ、ブドウだ」
といきなりミュートが声を上げた。遠くの
「
「うまそー」
「ダメだよ。
「食べませんー。でも
そう言ってミュートは、顔を近付けてしげしげとブドウを
「ふふ、ありがとう」
と
「す、すいません。この人、ブドウを食べてるわけじゃ……」
「見てたから、知ってるよ。ごめんね、
「……いえ、大丈夫です」
「君たちは町の人じゃないよね?
「いえ、違います。その……」
話していいんだろうか、
「ゆってみゆってみ、おねえさん、口が重いから」
「かたいでは……?」
「いいから、いいから」
人の良さそうな笑顔に
「へー、君たち、そんなくだらない
おねえさんは
や、やっぱり
おねえさんは、
「なーんちゃって!
と言ってお
いい人そうだけど、
「ごめんね。お
「おねえさんが育ててるの?」
「ええ、そうよ。
「じ、じゃあ
ミュートは
「あ、あの」
「なんちゃって」
と言って、おねえさんはまた、お腹をよじって笑い出した……。それが
「ん~。あまくて、おいしー」
「でしょ?」
「はい。やっぱりブドウはそのままが
「
「あたし、お酒はダメらしいんです」
「らしい? なにそれ?」
おねえさんはクスクスと笑う。
「いや、よく分かんないんですけど、
と
「ふふ。それは飲まない方がいいかもね」
「そうなんです。
と
「
「僕たちはそういうんじゃ……」
「そうなんだ。
「いや、だから……」
「ねえ、おねえさんは何してたの?」
「ん? ああ、そういえば、名前言ってなかったね。私はメロー。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくです。あたしはミュートっていいます。こっちはサンデー」
「よろしくお願いします」
「それで、なんだっけ……そうそう私はただのお
「その、大丈夫なんですか、人さらいがどうとか……」
「んー? あはは! 大丈夫よ。ただの
「いや、メローさんキレーだよ」
「こんな日焼けして、
「キレーだよー」
「もう、
「あ、ありがとうございます……」
「いっぱいお食べ。
「は、はい」
「それでぇ? なんだっけ。人さらいに。そうそう、
「そうですかぁ……」
「
「
「あー、えっとね。お城の
「へえ、そうなんですか」
「といっても私たちもよく知らないんだけどね」
「えっ?」
「外の人たちはそのほとんどが
「だけど……?」
「あそこの人たちは、すっごく
「たくさん?」
「ええ、町の半分くらいの
「お城に?」
「ええ、そうよ」
「そんなに入ります? いくらお城でも」
「ふふ、おっきなお城だからね」
大きなお城ってことはまだだいぶ歩くんだろう。お城はまだ影も見えない。
「でね、ほとんどのことをお城の中で
「えっ? じゃあ……!」
「うん。魔石の工場がある。でも分からないよ。
「ですよね。すいません……」
「……でも」
メローさんは歩く速度を
「メローさん?」
僕の問い掛けに、少しの
「あの新しい王様は分からない」
「王様ですか?」
「ええ、少し前に、
「なんですか……?」
「……それからなのよね。人さらいの
「……でも、誰にも見付からずに何人もさらえます?」
「あそこの人は、
「え? なんでですか?」
「だってぇ、町の人はさらわれてないし、
「でも、そんな……!」
とミュートが声を上げる。
「
メローさんはそう言って、目の前の
「……だけど」
「ミュートちゃん、ここはねぇ?
メローさんは自分の右手の人差し指を、左手で
「こんな
メローさんは、自分で
「そういうのやめた方がいいよ。そんなことしてると、今にでも
ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ。
メローさんは僕たちをじっと見ながら、何度も、ぎゅ、を繰り返した。
僕たちは言葉を
「なーんてね」
そう言ってメローさんは、指を
「
「もう!
「ふふははははは! ……ごめんごめん。
「もー!」
「ごめんごめん。ブドウあげるから、
本当に
「まあ、
「どうして?」
「
「え? ないの?」
「本当に
「ホントに王様?」
「だよねえ」
僕たちは小さな町に
「まあ、そんなわけだから、そこんところは
メローさんは、ある建物の前で立ち止まった。
「さあ、着いたよ」
「
「何言ってんの。お城だよ。お城」
目の前の建物はやたら
「まさかー。
「ふふ。
「え? じゃあ……え? どういうこと?」
「このロシ
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