6
「僕は、ダリ。ダリ・ブラス」
男の子
店内はやっぱり
ダリ君が泣きやんだ頃には
というか、ブラス……? どこかで聞いたか見たかしたような……?
「あ」
「え?」
「なによ?」
思い出した。
「ちょっと、なに固まってんのよ?」
「あーごめん。ダリ君、えっと……」
僕はその女の人のことを話した。
「そりゃ多分、お
そう言ってダリ君は左肘をテーブルに乗せて、ローブの
「ああ、うん。間違いないと思う」
「なに~ダリ~。さっきはママって言ってたのに~。ちゃんと呼びなよ~」
「うん。ごめんね。『おばあちゃん』」
そう言って、ダリ君はミュートに寄り掛かり、ミュートの肩に
「……ぐぐ」
ミュートは何とも言えない
「分かるだろ?」
ミュートから
「お
この町はおかしいんだよ。
この町の人たちは、お祭りのいいところしか見てない。中のいいところだけ食べて笑ってる。
「え、そうなの?」
とミュートは
「
「ああ、あったわね。そんなの」
「うん、それが
まあ、そんなわけで、それに
「お待たせしちゃって、申し訳ありません。ご注文はお決まりですか?」
いつの間にか僕たちのそばには店員さんが立っていた。僕たちを
「お、きたきた。それじゃあねぇ……。これとこれと、これと、あと……」
「ねえ。あの……!」
注文をするミュートにダリ君は小声で話し掛けた。
「なによ?」
「あのさ、気を
「なに言ってんの。あたしの分よ」
「
「ワオーン」
ミュートは小声でそう言って、両手をかぎ
「あの、お、お客様……」
「ご、ごめんなさい。ほらあんたも好きな物、頼みなよ」
「うん。分かった。それじゃあ……」
それでも
「お兄さんは、頼まなくてよかったの?」
店員さんが立ち去った
「でも、
僕はぎくりとした。でも……。
「あ、分かった。いかなる時も油断しないんだね」
ダリ君はなんだか僕のことを良いようにとってくれるから、助かるは助かるんだけど、なんだか少し
「いっぱい、食べなきゃ大きくなれないよ?」
と言ってミュートは
こうして2人並んで座っているのを見ると、身長はそこまで変わらないように感じた。「ワオーン?」「はいはい、ワオン」とじゃれる姿は、まるで
「にしても
「だろ?」
言ってダリ君は
「
「いい『パパ』だったのね」
「ああ、いい『
「
「僕は必ず、あの
「本気?」
ミュートの顔は真剣だ。
「どういうことか、分かってるの?」
「もちろん」
ミュートはダリ君の両肩を
「殺されちゃうかもしれないんだよ」
「知ってる。この目で見たことあるよ。……旅の
ミュートの指に力が込められるのが分かった。
「
「だからって……君が死んだら元も子もないでしょ?」
「死ぬつもりはないよ。何か方法があるはず……」
「
「俺は人殺しの息子だぜ?」
ミュートはダリ君が
「そんなこと言っちゃダメだよ。さっきと言ってること違うじゃない……。優しいお父さんだったんでしょ?」
「……痛いよ」
「あ、ごめん……」
ミュートはパッと両手を放した。
「もう限界なんだ、
「
「なんでだよ?」
「確かに、その場ではスカッとするかもしれないよ。でも多分、すぐに
「なんだよそれ、意味分かんねぇよ。それでもやるよ俺は」
「ダメだよ。それに……こんなこと言うのは
「あんたも、ここの連中みたいなのこと言うんだな」
ダリ君は乾いた笑みを浮かべた。
「あたしはただ……」
ダリ君を止めたい
「ダリ君ごめんね。ミュートは……」
「そう。あたしはもう、君の
そこまでか……。
「……なんだよそれ、だったら手伝ってくれよ」
「だから……話、聞いてた?」
「この町の連中じゃ終わらせられないよ。終わらせる気がないんだ」
「え?」
終わらせる気がない……?
「お待たせ致しましたぁ」
料理が来て、話はそこで中断になった。気まずくなった雰囲気は、ミュートの食べっぷりで少しやわらいだけど、空気はどこか固いままだった。
なんとかダリ君を
「ありがとう。なんだか、昔みたいで楽しかったよ」
入口で見送る僕たちに、ダリ君はそんなことを言った。この時に浮かべてくれた笑顔は本物だと思った。それで少し安心したけど、
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