5
僕たちは町の
団長の話を聞いた
でもどうしてあんなに怒ってたんだろう? 町の異常さを目の当たりにした
「そろそろ
立ち止まって、ぼんやりとした口調でミュートは言った。
「うん。そうだね。お腹減った?」
「……。減ったけど、なんかなー」
「なに?」
「食欲が
ミュートに顔を向けると、松を見上げて
「なるほどね。でも……」
「まあ、気持ち的にね」
あの松の
「大変だねー」
「あっ」
「どうしたの?」
「食料の魔石なくなったんだった。買わなきゃ」
「え……? なんかやだな。魔石はちゃんと分けられてるのかな……?」
「ふふ、同じ苦しみを味わえ」
ミュートは
「うわ!」
その時突然、人影がすごい速さで
「大丈夫?」
「ひ、ひったくり!!」
見るとミュートはリュックをすられていた。ミュートはすぐに
「ひったくりよ! 誰か捕まえて!」
ミュートがそう叫ぶけど、大声なんてこの町じゃ
ミュートは更に加速する。僕はそれに離されないようにするだけで
「放せ、コラア!」
「君がね! あたしの……リュックを返せ!」
ミュートとひったくりは地面に倒れ込んでいた。ひったくりの声は
「この悪ガキ! 返せ、こら!」
「やめろ! どこ
「……! あ、あたしはそんなにエロくない!」
ババアはいいんだ……。
僕は2人に近付いていき、しゃがみ込んで男の子と目を合わせた。
「俺は殺されるのか……?」
「……そんなことしない」
「安心して、このおねえさんのリュックさえ返してくれたら、何もしないからさ」
「おねえさん? おばさんじゃなくて?」
「オイ」
ミュートはおじさんのような
「とりあえず、この女性のリュックを返して」
「オイ!」
ミュートは僕を
「……分かったよ。まず、どいてよ。重すぎでしょ」
ミュートはこめかみに
「……逃げたら、
言ってミュートは、ゆっくりと男の子から身体を引き
男の子は
「なんだこれ?」
男の子は首を
ミュートは男の子の
「爆弾の魔石」
突然耳元で
「
「違うわ!
「おっかねえ女……!」
「うるさいな!」
持ち
「ていうか、なんでスリなんかしてんのよ?」
「あんたが、
「そんなアホっぽく言ってない!」
「君はこの町の人?」
僕は男の子に問い掛けた。
「違うよ。俺は
「どうして、こんなことしてるの?」
「な、なんだよ?」
「ほら僕たち見ての通り
「……食ってくためだよ。
確かに
「ここでは
「
「捕まってんじゃん」
とミュートが水を
「うるさいな。馬だと知ってたらちょっかいなんて掛けなかった」
「馬ですって?」
「じゃじゃ馬」
「このガキィ……」
「まあまあミュート……。話が進まないよ。それでえっと、君のご両親は?」
「
「ごめんね。僕、
「
「いや、そういうわけじゃ……。というかごめんね」
「ん? いや、
「そっか」
「マ、……お
「大変なんだ」
「でも、昔はカッコよかったんだよ。お
男の子は
「……パパがさ……。この町に……あの木に、お祭りに……
あ、あんなところで、
男の子は、
こ、こんなとき、なんて声を掛けたらいいんだろう……。
僕が何もできないでいると、ミュートは男の子の正面にしゃがみ込み、優しく
「…………なんだよ……
「……いいから。あたしは君のおばあちゃんでしょ? ……泣いたらいいよ好きなだけ」
それからしばらくの間、男の子は泣き続けた。そんなわけはないけど、まるで生まれて初めて泣いたみたいに、次から次に、ポロポロと涙を
こんなに大声で泣いている子がいるのに
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