3
テーブルの上はお皿で
ミュートはそれを幸せそうに次々と片付けていく。オススメのサラダに、肉料理、パスタに、パンケーキに、エトセトラ……。
僕はお腹が痛いって言って
人は優しくていい町だとは思うけど……。
「この町おかしいよ」
「うん、おいしい」
「おかしい、ね」
「そう? こんなにいい町ほかにないよ」
「でも、マスクとか、食べ物とか……」
「まあねぇ」
「聞いても教えてくれないし……食べ物のこともミュートが気付いたから知ったわけで……その決まりもなんだか
「
「だから安心……?」
「もしくはあたしたちが危険な目に
「え?」
「まあ、気を付けるに
「うん、まあ……」
「
「言うね」
「ふぅーお腹いっぱい。さあお祭りを楽しまなくちゃ。
「言わないね。というかまずは情報を集めなきゃ」
「えー、今日はお祭りの日なのにー」
「明日もそうだよ?」
「まあまあ、同時進行ってことで一つ」
ってことで一つって……。
店を出た僕たちは町の中央を目指した。代金を支払う時に、僕は店員さんに人探しのためにこの町に
「それにしても大きい木だねえ」
町の建物とは
「大きい木なんて町中にあっても邪魔なだけよ。
「ロマンがあると思うけどなぁ。んーあれって松、かなぁ?」
「松の木があんな大きくなるわけないでしょ……」
ミュートは
大木を目指す道すがら、
道行く人たちはみんな目のやり場に
ミュートもさぞ怖い思いをしてるに違いないと思って、横目でミュートを見た。ミュートはものすごく冷たくて怖い目をしていた。僕はそれを見てちょっとだけ血の気が引いた。ミュートは僕の視線に気が付いたのか、こっちを向いて笑ってくれた。でもその笑顔は少しだけぎこちなかった。やっぱりミュートも怖いんだ。僕たちはいつの間にか、少し痛いくらいの強さで手を
「なんだろうね、これ?」
ミュートが首に巻いている赤いスカーフには、黄色い
「たぶんこれ……
「
僕とミュートは同時に
「このためのマスクだったのね」
「うん。でも……」
辺りの人は誰もマスクを着けていなかった。いつの
「さっさと話を聞いて戻ろう」
そう言ってミュートはマスクをしっかりと着け直した。
木に近付くほど
やがて開けた場所に出た。
視界はいよいよ悪くなり、辺りを舞う
周りでは踊り子が踊っている。およそ人間の動きとは思えない動きで。息を切らし、息を大きく吸い込みながら。こんな空気の中マスクもなしに。
あんな動きをしていたらいつか倒れるんじゃないかと思った
「こんなの、
ミュートは乾いた声で言った。
「この
どんなに祭りの熱に
この町に来てから掛けられた言葉が
――町にいる間中はこのマスクを着けてもらいたいんだ――
――この町では、住民の食事と、
――この町から出られなくなるかもね――
思い浮かべた人々はみんな親切そうに笑っていた。
踊り子が笑ってる。気持ち良さそうに。そのまま倒れて、そのまま引きずられて。代わりの踊り子は
心臓の
「大丈夫?」
ミュートは心配そうに僕を見上げていた。ミュートは更に手を強く
感覚が要らないなんて、そんなの嘘だ。
「……うん、平気。は、恥ずかしいから、そんなに見ないで……。でも、ありがと」
「よかった」
そう言ってミュートは手の力を
一瞬、すべての音がやみ、
いきなり頭上から爆発音が聞こえた。驚いて空を見上げると、花火が打ち上げられていて、更に何発も続けざまに花火が上げられる。そして町は、再度
高くそびえる
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