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「ようこそ! 祭の町へ!」
おじさんはこの町の名所や名物、
そして、いよいよ町に入ろうという時にこんなことを言われた。
「あ、そうそう、これが一番大事なんだけど……町にいる
そう言っておじさんは、僕たちに
「え? 分かりました……でもどうして……」
僕の質問に
「まぁ、そういう決まりなんだよ。それさえ守ってくれたらいいからさ。あとは何したっていい。この町の連中は
「はぁ……いいんですかそれで……」
「ああ。マスクさえ外さなきゃね」
「……もし、外したらどうなるんですか?」
「そりゃあ、決まりを
「それだけですか?」
おじさんは、気のいい笑顔を浮かべたまま数秒の
「……この町から出られなくなるかもね」
「それは、どういうことですか……」
「まぁまぁ、おいおい分かってくるさ。つまりだ、外すのはハメだけにしとけって話さ! なんつってな!」
そう言っておじさんは
「それじゃあマスクを着けてくれ」
「はーい。……。うわ……。これ結構苦しいね」
ミュートは小顔だから、大きいマスクで顔のほとんどが隠れてしまっていた。
「すぐに慣れますよ。いやーお
「なんか嬉しくないんだけど……」
「はっはっはっは! さぁ、お兄さんもはやくはやく!」
僕もマスクを着けた、外れないように頭の後ろで
「ぶぅっ!!」
せっかくマスクを付けたばかりだってのに、ミュートは
「なんだよ」
「……ふっ……ごめん……鎧の上から着けるんだと思って……そうだよね……そうするしかないよね……ふっ……」
…………僕はこの時初めてミュートにムカついてしまった。
「お兄さん? もしかしてふざけてる? ちゃんと着けてもらわないと……」
「心配要りません。ここさえ
「ぶぅっ……は……ふぅ…………ぶぅっ!」
……まったく。
「……? まあいい、準備はオッケィだね? じゃあ始めるよ?」
「「始める? 何を?」」
僕とミュートの声はきれいに重なった。
「何って、決まっているだろう?」
「「え?」」
「君たちの
おじさんはそう言って扉に掛けられていた
扉の向こうには大勢の人がいて、みんなこちらに笑顔を向けていた。僕たちが
「ようこそ!
声の
「さぁ、遠慮せずに楽しもう!」
僕たちはその声に
「ねぇ!」
ミュートの声に振り向くと、ミュートはいつの間にか人ごみに押し戻されて、遠くに流されていた。すぐに人を
「なんて人!」
ミュートはもがきながら叫んだ。普通だったら
「つかまって!」
ミュートの手を取って、はぐれないようにと手を
取りあえず落ち着けるところを探そうと、僕たちは人ごみを
そして少しも経たない内に僕たちは
だけど
僕たちは
注文を取りに来てくれた店員さんに、僕は気になっていたことを聞いてみた。
「食事のときはマスクとってもいいですよね?」
するとミュートは
店員さんは僕たちのやり取りに首を
「はい。
店員さんは両手で持っていたトレイを、スカートの前から顔の前に持っていき、それで口元を隠しながら目を細めた。
僕は続けて質問をした。
「お店の中なら外しても大丈夫ってことですか?」
「ええ。屋内であれば、このお店でなくとも外されて大丈夫ですよ」
「その、つまり、外では外しちゃいけないと?」
僕は横目でちらりと窓の外に目を向けた。マスクを着けている人は確かにいる。でもその数は本当に少なくて、ほとんどの人はマスクなんか着けていなかった。
「はい」
「それって、
少しだけ店員さんの笑顔が固くなったような気がした。
「……段々と分かってきますよ」
「もしかして、毒ガスが町を
窓はすべてはめ
「そんな、そよ風の町じゃあるまいし!」
「ですよねー」
「そんなことより注文どうされます? じゃんじゃんもりもり食べてください! 食べすぎは身体に毒なんていいますけど、食べないのも身体に毒ですからね! 世の中毒だらけですよ! 同じ毒なら食べすぎた方が絶対いいですよ!」
「確かに!」
メニュー表から顔を上げて、いきなりミュートは叫んだ。真剣にメニュー表を
「おねえさんとは気が合いそう!」
「そんな気はしてました!」
店員さんとミュートは
「ねぇおねえさんオススメってなんかある? やっぱりコーヒーとか?」
「そーねー、コーヒーもいいけど、ハーブティーが美味しいよ。あとはね、サラダは絶対頼んだ方がいいよ」
「え、サラダ?」
確かに僕も、そんなのオススメするかなって不思議に思った。
「ほら、ここって火山と割と近いじゃない? だから地熱で植物が育ちやすいのよ」
「なるほどねー。それじゃあ……あれ?」
ミュートは突然、店内に目を向け顔を前に突き出して目を細めた。ミュートの見ている辺りを見てみるけど、特に異常も不思議なこともないようだった。どうしたんだろう?
「あれー? あそこの人、メニューにないもの食べてる。もしかして特別メニュー? なんか美味しそう。おねえさん。あれって頼める?」
店員さんは振り返ることもしないで言った。
「あーあれですか、あれはこの町の人用なんですよ」
「町の人用……?」
「ええ。はい。この町では、住民の食事と、
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