9
受付の近くのロビーで僕たちはお茶をご
近くでは
「雷と風を操る男ですか……」
僕はおじさんに温泉での出来事を詳しく話した。何か魔女への手掛かりになればと思ったからだ。ミュートは隣で、口を
「はい。多分あれは魔法なんじゃないかと思うんです」
「魔石ではなく……?」
僕が
「こんな話があります。百年以上前のことです。遠くの地のある町で、魔女の力を恐れた王が、魔女を処刑しようとしたことがあったそうです」
「処刑ですか……」
「一つ断っておきますが、大昔のことですから、今からお話しすることは……そうですね……昔話、童話の
「分かりました」
「……魔女を捕らえよと王から
「……のは何ですか?」
「あっ、大丈夫です、それよりも……」
「お茶を
「う……、それじゃあ頂きます」
「では、少々お待ちください」
そう言っておじさんは受付の奥へ消えていった。ミュートは一つ
「もったいぶるなぁ……」
「まぁまぁ、こんな夜だし、1人は心細いんだよ」
「まあ、こんなにうるさくちゃ眠れないしね。ていうかいつまで鳴ってるの? これって」
「おじさんが言うには、送風機の近くに
「なんかあったのかしら」
「どうなんだろう」
「まさか、あいつ……?」
「あいつって?」
「あの黒いのよ」
「まさか……」
「そうよね」
「第一、山の方へ飛んでいったしね」
「……あの時は気にしなかったけど、それってどうしてなのかな」
「えっ? どういうこと?」
「いくら空が飛べるからって、わざわざ毒ガスの吹き出る方へ行くかしら?」
「なにか理由があったってこと?」
「ええ」
「それはなに?」
「そんなの分からないわよ、でも例えば……」
「例えば?」
「風を起こして、毒ガスを町に早く
「えっ? 何のために? 放っておいてもいずれ町に届くんだよね?」
「例えばあたしたちを始末しようとしたとか」
「まさか、魔女を追うから? そのために町まるごとを危険に……?」
「例えばの話だからね? それこそ話半分で聞いて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます