8
黒鎧が飛び去ってから、僕たちは町に急いだ。その前に、ミュートに事情を説明するのに
「ミュート、聞いて!」
「ちょっと、こっち向かないで!」
「ああ! ごめん!」
「それより! 服取ってきて!」
「服? どこにあるの?」
「どこって小屋が……」
小屋は
「あたしの服……」
「それより」
「それより……? 今、それよりって言った?」
「あーーごめん! でも聞いて! この
「風がやむ? それがなに?」
「ずっと吹いてたあの風は、火山から降りてくる毒ガスを防いでくれていたんだよ」
「毒ガス? まさかー」
「本当なんだよ!」
「……なんでそんな大事なこと、町の入口とかに書いて
「僕に言われても!」
「宿屋のあのおじさんも人が悪すぎ」
「あのおじさんは悪くない」
「ん? まぁとにかく、リュックからなんか出して」
「なんか?」
「隠せるならなんでもいいから」
「わかった。……うわ、爆弾の魔石ありすぎじゃ……」
「うるさいなー、早くしてよ。うーさむさむ、さむーい」
「ごめんごめん。あっこれなんかどう?」
リュックの底には、きれいに折り畳まれた服が上下
「ん? ああ、それでいいよ」
顔を
「なにその目? これはこういうファッションなんだからね? 別に買ったのを後悔とかしてないから!」
「知らないよ!」
そんなこんなで時間を食ってしまったから、僕たちは大急ぎで宿屋を目指して走った。別に競争ってわけじゃないのに、何故か自然とそうなってしまう。負けた方は、毒ガスに呑まれて死んでしまうのが確定しているみたいに、僕たちは必死にデットヒートを繰り広げた。
頼むから追い風だけは吹いてくれるなよ……。そう願いながら走っていると町の
「なんか分からないけど頭にきた」
「気のせい、気のせい」
「んん? それより宿屋に入っちゃえば安全なのね」
「うん!」
やがて宿屋が見えて来る。前を走るミュートはますます加速する。
ミュートは宿屋の裏口の前で急停止すると扉に手を掛けた。でも、扉には
「すいません! 開けてください!」
僕だって死にたくない。だから宿屋のおじさんを
ズンドコ、ズンドコ、ズンズンズン、ズンドコズンドコ、ドン、ドン、ドン!
これはミュートの魂の叫び……? ふざけているのかと思って、ミュートの顔を見てみたけど、真剣そのものだった。ミュートは真剣にズンドコしていた……。
「もしかしてあたしたち見捨てられた!? あの、ク……!!」
ミュートがなにかを口走ろうとしたその時、扉の向こうから声が聞こえてきた。
「……はいはい、ただいま開けます」
「ああ、よかった。今か今かとお待ちしておりました」と言って、おじさんはミュートを見て、次に僕を見た。横目でミュートを見ると「ほんとかぁ?」って声が聞こえるようなすごい顔をしていた。
「ささ、早く中へ」
「ありがとうございます。助かりました。それから……」
「はい? どうされました」
扉を閉め
「あの、実は謝らなきゃいけないことがあって、温泉の小屋なんですが……」
そう僕が口にすると、それを
「そのようなことが……
「本当にごめんなさい。
「いえ、いいのですよ。元々、近い内に建て直さなくてはと思っていましたし」
「だけど!」
「いいんです。……その代わりといってはなんですが……」
「え?」
「一つお願いを聞いてくださいませんか?」
「な、なんです?」
ミュートは何故か自分の身体を
「なに、大したことじゃありません」
「やっぱり、
「今からお茶を
「え? お茶……? それはええ、ぜひ、でも、そんなことでいいんですか?」
「ええ。……こんな風に
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