5
「ミュート、起きて。ねぇ」
「……あと、少しだけ……」
「……さっきから、5回目だよ」
「……うーん」
「朝だよ」
「……いや、まだ暗いじゃん……うーん」
「
「んん? あっ!」
ミュートは勢いよく寝袋のまま立ち上がった。
「なんで起こしてくれないのよ!」
ミュートは前のめりになり、バランスを崩してそのまま前につんのめった。
「あっ! と! とっと!」
僕はミュートに駆け寄って受け止めた。
「だっ、大丈夫?」
「うん、ヘーキ、ありがと」
ミュートは上目遣いで照れた表情を浮かべた。
それから僕たちは早朝の冷たい空気の中を歩いた。一応、道にはなっているけど、
「おー、キレー」
「ホントだね」
「ね!」
ミュートは笑いながら僕に顔を向けた。右耳で揺れるイヤリングの赤い宝石に、太陽の光が通って、すごく綺麗だった。
「
「はいはい。そういえば、そよ風の町ってどんなところなの?」
「そうだなぁー、温泉が有名かなぁ」
「温泉?」
「ええ。火山の
「ああ、それでこんなに道が
「でも旅人には本当にありがたいよ」
「……温泉かぁ。僕は入れないしなぁ」
「ああ、そうね……。あとはその名の通り、いつも風が吹いてる」
「
「多いんじゃなくて、『いつも』なんだってさ」
「いつも? ずっとってこと?」
「えぇ、それも山に向かって吹いてるんだって」
「え、普通、逆だよね?」
「まぁ、だから魔石のせいか……そうじゃないなら……ねぇ?」
「魔女? じゃあ、なにか手掛かりが見付かるかも」
「そのために来たんじゃないの?」
「ううん。そよ風の町の先の、祭の町に向かってたんだよ」
「そうなんだ。でもどうして?」
「噂を聞いたんだ、そこで魔女を見掛けた人がいるって」
「ホントかなぁー? まぁでも私もそっちの方向に行くから、丁度よかった」
「そうなんだ」
「よろしくね、用心棒さん?」
「うん……よろしく」
それから僕たちは切り立った崖のそばを進み、
町に近付くに連れて、サクサク進めるようになったのは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます