第4話 対峙


「確かにオレらは魔物だが、人間を食べてないと言ったら?」


「そんな話……!」


 ピンク色の魔法少女の杖先から、光の玉が生み出される。先程と同じく、力を溜めるかのように少しづつ大きくなっていく。


「信じられるわけないでしょ!」


 またもや光の玉は光線状となり、真っ直ぐにコンへと放たれる。


 攻撃を向けられた当の本人は、何てことない顔でそれを片手で跳ね飛ばす。


 もしかして僕の相棒って凄い強いんじゃないか、とハクトは恐ろしく感じる程だった。


「つむぎ! 合体技よ!」


 あからさまに頭に血が上った表情と声で、ピンクは相方を呼び寄せた。


 つむぎと呼ばれた水色の魔法少女は、戸惑いながらも彼女の元へと近寄っていく。


「……お前ら、さっきので明らかに魔力減ってんじゃん」


 呆れた表情を見るのは珍しい、とハクトは感じた。


 コンが今いったい何を企んで、こんな真似をしているのかは分からない。しかし彼のことだから、きっと意味はあるのだろう。


「ハイライト・オーバードーザー!」


 技名らしき言葉を叫んで、大きな光がコンに向かって放たれた。


 光線の太さを考えると、先程、海老に止めを刺した技と同じものだと思える程だった。


 こればっかりは、いくら彼でも喰らってしまえば絶体絶命。一体どうするつもりなのか、目を向けると既にそこに居た筈のコンの姿は消えていた。


「……隙が多い大技だな」


 コンは魔法少女二人の後ろに立っていた。


 彼は普通に跳躍して、光線と彼女達を飛び越えただけだった。


 一連の流れを見たハクトだから理解したが、魔法少女達からすると瞬間移動に見えたのかもしれない。


「これはボス級じゃないかで御座るか⁉」


 浮いている忍者のカメレオンが謎の台詞を吐いた。


「他の魔獣を統べる最強の存在が……居るとか、居ないとか。聞いたことあるような、無いようなで御座る!」


 この言葉だけでも、忍者カメレオンが適当な話を盛っているのはあからさま。


 しかし、少女達はそれを真に受けたのかもしれない。魔法少女二人の瞳から光が消えて、明らかに絶望した顔になった。


「……わ、私達をどうするつもり⁉」


「……はい?」


 ピンクの魔法少女に泣きそうな瞳を向けられ、コンは目を点にした。


 何やら彼女達の中で、変な方向に話が進んでいるようにしか見えなかった。


 どうしていいのか、分からないのだろう。コンは茫然とただ二人の女の子の前で立ち尽くす他、何も出来ないでいた。


 ハクトもハクトで、どうしていいのか分からなかった。


 コンがどうして力の差を見せつけたのかを理解していない上、彼女達が何で魔物と戦っていたのかも知る由もない。


 魔法少女二人とマスコットは緊迫した雰囲気を出しているが、少年達は困惑するばかりだった。


 この空気、誰か何とかしてくれないかな。


 男子二人が全く同じことを考えた時、それを見事に打ち破ってくれる者が現れた。


「ごめん! 遅くなっちゃった!」


 大きな声に荒野の先を見ると、もう一人の魔法少女が駆け寄ってきていた。


 オレンジ色のドレスにショートヘアで、手には彼女達と同じデザインの杖を持っていた。


「……って、何この状況⁉」


 オレンジの魔法少女は、この場を見るなり目を丸くした。先程までの流れが分からない者が見れば、妙な状況なのは誰が見ても同じだろう。


「ミライ逃げて! この魔獣はボス級よ!」


「ボス級ってなに⁉」


 緊迫したピンクの台詞に、ツッコミを入れるようにオレンジが返した。


 同じ魔法少女とはいえ、忍者カメレオンの言った適当そうな話を聞いていなければ、よく分からないのは当然だ。


「っていうか、その二人って……」


 キョトンとしたオレンジの魔法少女は、コンとハクトの顔を交互に見合わせ、驚くべきことを口にした。


「同じクラスの長寺くんと、嘉藤くんじゃん!」


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