第3話 少女
魔法少女は二人居て、どの子も男子達より少し下か同じ年齢くらいに見える。
特に印象的なのが、ドレスと髪が同じ色だった。
片方のピンクはサイドテールに近い、髪を片側に結んだ女の子だった。
そこまで高くない身長より少し短い杖は、装飾の多い派手なもの。両手でしっかり敵に向けて、ビームを放っていた。
もう片方は水色で、三つ編みを左右二つに結んだ子だった。
こちらも装飾の多い杖を持っていて、そこから放たれた魔法陣で敵の攻撃を防いでいる。
見事に攻撃役と防御役の二つに分かれていて、まるで誰からの助太刀も必要としないようなコンビネーションだった。
彼女達が相対しているのは、大きな海老のような魔物。
見たところ宙に浮いている大きなザリガニという印象を受けるが、大きなハサミがチェーンのようなもので胴体と繋がっていた。
それが伸びて攻撃手段になっているのだが、それを全て水色の魔法少女が魔法陣で防いでいた。
未だに目を丸くしたままのコンに、前例があったのかハクトは問いかける。今までの経験上、食われた人間しか結界内で目にしたことは無いと語った。
やがてピンクが放った魔法の光線が、海老の眉間を貫いたから体勢が崩れたような形になった。
「つむぎ、今よ!」
ピンクの台詞に水色が彼女と並んで、互いに杖を敵へと突き出した。
二つの杖先に輝く光の玉が出来たと思えば、合わさって段々と大きくなっていく。
協力技で止めを刺すのかもしれない。
やがて彼女達二人くらい飲み込んでしまえる程に大きくなった光の玉は、一つの長い光線になって大海老に吸われるかのように放たれる。
そして光は消え失せて、黒焦げになった魔物は塵のように消滅した。
「……やったね」と水色の魔法少女は淡泊な表情なのに、不思議と楽しそうな声を出す。
「そうね、つむぎ!」とピンクの魔法少女は、その四十二倍くらい嬉しそうな声色だった。
「二人とも、安心するのはまだ早いで御座る!」
謎の声と共に二人の間から中空に姿を現したのは、ぬいぐるみ位の大きさの二頭身の何かだった。
忍者のような恰好をしているが、トカゲだかカメレオンみたいな見た目だった。
魔法少女によくありがちな、助言をくれるマスコットキャラのようなものかもしれない。
それにしては可愛くない、とハクトは思った。あれならまだコンの分身である、犬だか猫だかウサギだか分からない動物の方が愛くるしい。
「この近辺に、まだ大きな魔獣反応が二つあるで御座る!」
マスコットの忍者カメレオンの台詞を耳にして、間違いなく自分とコンのことだろうとハクトは感じた。
まずいと嫌な予感が駆け抜けたのは、彼女達が魔物を滅する存在だとしたら、間違いなく二人とも対象に入ってもおかしくない。
「そこで御座るな!」
どうやら、すごい余計な真似をするマスコットのようだった。二人が隠れていた岩陰に向けて、忍者カメレオンが大声を上げた。
どうにか戦闘を回避するには、まずはここから逃げるしかない。なんてハクトの考えを知らずに、コンは堂々と岩から姿を現してしまった。
「……お前ら何者だ?」
コンの言葉に応えるかのように、ピンクの魔法少女が派手な杖を二人に向けて叫ぶ。
「私たちは魔法少女! アンタたち人間を食べる奴らを浄化する正義の味方!」
仕方がないので、ハクトも魔法少女たちの前に姿を現した。
彼女達の年齢は分からないが、小学生高学年か中学生といったくらいか。他に人が居ないとはいえ、そんな恥ずかしい台詞をよく堂々と言えるものだ、と少年は感じた。
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