第2話 遭逢
ジュースで喉を潤すと、その日も行動を開始した。
昨日とは違い、まだ太陽は完全に沈んでいなかったが、魔物の気配を察知したようだった。
コンはともかくハクトは髪色が目立つから、廃屋に放ってあったタオルを洗って頭に巻いた。まだ少し湿ってはいるが、そこそこ暑い陽気だったから却って気持ち良かったようだ。
屋根伝いみたいな派手な真似も出来ないし、少し歩くと速度が出てしまう。二人は目的地まで、慎重に足取りを進めた。
時間が時間だったから、途中で何度か人とすれ違った。ちゃんと見られない限りは、二人も普通の男の子なのだ。
ハンバーガー屋を通り過ぎると、新青梅街道と書かれた広い通りに出る。片側二車線の広い道路で、何台もの車が絶え間なく行き交いしていた。
青信号を横断し、キャンピングカー屋を通り過ぎる。暫く歩くと、少し広い公園に出る。
昨日の場所とは違って、草木も多くて遊具もある。夕方だからかもしれないが、人は殆ど居なかった。
たまに犬の散歩は居るが、ちょっと木陰に入れば目立たない。コンに見張りをお願いして、今日はハクトから結界に入る流れになった。
魔力を使うように指先を意識して、結界の在処に手を入れる。まるでプールに入るかのように、すんなり行くものだと少年は感じた。
昨日と同じく、結界の中は荒野だった。
気づけば隣にコンが居たから、ハクトは安堵の息を吐いた。
まだ三回目な上に、昨日は大きな失敗をしでかしているのだ。一人での行動は、不安でしかない。
「……妙だな」
訝し気な表情でコンが呟いた。彼が結界に入るなり、こんな空気になったのは初めてだったから、ハクトにも緊張が伝わった。
「!?」
何かが爆発したかのような、大きな物音が二人の耳を劈いた。
まるでジェットコースターのようにも感じられるし、自動車事故のようにも聞こえるかもしれない。
しかし今までハクトは、この空間でジェットコースターはおろか、乗用車すら目にした試しが無い。
気が付けば、動いていたのはコンだった。隣から消えていて、遥か先を掛けていたから、ハクトも急いで彼を追う。
暫く先で、コンが足を止めていた。砂利に立ったまま、茫然と先を見据えているような感じに見えた。どうしたのだろうと、ハクトも彼と同じ方向を見る。
その先を見てハクトも絶句して、コンと全く同じ表情になった。
彼らの視線の先には、派手なドレスのようなものを身に着けた小学生くらいの女の子が魔物と激しい戦いを繰り広げていた。
全く状況は分からないハクトだが、こんな景色は何かで見たような覚えがあった。
少女が可愛い衣装を纏って変身して、悪い奴らをやっつけるというもの。
ハクトの認識が正しければ、彼女らは魔法少女という存在になる。
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