三日目

第1話 敗因


 結界から出て廃屋に戻ったハクトは、コンに特訓を申し出た。無意味だと一掃された。


 彼が意味が無いという理由は、結界の中と外だと魔力の消費が違うというものだった。


 炎や氷といった攻撃魔法の顕現は、身体の一部を小動物に変えるのとは訳が違う。


 ハクトがやりたいことを理解しているコンは、戦いながら覚えるという手段を薦めた。


「じゃあ、小動物の出し方くらいは教えてよ」


 黙って頷いたコンは、淡々と自分の方法を口にした。


 目を閉じる。手に魔力を意識する。生み出す。以上。これだけの説明で理解出来る筈もなく、結局その日も魔力不足で倒れてしまうハクトだった。


 朝焼けの時間まで起きていたからか、その日も目覚めたのは夕方だった。


 昼間は魔物が出ないという話ならば、起きている必要なんて無い。


 あまり人前に出れない身体になってしまったのも相まって、ハクトは完全に夜行性になってしまった。


 遠距離の武器を用意する必要がある。


 昨日の敗因は敵を知る前に武器を作ってしまったせいもあり、とっさに脳内で描けるものを幾つか想像しないといけないとハクトは考えた。


 まず考えたのは銃だが、想像が細かくないと強力な武器には成り得ない。ハクトは銃の構造を知らない。適当な考察で、果たして使えるものが生み出せるのだろうか。


 弓矢はどうかと考える。簡単な構造で容易に出せそうだと思った瞬間、少年は昨日の様が頭に浮かんだ。


 剣を持ってもバットを振るようにしか扱えない自分が、それより難しい弓矢なんて扱えるのだろうか。


「……起きたか」


 ドアから普通に入ってきたコンが、ハクトにペットボトルを手渡した。


 昨日もそうだったように、彼はいつもこの時間に飲み物を調達しに行っているのだろうか。


 人前に出れないことを考えると、あまり大きな声では言えないような真似をしているのだろうか。


 無闇に詮索をして気分を害しても、少年には何の得にもならないので、敢えて聞かないようにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る