第4話 武器


 小動物が結界を見つけたので、屋根伝いに二人は移動を始めた。


 ここで重要なのは、出来るだけ民家の屋根は避けること。


 人間の足音というのは意外と響くらしく、以前コンはそれで騒ぎになりかけた経験があると語った。


 マンション、閉まっている店のテナント、消防局。街並みを縫うように二人は夜の空を飛び回る。まるで忍者みたいだ、とハクトは少し楽しんでいた。


 毛玉が指した場所は遊具も無い小さな公園だった。


 コンビニ程度の小さな敷地に、周りは樹で出来たガードレール。しかし一番目を引くのは、真ん中に大きく鎮座された大樹だった。


 朽ち果てたみたく枝葉の無いもので、まるで雷にでも打たれたかのよう。石碑には三本榎と刻まれていたが、どう見ても一本しか無いのが不思議だった。


 隠れていたのか、その榎の根元から毛玉がコンに向かって飛びだしてきた。


 やはり彼の身体の一部だから、こっちには来てくれないのか。とハクトは少し残念に感じる。小動物はコンの手の平に吸い込まれるように、姿を消してしまった。


 結界の入り口は榎の中にあるらしく、昨日と同く吸い込まれるように、コンが大樹に手を入れる。


 やがて身体全部が榎の中へと入っていったので、同じようにハクトも彼の後を追った。


 今回もやはり荒野だった。


 大きさの揃わない砂利の地面と、様々な形の大岩が雑多に転がっている。雲一つ無いのに灰色の空で、太陽は出てないのに周りを確実に視認できる。


 ここに来る途中、少年はコンに技を使うイメージを教わっていた。


 自分の頭の中で顕現する形を描いて、手に魔力を込める感じでやればいい。この時、想像したものが細かい程、より強力なものになるというらしかった。


 ハクトは自分の手に力を込めて、長い刀を思い描いた。鋭い刃先から峰が伸び、鍔は何となく六芒星。柄はバイクのグリップみたく、派手で握りやすいもの。


 気づけばハクトの手には氷で出来た刀が握られていて、六芒星の鍔はまさしく少年の思い描くものだった。


 こういう武器は単純に重量がある印象を持っていたが、ハクトの細腕でも片手で自由に触れるほど軽いものだった。


 その上、氷で出来ているにも関わらず、握っていても冷たさは全く感じない。魔法ってすごい便利、と少年は自分の武器をお気に召したようだった。

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