第2話 行動
太陽が完全に沈んだ頃に、二人は行動を開始した。
コンの経験上、魔物は夜にしか出ないと考えられている。
太陽の光が駄目なのかという推測もあったが、雨や曇りの日だろうと昼間に出た試しが無かったようだ。
仮に陽光が駄目だとすると、魔物にされた二人も夜じゃないと外に出られないという話になる。
ハクトが目覚めたのは夕方で、思いっきり窓から夕焼けを浴びても身体に異変というもの無かった。
それなら何故、夜にしか行動しないのか。
人間が独りになったところを、魔物は結界に閉じ込めるという性質を持っているらしく。一番その状況を作り易いのが夜だから、では無いかというのがコンの推理だった。
「……それか人の肉は夜が一番旨いのかもな」
冗談を言ったのかと思ったが、彼の顔を見ると笑える雰囲気じゃないとハクトは感じる。
廃屋を出た二人は、並んで夜の住宅街を歩いていた。
たまに電気のついた部屋も見かけるが、殆どの家が灯を消して夜の帳と一体化しているようだった。
魔物の結界には独特の匂いがあって、それを知っているコンの嗅覚を頼りに探す。
この身体は普通の人間より身体能力が上がっているというが、五感も優れているのかもしれない。
それでも仮に味覚が上がっていたとしても、何かを食べる必要が無いなら無意味なのだ。
自分らが人を食べたいという欲求が無いのは何故だろう、とハクトは問いかける。分からん、とコンは小さく呟いた。
「……味を知れば食いたくなるかもな」
一度でも人の肉を食べてしまった動物は、例え可愛い犬であろうとも始末される。
何故なら、人の味を覚えてしまったら、また人を食べる危険性があるからだ。
自分達も、それと同じ存在かもしれないと仮定する。どんな状況が来ても、絶対に避けなければならないとハクトは感じた。
一時間くらい歩いても、結界は見つけられなかった。
二人は徒歩にも関わらず、百メートルを十秒台で移動していた。原付程度のスピードを出しているにも関わらず、どちらも息が切れていなかった。
基本的に裏路地を選んで探しているのは、人の目に着かないようにする為もあったのだ。
「一体も現れない日はあるの?」
「……あるにはある」
見落としているだけかもしれない、ともコンは言った。先輩とはいえ、彼も魔物に喰われて一週間程度。まだ分からないことは沢山ある、と付け加えた。
「……あれ、使うか」
ボソリと呟いたコンは電柱に足を掛け、素早い動作で閉まっている郵便局の屋根へと飛んだ。
似たような動作でハクトも後に続くと、彼は遠くを見つめるように胡坐をかいた。
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