第2話

本当に進学しないのですか?あなたは成績がいいから狙えばそれなりのところへ行けるのに?家族の方とお話は?」

 担任の教師と向かい合い、二者面談という名の悩み事相談をさせられる。口を開けば家族家族。もううんざりだった。自分の人生だ。自分で決める。私にそのくらいの脳はある。

「家族に話しはしていません。母はすぐ兄の話をしますし、父は呑んだくれていて話せるような状況ではありません」

 担任の顔が納得と同情の入り混じった表情に変化する。ごめんなさい、と口を濁す担任に、私は笑みを浮かべて見せた。

「気にしないでください」

 担任はとても申し訳なさそうな表情になり、嫌な言葉を吐いた。

「困ったこととか苦しいことがあったら、なんでも助けになりますから」

 なんでも?なんでも助けになる?困ったこと?苦しいこと?

 いつも困っている。

 働けなくなって家で延々泣いている母にも、二日酔いになっても酒をやめられなくなっている父にも、食事時にすら自分の部屋から出てこない兄にも。

 いつも苦しい。

 勉強にバイト、家事、家族。手いっぱいで将来のことを考える余裕なんてない。今を生きるのに必死だ。とてもじゃないが、青春を謳歌するなんていう時間は、私にはない。

 それを言ったところでどうだ。

 何もましになりはしない。


 私は口先だけのお礼を述べて、部屋を出た。

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いつかまた会おう 行平かのん @non-non3535

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