大統領選挙-part 4 暴露スキャンダル

龍玄

大統領選挙-part 4 暴露スキャンダル

 中共ウイルス前線から帰還したカードは、完全に陰性であることを声高々に唱え、強い大統領であることをこれでもかとアピールし、各選挙区を精力的に回っている。

 一方、バイトはこの大事な時期に殆ど姿を見せない。対極の選挙戦を呈している。

 バイトの所属する民主党のナンシー下院議長は10月8日、大統領の「罷免」について規定したアメリカ合衆国憲法修正第25条を議論すると明らかにした。

 中共ウイルスに感染したカードに職務遂行能力があるかを判断するためだ。

 しかし、その本音は、バイトが任期の4年を勤め上げられないと視て速やかに副大統領候補のパリズン上院議員に譲らせたいとの思惑が見え隠れしている。

 この段階で25条を持ち出してカードを責め立てようとすれば、同じ理由でバイトの痴呆症について返す刀で切り込まれる危険性は言うまでもない。

 その危険を冒しても議論を持ち出すことは、民主党内部の分裂を浮き彫りにしているのではと憶測されても致し方がない。

 この大事な時期に自軍の候補者を攻撃するようなもの。正気の沙汰ではない。

 元大統領専属医師ジャクソン氏は10月13日の電話会議で「選挙活動中のバイト氏をずっと監察してきたが、私は心配している。彼が国家元首になるための知的能力・認知能力を持っていないと確信している」と述べた。ジャクソン氏はジョージ・W・ブッシュ大統領、バラック・オバマ大統領、ドナルド・カード大統領の下で大統領専属医師を務めていた。

 ジャクソン氏はバイト候補が混乱の中で「上院議員」に立候補しているのは、フラストレーションの渋滞から抜け出そうとしている認知障害者の反応だと力説し、状況がさらに悪化していると語る。

 元国家安全保障担当補佐官代理のランド氏もバイト候補の能力を疑問視し、私はジョー・バイト氏のことを長い間知っており、彼は良い人だが強い人ではない、と懸念を顕にした。ワシントン・エグザミナー紙の新しい世論調査では有権者の60%はバイト候補の年齢を非常に、またはかなり心配していると報じている。


 認知機能低下は大統領に相応しくない、と身近にいればこそ、普段の行動から伺えるバイト氏への危機感が頻拍している言う裏付けかもしれない。

 副大統領候補のパリズンもまた動けないでいた。10月8日、同行していた自分の報道官とスタッフが中共ウイルスに感染。濃厚接触者として、行動の自粛を余儀なくされている。最悪な場合、パリズンも陽性になるかも知れない。オクトーバーサプライズの猛威は止まる処を見せない。


 スキャンダルが発覚した。


 「やぁ、カード、元気かい?」

 「どうしたんだ、ジュリアーニ」


 ジュリアーニは、元ニューヨーク市長であり、カード大統領の個人弁護士だ。


 「民主党のナンシー下院議長が憲法修正第25条を持ち出して、君を罷免にしたいそうじゃないか」

 「有難いねぇ、私の体調を気遣ってくれるなんて、マスクでも贈ってやるか?」

 「強気は変わらないな、それでいい。本題に入ろう。予てから調査していた案件が見つかったよ」

 「本当か!」

 「ああ、これを見てくれ」


 ジュリアーニはノートパソコンを鞄から取り出し、カードの座る机に置き、起動させた。予てからの案件とは、噂はあったが証拠らしきものがなく、闇に葬られようとしてものだった。


 「これは?」


 カードはパソコンに映し出される電子メールの数々に目を通していた。


 「そうだ、証拠だよ」


 ここに来て、闇に光が差し、現実味を帯びてきた。


 闇に葬られようとしていた案件とは、バイト一家の犯罪だった。


 バイトの副大統領時代の海外賄賂事件だ。ルートはふたつある。ウクライナルートと中国ルートだ。噂はあった。しかし、証拠がなかった。それが今、思わぬ処からカード陣営に届けられた。


 ハンター・バイトがウクライナのビジネスマンを副大統領に紹介した決定的な証拠(Smoking-gun)となるメールが大量に陽の目を見たと言うものだった。


 ウクライナのガス会社ブリスマが賄賂容疑で捜査される前、バイト副大統領がウクライナ政府に捜査担当の検事総長を解任させよ、と圧力を掛けたいうものだった。そこに金銭の授受があったのかは不明のままだった。今回のメールは金銭の授受を明らかにするものととして十分なものだった。


 バイトが検事総長の首を切った一年前、バイトの息子のハンター・バイトがブリスマの幹部を副大統領の父に紹介した。

 ブリスマ社の幹部はハンター・バイトに、「君の影響力を当社のために使って欲しい」と依頼してきた。その依頼を受け、ハンターは父の副大統領を担ぎ出した。その結果、エネルギーに関する学歴や経験がないにもかかわらずハンター・バイトはブリスマ取締役会顧問を務めた後、毎月、同社から最高5万ドルの報酬を得ていた。

 この件についてバイトはインタビューを受けた過去があった。その際、バイトは、「息子の海外事業について話したことは一度もない」とその後も同じ問いに何度も同じ返答を繰り返していた。

 今回のメールはそれとは矛盾するものだった。だとすれば、バイトは国民に嘘をつき続けたことになる。


 一通り目を通したカードは、紅潮した顔つきでルドルフを見た。ジュリアーニは自慢気に笑顔で返すと「もう、手は打った」と勝利の美酒を交わすようなジェスチャーでおどけて見せた。


 「何をした、相談もなく、まぁ、いい。結果が出るならな」

 「済まなかったな、確認に三週間も掛ったよ。それに君が入院などするからこちらで片付けさせて貰ったよ」

 「好きでしたわけではない。で、勿体ぶらずに言ってくれ」

 「明日の朝を楽しみにしてくれ」

 「明日の朝?」

 「ああ、君の好きな新聞さ」

 「新聞だって?私をこけ降ろす悪趣味のか」

 「あはははは。そうだったな」

 「からかって面白いか」

 「ああ、面白いね。君が驚く姿をみるのはね」

 「どこの新聞だ」

 「私が市長を務めていた時に懇意にしていたニューヨーク・ポストだ」

 「ニューヨーク・ポスト…か」

 

 ジュリアーニがこのメールを手に入れて経緯はこうだ。


 デラウェア州のコンピューター修理店の店主によると2019年6月4日にある人物が水に浸かったアップルのノートパソコンを修理に出してきた。しかし、幾ら待っても取りに来ない。当然、代金が支払われずに回収もされなかった。困った店主は、書かれていた電話番号に連絡したが、返事はなかった。何か先方に不都合でもあったのかと思い、普段はしないしなくていいコンピューターの検査を余儀なくされた。

 検査して驚いたのは、ハードディスクにはハンター・バイトがコカインを吸引するなどの薬物使用の姿やポルノビデオなど大量の秘密がそこにはあった。

 店主はこれがハンター・バイト本人のパソコンだと断定はしないがパソコンにはボー・バイト財団(BBF)のラベルが貼られていた。2019年末、店主はこの事件を連邦政府に報告した後、パソコンとハードディスクは連邦捜査局(FBI)に没収された。がその後の消息が明らかになっていない。

 店主はカード大統領の支持者だった。その為万が一役立てばと思い、ハードディスクの中身をコピーし、ジュリアーニの窓口である彼の個人弁護士のロバート・コステロに渡した。2020年9月下旬、ニューヨーク・ポスト紙は、ジュリアーニからこのコピーを入手した。

 メールは、克明で言い難いものだった。内容はあながち嘘ではないと思えた。ハンター・バイト自身がアルコール中毒で在り、買春中毒である事を告白している。

 

 疑問点は残る。信憑性の是非もそこにあるかもしれない。バイト家の地元のパソコン修理店に何者かがハンターのパソコンを持ち込んでいる。そして、その店主の所にFBIがやってくる。何故、どこからの情報で、何を目的にやってきたか、押収した本物のパソコンの行方は…、なぜ、カード支持者の所に…、謎は残る。ただ、アルコール依存症であるバイトの行動も予測できないものであり、いくつもの不思議が折り重なった出来事なのかもしれない。


 2014年5月12日、ハンターがウクライナの天然ガス会社のブリスマ取締役で入社した直後にブリスマの取締役会顧問ポザルスキーは、ハンターに電子メールを送り、父親の政治影響力を使って、会社を助けてほしいと要請したと言います。


 ハンターが父親に送ったメールこうだ。


 「お父さんに会いたい。ブリスマに会って力を貸して欲しい」


 ブリスマ社のポザルスキーからは

 

 「親愛なるハンターさん、ワシントンDCに招待してくれてありがとうございます。そしてお父さんに会って一緒に時間を過ごした機会を与えてくれてありがとうございます。それは名誉であり喜びでもありました」とある。


 メールはまたハンターのビジネスパートナーブリスマ取締役会のもう一人のメンバーであるデボン・アーチャーにも送らた。

 アーチャーは最近、詐欺罪で判決を受けたばかりだった。


 当時、ウクライナ側の事務を担当していたバイト副大統領は、2016年にブリスマ社の汚職事件に介入し、ブリスマ社を起訴したビクター・ショーキン検察官を解雇するようにウクライナに迫った。応じなければ、アメリカによる10億ドルのウクライナ支援を保留するぞ、と脅した映像も存在した。


 上記に加えて、更に疑惑がある。大統領候補のバイトは、息子のハンターを中共の上層部に紹介している。その後、中国の銀行はハンターの会社に多額の資金を融通している。その後も幾度にも渡って。その内容はこうだ。

 中国エネルギーの異業種の会社まで合併などで吸収し、多種類の事業を営む大企業、複合企業であるコングロマリット、CEFC CHINAとの関りのことだ。

 ハンター、Ye Jianming CEFC元会長ら4人は、CEFC CHINAとの取引の為、新会社を設立。中国への投資を基盤とした会社だ。4人は新株の90%を四等分し、残り10%をビッグガイ(大物=バイト?)に配分した。

 また、ハンターはYe Jianmingと半分ずつ株を保有し、合弁会社を設立。ハンターの役目は、Yeの要望した人物(バイト?)に紹介するだけで年に10億円の報酬を毎年得ていた。

 2017年11月、米司法省は、旧香港、その代表者を通じて、石油の権利のためにチャドの社長にUS $ 2百万の賄賂を提供して、CEFCを内務長官 パトリック・ホーと元セネガル外相 Cheikh Gadio Aを堆積し、ウガンダの外務大臣によって指定された口座へ50万米ドルの賄賂を送金した。エネルギー基金は、Yeが汚職行為に従事することを許可することを拒否した。2018年12月、Yeは、ガディオが検察官の証人として立った裁判の後、賄賂とマネーロンダリングの7件の罪で米国連邦裁判所で有罪判決を受けた。CEFC CHINAは、2020年に不可解な倒産をしている。

 

 ついにバイトの中国からと副大統領の職務から得る利益相反とウクライナに行った権力の乱用のスキャンダルがニューヨーク・ポストによって暴露された。

 多くの人がTwitterとfacebookで拡散され始めた。

 すると、Twitterとfacebookは、ニューヨーク・ポストの記事を添付または拡散しているアカウントを次々にブロックし始めた。リツイートが出来なくなったのだ。

 ホワイトハウスの報道官のTwitterアカウントも当日、ニューヨーク・ポストがバイト一家の腐敗を暴露した証拠をリツイートした後、アカウントがロックされた。

 これが新たな火種を撒いた。

 事実上の検閲。

 共和党は、「これはスキャンダルの隠蔽。民主党のために働いている」と声を上げた。カードの所属する共和党の上院議員は早々にTwitterとfacebookの社長を議会に呼び出して事情説明を求めている。このことを知ったバイトは誰にも会わないでいる。反論しないのは、限りなく拙い状況だということを表しているに他ならない。

 バイト一家のスキャンダルが暴露された後、瞬く間にアメリカで注目の的となったがTwitterとfacebookはいち早く検閲を行い情報封鎖をしたため、社会からの反発を招いた。

 facebookはニューヨーク・ポストの報道に対して特別な検閲処置を講じ、プラットフォーム上での配信を制限した。

 Twitterは根拠もなく「ハッカーにハッキングされた資料を公開した」として非難した。

 ニューヨーク・ポストのTwitterのメインアカウントは水曜日の午後2時20分にブロックされ、またニューヨーク・ポストの記事のリンクが有害であるとしてリンクの共有を阻止された。

 この事件はアメリカ社会を大きく揺るがし、すぐさまネットや政界から疑問の声が上がった。「まさかTwitterも中共を名乗るとは」とネットユーザーの意見。


 facebookの広報担当アンディ・ストーン氏は、Twitterでこの事件はfacebookの第三者による事実確認を要する条件に完全に当てはまっていると弁明した。

 ミズーリ州の共和党上院議員ジョシュ・ホーリー氏はすぐさま疑問を呈しfacebookのCEO・ザッカーバーグ氏に書簡を送り、検閲について更なる説明を求めた。

 ホーリー議員は、facebookが完全にはっきりと説明すべきで事件の背後で検閲を行っているすべての者を直ちに停職させなければならないと警告した。

 もしこれがfacebookの政策ならばアメリカ人には事態を知る権利がある。カード大統領もツイートしSNSが権利を乱用していると批判し、SNSの免責規定である通信品位法230条の廃止を呼び掛けた。

 通信品位法230条とは、企業がコンテンツを「誠意(good faith)」をもって制御しているか否か次第にすることを目的とするもの。この「誠意」基準の明確化は、連邦通信委員会 (FCC) が担うことになる。この大統領令は、大統領府が「誠意がない」とみなすようなかたちでソーシャルメディア企業がプラットフォーム上の投稿を制御しようとした場合、免責の権利を剥奪できるようにする内容で、ソーシャルメディア企業は利用者からの訴訟の洪水に飲み込まれる脅威にさらされる可能性がある。


 カードが意見を投稿し、何かと物議を交わすTwitter社の新任取締役に李飛飛が決った。中共の千人計画に参加した事実は明るみになっていないが、彼女と密接な関係を持つ多くの人たちがこのプログラムに深く関わっているのは事実だ。

 (Part3に詳細あり)

 

 10月14日朝、ニューヨーク・ポストは大統領選前のオクトーバーサプライズとしてバイトの息子、ハンターバイトのウクライナでの汚職スキャンダルに関する電子メールが暴露されたことを報じ、このニュースは直ぐにアメリカの多くのメディアに取り上げられ、上院国土安全保障 政府問題委員会が調査に介入することになった。


 混沌とするアメリカ大統領選び。

 

 しかし、メディアはバイト優勢の記事を流す。危惧されるのは、期日前投票だ。今回は中共ウイルスの影響を受け、郵送投票が前回を大きく上回っている。

 民主党によるバイトへの不信感がすでに燻っている。スキャンダルが反映されない事態も考えられる。


 スキャンダルを報じているのは、スクープとして報道したニューヨーク・ポストとそのニューヨーク・ポストにスキャンダルを持ち込んだジュリアーニに独占インタビューをしたデイリーコーラーだけだ。

 CNN、ワシントンポスト、ワシントンポストニューヨークタイムズなどの主要メディア一切沈黙を保っている。証拠がないからと…。証拠がないからと報道しないのはあまりにも可笑しい。なければその真偽を追求するのがマスコミの意義のはずが。

SNSからの拡張もアカウントはブロックされたまま。Twitterは、通信品位法230条を持ち出されて慌てて見直したと言うものの混乱の最中だ。facebookの動向も不透明なままだ。


 修理店の店主は、データの中身を知り、身の危険を感じ、保護を求めてFBIに報告した。FBIの捜査官は、寡黙に対応した。ジュリアーニがデイリーコーラーのインタビューを受けた際、「そんな大袈裟な」と笑った。ジュリアーニはすかさず真剣な顔で「笑うな」と言った。そしてこう続けた。「この背後には、大変危険な組織が関与している」と。

 ジュリアーニはPCのデータコピーを三週間かけて調べ上げた。その結果、何らかの大きな力を嗅ぎつけた。店主の命も自らの命も危険に晒すほどの。それだけに暴露には慎重さと危険を余儀なくされていた。


 マスコミ、メディア、SNSをも動かす大きな力。検閲に関してもステルスの力が働いているのは否めない。大統領選挙も大詰めになり、今回のスキャンダルは大手メディアによってなかったことにされようとし、報道しないことで国民の関心を削ぐ動きに働いている。


 それを予想していたように、次なる暴露を投じれば、バイトは終焉を迎えるとの確信を持って挑む覚悟でいる。


 反カードのメディアのポリティコは隠れた要素を考えると驚きのカード勝利があるのでは、と報じている。眉唾事で見てもスルーできる問題ではないと言う危機感が読み取れる。


 マスコミは騒がなくても民主党は、薄氷の橋を渡る思いで、バイト排除に動いているのも確かだ。カードは嫌われてバイトが勝つ。そして、病気を理由にバイトを一線から退かせるシナリオを早急に構築している。


 真実が暴かれれば、大統領選そのものが無効になる事さへ視野に入り始めた。

 バイト新大統領、汚職で逮捕。私には見覚えがない。痴呆症の悪化か、と言う記事が紙面やSNSを騒がせるような事態だけは避けなければならいだろう。




 

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