レース編みのアラネア
黒イ卵
✴︎✴︎✴︎
しめった空気が流れ、土のむわっとしたにおいとまざり、アラネアのレースも、しっとりしてきました。
「いそげ、いそげ」
お
「レース編みを終わらせないと、
朝から何も食べていないアラネアは、クラクラする体をふりしぼり、しめったレースを編んでいきます。
いそいそ、あみあみ……。
どうにも、ぬれてうまくいきません。
あせってしまううちに、お空の虹が消え、
お日さまが、
「ああ、ちいさなベッドができたわ」
アラネアはホッとひと
「なにか
「こんばんは、アラネアさん。どうか、レースを編んでくれませんか?」
そこにいたのは、
いつのまにかお
アラネアはお腹が空いていたので、背中のてんてんごと、食べてしまおうか、と思いました。
「
ぷうんと、よいかおりがするミツの入った花を見せられ、たまらず、アラネアは言いました。
「引き受けるわ! そのかわり、ミツはいますぐちょうだい!」
「いいですよ」
アラネアはミツを受け取ると、あっというまに
「ああ、おなかいっぱい。ねむくなったわ」
アラネアは、さっそく作ったベッドでねむろうとしました。
「アラネアさん、
このところ、ずいぶん
こまったわ。アラネアは思います。
レースを編むわけにはいきません。アラネアの
アラネアはうーんうーんとうなると、そのまま、ぐうぐうねむってしまいました。
「おはようございますアラネアさん。さあ、ミツを
「ごめんなさい。あんまりお腹が空いて、ミツをもらったら、
「そんな! そうしたら、ぼうやたちが冬を越せません。冬の
星明かりの虫の背中の星が、
「そうだ、アラネアさん。あなたの冬越えのために、とっておきの
世界樹の葉だなんて! なんてステキなの、アラネアは思いました。わたしなら、冬のドレスにも、コートにもできるわ。
ミノムシは、体のまわりに葉っぱをまとってるだけですもの。
「わかったわ! ぼうやたちのために、レースを編みましょう。そうと決まれば、いそがなくっちゃ」
アラネアはミツをひと息に飲みほすと、さっそく、小さな
「ふう。まずはここまでね。今日は、私の
「アラネアさん、ありがとう! とても
こうして、冬に
秋の終わりがやってきました。
「アラネアさん、おかげで、ぼうやたちはこごえずに過ごせるよ。ありがとう」
「こちらこそ、おいしいミツと、あたたかい葉っぱをありがとう。おかげで、冬を越せるわ」
アラネアと星明かりの虫と、およそ
(おわり)
レース編みのアラネア 黒イ卵 @kuroitamago
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