第15話 好奇心旺盛ってそう言う事や
エルフの里にやってきたライはエルフの熱烈な歓迎により宴会に参加する事となった。
閃光の貴公子ジュリウスというエンシェントハイエルフを探しに来たのだが面倒な事になってしまった。
しかし、情報を得るためには仕方がない。
ライは渋々ながらも宴会に参加し、エルフ達と酒盛りを交わすのだった。
「うっひょー! 楽しい!」
呆れるくらい宴会を楽しんでいた。
最初こそ渋々といった感じであったのに、今はエルフと肩を組んで楽しそうに踊っている。
『そういえば主は酒を飲んだ事があったか?』
『いえ、私の記憶では一度もありません』
『帝都でも飲んでいなかったな』
『はい。水や果実水は飲んでいたようですが……』
『アルコールに弱いのか……』
『恐らくは雰囲気ではないでしょうか? マスターの肉体は史上最高峰のものです。酔っ払う事はないでしょう』
『なるほど。宴の雰囲気と酒の相乗効果で、か』
『推測ですけどね』
宴会の会場はエルフの里の広場だ。
丸太を組み上げ、大きな焚火が森を照らしている。
メラメラと燃え盛る焚火の周囲でエルフ達が踊り、酒を飲み、料理を楽しみ、音楽を奏で、大いに盛り上がっている。
その中心にいるのがライだ。
エルフ達と一緒に宴を思いっきり楽しんでいた。
「たーのーしー!」
「いい飲みっぷりですね、魔王様! いえ、魔裸王様!」
「誰が魔裸王様だ! それ教えたの絶対スカイだろ!」
そう言ってライは隅の方でエルフ達からご馳走を振る舞われ、酒を浴びるように飲んでいるライを睨みつける。
「はい! なんでも魔裸王様は先代魔王のガイアラクス様を人間界で下し、こちらの世界にやって来た時、全裸だったと仰っていました!」
「間違ってはいないけど……認めたくない」
「なんでも全裸のままで竜族に啖呵を切ったそうで。それはそれはもう見事だったと仰っておられましたよ?」
「いや、確かに口喧嘩みたいな事はしたけどさ~……」
一切脚色していないから否定しがたい。
スカイが話した通り、ライは魔界に裸一貫でやってきた。
聖剣と魔剣を携えてだが、裸なのは間違いない。
その状態で竜族を相手に啖呵を切り、戦おうとしていたのだ。
現場にいたスカイからすれば奇想天外な出来事で笑い話にしたくなるのも当然だろう。
だが、それはそれとして魔王ではなく魔裸王という名称を広めようとしている事は許せない。
「ん?」
エルフ達と話していると視界の隅で蹲っているクーロンを発見した。
何かあったのだろうかと心配になったライはエルフ達をどけて、苦しそうにしているクーロンの元へ向かう。
「どうした!? クーロン! 何かあったのか?」
「いえ、少々食べ過ぎたと言いますか……」
「食べ過ぎ? なんだそう言う事か……」
とりあえず、病気や怪我ではなさそうなので心配はないだろう。
ホッと胸を撫でおろすライはクーロンの傍に座った。
「なんか飲み物でも貰ってこようか?」
「いえ、大丈夫です。しばらく安静にしていれば治るかと思いますので」
「そうか。じゃあ、俺はもう少し宴を楽しんでくるよ」
「あ、待ってください。一つだけ忠告があります」
「何?」
「エルフ達は長命種という事もあり、好奇心旺盛です。具体的に言えば、女性のエルフからお誘いを受けるかもしれませんので、気を付けてくださいね」
「分かった。女性のエルフに気を付ければいいんだな?」
「はい。出来ればエルフ全体ですが……」
クーロンから忠告を受け、ライは再び宴に戻る。
またエルフ達に囲まれ、酒を注いでもらい、料理に舌鼓を打っていると、程よく酔いが回り、頬を紅潮させているエルフが耳打ちしてきた。
「ねえねえ、魔裸王様は人間なんですよね? 私、里の外に魔裸王様を迎えに行った友人から聞いたんですけど、股間のものがとても立派なんでしょ? 人間とはやった事がないんで一度、試してみたいんですけどいいですか?」
ドストレートなお誘いにライは飲んでいたお酒を噴出した。
見られていた事もそうだが、それ以上に里で噂になっているという事実にライは驚く。
『なるほど! 長命種ならではの好奇心か。エルフは長命種ゆえに人間と違い、種の保存にはあまり積極的ではないが性行為については貪欲なのだろうな!』
『快楽に溺れるのは人間もエルフも同じなのでしょう。ただ、やはり長命種ですから、そこまで必要性は感じないのでしょうけど、未知の快楽には興味津々みたいですね』
「(冷静に分析してるみたいだけど、俺にはアリサとシエルの二人がいるからやらないけど!?)」
『あの二人は浮気、不倫をしたら主を殺しそうだな……』
『殺されるだけならいい方では? 拷問もあり得そうですけど……』
『カラカラになるまで搾られるかもな!』
『それもあり得そうですね~』
「(他人事だからって笑いすぎじゃないか!?)」
主のピンチだと言うのに面白そうに笑うブラドとエルレシオン。
その一方でエルフに迫られているライはなるべく相手を傷つけないように、どう断ろうかと悩んでいた。
すると、そこへ他のエルフも聞き耳を立てていたようで大人数が押しかけてくる。
「ちょっと! 私も魔裸王様を狙ってたんだからね!」
「ずるいです~! 私も魔裸王様を味わってみたいです!」
「三人とかでどう? 私は一対一じゃなくても全然いいよ!」
「人間のチ〇ポ、非常に興味深いッ!」
「エルフとは一味違った性行為をしてみた~い!」
「先っちょだけ! 先っちょだけでいいから!」
「エルフと人間って子供が出来るのかしら? 試してみたいわね」
「とりあえず、気持ちいい事したいな!」
アリサとシエルの二人によって鍛えられているライだが、この人数を相手にするのは無理だ。そもそも不倫になるのでする事は出来ない。
ライは押し寄せてくるエルフ達から後ずさりして、逃げようとした時、背中を固いものにぶつける。
何かにぶつかってしまったライは後ろを振り向くと、そこには男のエルフ達が立っていた。
「あ、あの、これは違うんですよ……」
睨みつけてくるので彼等が彼女達の旦那、彼氏なのかと思ってライは弁明を始める。
「ん? 別に怒ってはいないぞ?」
「え? じゃあ、何ですか?」
「我々も混ぜてもらいたいだけだ」
「へ? 混ぜてもらいたいとは?」
「言葉通りだ。我々の相手も是非! むしろ、相手になってくれても構わない!」
そう言ってライの尻を鷲掴みするエルフ。
貞操の危機を感じたライは顔を真っ青にして、その場から逃げ出した。
「「「「「「「待ってー! 一夜限りでいいからー!」」」」」」」
「お断りしまーすっ!!!」
泣き叫ぶようにライは宴の間、襲ってくるエルフ達から逃げ回るのであった。
※※※※
二年ぶりの更新!
完結させたい!
ついでに書籍化もしたい!
編集者様、出版者様拾ってください!
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