第14話 魔裸王様! 魔裸王様であられるか!

 エルフ達のもとへ戻ってきたライとスカイは、そのままエルフ達に里へ連れて行かれる。

 素っ裸で隠そうとしないライにエルフ達は何の疑問も抱くことなく、里へと案内した。妙な雰囲気にクーロンは首を傾げたが、誰も気にしていないようだったので何も言わなかった。


 エルフの里へやってきたライは巨大な木々の上で生活をしているエルフたちを見て大きく口を開いた。


「すげ~~~」

『天敵がいるわけでもないのに木の上で生活をしているのか?』

『そういう文化なのでしょう。水の上に家屋を建てる民族だっていますし』

『そういうものか』

『そういうものなんです』

「(ほへ~~~)」


 呑気そうな声を出しながらライはエルフ達の後ろをついていく。案内されたのはエルフの里で一番大きな屋敷だった。

 恐らく、ここは里で一番偉いエルフが住んでいる場所だろう。ライは促されるままに屋敷へと足を踏み入れた。


「ようこそ、新たなる魔王陛下。我々、エルフは貴方様を歓迎いたします」


 屋敷ではなく集会所だったようで数多くのエルフが待ち構えていた。その中でも一番奥に陣取っていたエルフが両手を広げてライを歓迎する。

 何かの罠ではないかと警戒するライだが、敵意も殺意も感じられないので警戒を解いた。


「え、え~っと……どうも、魔王のライです」


 歓迎されているライは戸惑いながらもぺこぺこと頭を下げて挨拶をする。ちなみにスカイは集会所に入ることが出来ない為、外で待機しており、好奇心旺盛な子供エルフの相手をしていた。


 そして、もう一人の従者であるクーロンは全裸のライの一歩後ろに立っていた。主というか、友というかなんとも微妙な関係であるクーロンはライに服を着て欲しかったが、彼はあまりにも堂々としている為、何も言えず、ただ黙って見ているだけであった。


「おお! 貴方様が新たな魔王陛下であらせられるか! しかし、これはまたなんともご立派な……」


 その目線はライの下半身に注がれていた。確かに立派なものをぶら下げているが、そこを見ながら話すのはどうかと思う。

 しかし、それ以前に問題なのはライの方であろう。服を着てない方が悪い。視線が下に集中してしまうのも無理はない。


「どこを見てるんだよ!」

「はて? そう言われましても隠そうとしないので、これは見てくれと言っているのかと思いまして」

「違うわ! と、とりあえず、服をくれませんか?」

「え? 服が必要なのでしょうか?」

「必要だよ! なんで必要じゃないと思ったの!?」

「いえ、あまりにも堂々とした振る舞いでしたので、てっきりその恰好が正しいのかと……」

「これには深い理由わけがあるんだよ。とにかく、先に服をください」

「畏まりました」


 ライを歓迎していたエルフがパンパンと手を叩くと、別のエルフが現れた。彼はそのエルフにライの服を持ってくるように命じる。

 しばらくすると、ライの傍に先程のエルフが現れる。彼の手には服が握られていた。ライはお礼を言ってから服を受け取り、その場で素早く着替えた。


「ふう。これで落ち着いた」

「では、魔王様。お話を続けてもよろしいでしょうか?」

「話って言われても何も話してなくない?」

「そうですな。まあ、話と言っても歓迎会についてですが」

「歓迎会……? なんで?」

「新たなる魔王様を迎えいれるのですから、歓迎会は当然かと」

「そういうもんなの?」


 疑問に思ったライは背後に控えているクーロンに尋ねた。


「新しい魔王を歓迎するという意味なら必要かと……」

「本当に?」

「恐らくですが、彼等は多分宴会を開きたいだけです」


 クーロンの言葉を聞いてライは先程まで話していたエルフに目を向ける。

 ニッコリと微笑む姿はとても絵になるのだが、あの笑顔がただ宴会を開きたいだけだと知ってライは少しばかりエルフの生態を疑った。


「こちらとしては、ジュリウスの話を聞きたいだけなんだが?」

「おお! そういうことでしたら、やはり歓迎会をしなければなりませんな! ジュリウス様は宴会が大好きでしたゆえ!」

「もしかして、フラッと現れるかもしれないと?」

「ええ! 実際、我等が酒盛りをしていたらいつの間にかいたくらいの御仁ですから」


 なんとも自由なエルフだ。話を聞く限りでは宴会を開くのも一つの手だろう。しかし、ライはエルフの里に入る前に彼等が数百年前の話をしているのを覚えていたので不安で仕方がなかった。


「まあ、ジュリウスのことを教えてくれるなら……」

「それでは早速準備といきましょう! 皆の者、新たな魔王様を祝って宴だ!」

『おおーッ!!!』


 妙にやる気に溢れているエルフ一同。長命種は娯楽に飢えていると予め聞いていたが、これ程とは思いもしなかったライは押され気味である。悪い連中でないのがまた厄介であった。


「(断りにくいんだよな~。いっそのこと、この醜い人間が! って敵対してくれたら楽なのに……)」

『エルフは温厚な性格だからな。そのようなことはない』

『歓迎してくれる方たちをそのように言うのはどうかと思いますよ』

「(わかってるって……。はあ、やりにくいな~)」


 まだエルフの里に来たばかりだというのに、どっと疲れたライは肩を落とすのであった。

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