第11話 三人目の仲間ゲットだね!
新たな仲間クーロンをお供にライは羽翼族の里を後にする。
「それじゃ、お世話になりました」
「いえ、こちらこそ大したおもてなしも出来ず申し訳ありません」
「いや、人間界へ帰れるかもしれない事を知っている人を教えてもらっただけでもありがたいです」
「そう言っていただけると幸いです」
里の長であるミネルバに出来るだけ丁寧な言葉遣いでライはお礼を述べる。彼女の横にいた先代のアストレアにもライは頭を下げて、クーロンと共に屋敷を出て行く。
外に出ると、暇を持て余していたスカイが眠っていた。身体を丸めて寝ており、猫のような感じだ。ライは声を掛けて起こそうとしたが中々起きないので最終的に蹴りを叩き込んで無理矢理起こした。
「いてーッ! なにすんだよ!」
「何するってお前が中々起きないのが悪いんだろ。ここでの用事は済んだから行くぞ」
「だからって蹴って起こすことはないだろ。行くってどこへ行くんだ?」
悪態を吐きつつもスカイはライにどこへ行くのかと問いかける。
「ああ、場所じゃないんだ。ジュリウスっていうエンシェントハイエルフを探しに行くんだ」
「ジュリウス? 聞いたことねえな」
「スカイも知らないのか? ちなみに竜王は?」
「多分、知ってるかもしれないがいる場所までは知らないと思うぞ」
「そうか。じゃあ、しらみつぶしに魔界中を探すしかないのか……」
「羽翼族は知らなかったのか?」
「場所までは知らなかったみたいだ」
「そっかー。じゃあ、また一から探すのかー」
振り出しということでもないがスカイは少しだけ息を吐いた。面倒という事はないがあてもなく一人の人物をこの広い魔界から探すのは骨が折れるなと思っていた。
「まあ、クーロンもいることだし、これから頑張ろうぜ」
「へいへい」
「精一杯頑張らせていただきます」
やや気だるそうに返事をするスカイと元気よく返事をしてくれるクーロン。ライは二人も仲間がいればなんとなるだろうと呑気に考えていた。それにブラドとエルレシオンもいる。きっと問題はないと口角を少しだけ釣り上げるのであった。
◇◇◇◇
ライ達がフリューゲルを去ってから少しして、ミネルバとアストレアはお茶を飲んでいた。
「そういえば、一つ伝え忘れてましたね」
お茶を飲みながら、ふと思い出したアストレアは呟くとミネルバが反応した。
「忘れてたって何をですか? もしかして、居場所の事ですか? それでしたら、今すぐ追いかければ追いつくと思いますが」
「いえ、そうではありません。ジュリウスについてです」
「ジュリウスについてですか? もしや! とても好戦的で野蛮なお人だとか!?」
「ふふ、違いますよ。彼はとても紳士です。ただ……」
「ただ?」
困ったように微笑みを浮かべるアストレアは頬杖をついて溜息を一つ。
「とっても変人なのです。恐らくはライ様と同等かそれ以上に」
「え……。それはなんとも言えませんね」
「私はお会いしたことありませんが噂によりますと、紳士なのですが予想の斜め上にいく変人らしいのです」
「予想の斜め上……。あのライ様も結構な変人でしたが、それ以上か同等とは。もしかして、強い人はどこかしら頭がおかしいのでしょうか?」
「滅多なことを言ってはいけませんよ。たとえ、それが本当だとしても」
ポコッと軽く頭を叩かれるミネルバ。身長差で言えばミネルバの方が親に見えるのだが、やはり先代は彼女のとって特別な存在なのだろう。叱られた子供の様にシュンと眉を下げていた。
「あうぅ……」
叩かれた頭を押さえながら呻き声を上げるミネルバを一瞥しながらアストレアはお茶を飲む。
「全く……」
と、呆れた様子であるが口元は笑っている。このやり取りが懐かしくて楽しいのは間違いないようだ。
◇◇◇◇
フリューゲルを去ってからライはスカイの背中に跨っていた。人間界では相棒のシュナイダーに跨って旅をしていたが、魔界ではドラゴンのスカイに乗って旅をするのが当たり前になっていた。
「いや~、やっぱり空の旅は楽ちんだな~」
「俺はお前の乗り物じゃないんだがな~」
「まあまあ、いいじゃないか。俺は魔王、お前は部下。なら、俺の乗り物になっても不思議じゃない」
「先代のガイアラクスより酷いな」
「ハハハ……。魔王らしいといえばらしいですけどね」
「おい、クーロン。他人事だと思って笑ってるんだろうけど、いつかお前もこうなるからな!」
「流石にクーロンの背中には乗らんよ……」
一人から二人、二人から三人に増えて会話が増した。空を飛びながら三人はワイワイ盛り上がる。
「ところで目星はついてんのか?」
「どこか適当な人里で聞き込み調査するしかないだろ」
「しかし、我々はジュリウスの特徴を一切知りませんが?」
「エンシェントハイエルフって種族名だけじゃ分からない?」
「無理だな。この魔界は広い上に歴史もある。知らない可能性が高い。同じエルフならわからんが」
「じゃあ、エルフの里に行けばいいんじゃないか?」
「そうですね。エルフの事なら彼等に聞くのが一番でしょう」
「そうと決まれば、次の目的地はエルフの森か~」
「なんか嫌そうだな。エルフはどんな種族なんだ?」
「森の引きこもりだ」
「それは些か語弊があるかと……」
スカイの言い分にクーロンが苦笑いである。ライはエルフについての知識が全くないためいまいちピンとこない。
「なあ、クーロン。エルフはどんな種族なんだ?」
「自然を愛し、争いを好まない穏やかな種族ですよ。ただ、争いを好まないと言いましたがとても強いです。長命種ですから、戦闘能力も高いですからね」
「うへ~……。敵じゃなくてよかった」
「基本は狩猟や採集をしており、織物といった手芸をして生活をしています」
「へ~……。なんか親近感沸くな」
元狩人のライはエルフの生活に親近感を感じていた。ライも狩猟や採集で生活をしていたため、エルフがどことなく自分達に似ていると思ったのだ。
「ま、とりあえずエルフの森に行ってみるか~」
スカイはそう言うと翼を大きく広げて加速する。ギュンと引っ張られるライは一瞬バランスを崩したが、すぐに体勢を戻してスカイにしがみついた。
「おい、もっと俺の事気遣えよ!」
「お前なら大丈夫だろ! それよりももっと飛ばすぞ!」
さらなる加速にライは風で吹き飛ばされそうになり、急いで障壁を張って風を凌ぐのであった。
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