第3話 どこへ行っても変態扱い
新たな仲間スカイを引き連れてライは魔界を旅することに。次元の穴も塞ぎ、憂いも無くなったライは、まず最初に服を探しに行くのだった。
「ふ~む。これは便利かも……」
「そうだろ~。空は俺達竜のものだからな~」
「ふ~ん」
「どうでも良さそうだな」
「そりゃそうだろう」
「まあ、人間は空飛べないしな」
『主はその気になれば空も飛べるぞ』
『正確には跳ぶが正しいですけどね』
一応、ライも飛べないことは無い。ただ、その方法が少々奇抜なだけだ。もっとも、ライは魔力や闘気を消費するのでおいそれとは使わないが。
「それで、今はどこに向かってるんだ?」
「あ~、ドワーフか羽翼族のところだな」
「ドワーフはなんとなくイメージできるけど羽翼族っていうのは知らないな」
「人間で言えば天使だよ」
「えっ!? 天使がいるのか? 魔界に?」
「違う、違う。羽翼族は翼の生えた人間みたいな見た目をしてるだけで天使なんかじゃない。てか、あいつ等を天使って呼んでるのは人間だけだ。まあ、翼の生えた人間で魔法が使えるからな。多分、人間が勘違いしてそう呼んでるんだと思う」
「へえ~」
スカイの言うとおり、羽翼族が昔、次元の穴を潜って人間界へ赴いた時、天使だと勘違いしたのだ。なにせ、人間と同じ見た目をしており、眉目秀麗で魔法という人間にはない奇跡を扱うせいである。その上、白鳥のような白い翼まで持っているのだから勘違いしてしまうのも仕方のないことだっただろう。
「でも、なんでその羽翼族の所に行くんだ?」
「見た目が人間なのもあるけど、衣類について結構あいつ等凝ってるんだ。だから、
「だから、魔裸王言うなっ!」
「いてぇッ! 殴ることないじゃないかッ! 暴力反対!」
「うるせーッ! うちでは言う事を聞かない子には痛い思いをさせてでも言う事聞かせるんだ!」
「あいてーッ!」
ボカボカとスカイの頭を殴るライ。先代魔王のガイアラクスは必要な時以外暴力を振るうことはなかった。そう言う意味ではライの方が魔王らしい。力を示し、他者を支配するやり方なのだから。
『主よ、あまり虐めてやるでない。彼なりに距離を縮めようとしてくれているのかもしれないんだ』
『とても親切に色々と教えてくれますし、悪い竜ではないのですから乱暴な真似はよして下さい』
「(うぐぐぐ…………)」
今回ばかりは二人の言う事は正しいとライも分かっているので反論はしない。ただし、納得はしていないが。それでも、非は認めているのでこれ以上スカイを殴るような真似はしなかった。
そうこうしていると浮遊している大地へと辿り着いた。ここが羽翼族の住処なのだろうかとライはスカイに尋ねる。
「ここに羽翼族がいるのか?」
「いんや、ここは関所。別に通る必要はないんだけど、一応今回はまあ、ライがいるから筋を通しておこうと思ってね」
「ほほう。なるほど」
「でも、ちょっと不味いかも」
「何がだ?」
「ライの格好だよ。裸の人間が竜に乗ってきたら、そりゃ警戒するっしょ?」
「まあ、確かに。ん?」
スカイの言うとおりだと納得してうんうんと頷いていると、いつの間にやら囲まれていた。
羽の生えた端整な顔立ちをしている人間みたいな羽翼族の戦士にライとスカイは取り囲まれている。羽翼族は警戒しており、槍と盾を構えて二人の様子を窺っていた。
そのことに気がついたライは囲んでいる羽翼族の戦士達に眼を向けるのだが、さらに警戒させてしまった。
「なんで?」
「魔族ってか、魔界の住人は基本魔力が見えるんだよ。多分、ライの奇妙な魔力が怖いんだと思うぞ。ほら、人間と同じで未知のものは恐ろしいってところだ」
「そっかー……」
「あと、なんで裸? とか思ってると思う」
「これには深いわけがあるんだよな~……」
哀愁漂わせるライは儚げに笑う。好きで裸になっているのではない。四天王ヴィクターとガイアラクスとの死闘で服が無くなったせいだ。しかも、ガイアラクスが残した爆弾である魔族の襲来を一人で抑える為に服を着る暇もなかったせいでもある。
「誤解ですって言えばどうにかなる?」
「難しいかも。話は聞いてくれると思うけど、とりあえず捕まると思う」
当然、わいせつ物陳列罪で逮捕である。何も不思議な事ではない。裸で人里に来たのだから当然であろう。むしろ、捕まらない方がどうかしている。
「服が欲しいだけなのに……」
「まあ、でも、あいつらも馬鹿じゃないから」
「どういうことだよ?」
「竜の俺がいるからってこと」
そう言うとスカイは一歩前に出て囲んでいる羽翼族の戦士達に声を掛ける。
「あー、おほん。ここにいるのは先代魔王ガイアラクスを下した新たなる魔王ライである。まずは武器を下ろして話を聞いて欲しい」
意外とまともに喋ることが出来るんだなとライは失礼な事を考えていた。軽薄そうに見えたが選ばれただけのことはある。
「偉大なる空の支配者よ。貴方様のお言葉であれば我々も従いましょう。しかし、その……」
「あ~~~、うん。お前達が不審に思うのは分かる。だが、お前達も感じている通り、この方の魔力は先代魔王に比肩するだろう?」
「はい。それは承知していますが……」
「我等竜族はこの方を新たな魔王として認めている。だから、どうかお前達も今は納得してくれないか?」
「……分かりました」
渋々ながらも羽翼族の戦士達は矛を収めてくれた。一件落着なのだが、どうしてもライは知りたかった。
「(人間界でもそうだったけど、もしかして俺って魔界でも異物扱いなの?)」
『…………』
その通りだとは口が裂けても言えなかった二人はただ黙っているだけだった。
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