第111話 修行、師匠、肉体言語こそ此の世の理!!!
二人が契約を行い、目を閉じている。その間、ライは何も出来ないでいたが、とにかく二人が無事でいますようにと必死に祈っていた。
すると、目を閉じていた二人から荒れ狂う暴風が生まれてライは思わず身構えてしまう。何事かと見張っていたら、二人がゆっくりと目を開ける。そうすると、先程まで荒れ狂っていた暴風が収まった。
「ふう……。無事成功みたいね」
「大成功です!」
そう言ってライを安心させようとニッコリ笑顔を浮かべる二人にライは堪らず、二人を抱きしめた。
「よかった、本当に良かった~~~!」
心配で心配で堪らなかったのだろう。ライの目からは涙がポロポロと零れ落ちていた。不謹慎であるが、そんなライを見て彼女達は興奮している。恐らく今夜も夜の運動に励むことは間違いない。
「あ、そういえばライに伝えなきゃいけないことあるのよ」
「私もです」
「ん? 何?」
「私達、ライの眷属っていうことになったの」
「は?」
いきなり、頭のおかしな言葉出てきてライは混乱している。眷族とは何ぞや、と。まあ、簡単に言えば彼女達はライの従者もしくは妻のようなものだ。
つまり、人外であるライと同列になったとも言える。
「え~っと?」
「難しく考えなくていいわ。私達は今まで通りだから。強いて言えば私達もブラドとエルレシオンとも話すことが出来るようになったくらいね」
「後は精神世界での修行が可能になりました。ちなみにライさんと心の中でお話しするようなことは出来ません……」
『うむ。無事に契約は完了した。とはいっても、持ち主は主であり、アリサ達はあくまでも眷属だ。我等を使うことは出来ないが持つ事は出来る。それに彼女たちはそれぞれ武器を持っているから必要ないだろう』
『私達は彼女達に知識や技術を教えることが出来るくらいですね。後はこうしていればお話し出来ることくらいです』
「ほへ~……」
いまいち理解しきれていないライだが、とにかく彼女達が無事だったのと契約が出来た事は分かったので良しとした。
アリサとシエルはライの眷属となったが特に変わったことはない。二人の言うように、彼女達も二人と意思疎通が出来るようになったくらいだ。そう都合よくはいかなかったようだ。
流石にアリサとシエルの二人がライと同じように聖剣と魔剣の能力を使えるようになれば、もう魔王軍など敵ではないだろう。ライ一人でも厄介なのに、三人に増えたらどうする事も出来ないのは目に見えている。
「それじゃ、早速だけど私ブラドと修行してみたいから、少し魔剣を借りてていいかしら?」
「ああ、うん。それくらいなら平気だよ」
「ありがと。それじゃ、早速行って来るわ」
そう言ってアリサはライから魔剣を受け取ると、目を閉じて精神世界へと意識を飛ばした。
残されたライとシエルだったが、彼女もアリサと同じくエルレシオンにに修行をつけてもらうため、ライから聖剣を受け取る事に。
「では、ライさん。私も行って来ますね」
「うん。頑張ってね」
「はい!」
という訳で一人残ってしまったライは二人が精神世界から戻ってくるまで、どうやって時間を潰そうかと考えた結果、筋トレをするのだった。
◇◇◇◇
「ふ~ん。ここが精神世界なのね」
『来たか』
「あれ? ブラドって女だったの?」
『これはアリサに合わせて姿を変えているだけだ。一応言っておくが、この姿は我の所有者だった者だ』
「あー、なるほどね。気を遣ってくれたのね。わざわざ、ありがと」
『何、礼には及ばん。むしろ、こちらの方こそ礼を言いたい。主を救ってくれてありがとう』
「別に私は好きでやった訳だからお礼を言われるほどでもないわ」
『そうは言うがアリサ達のおかげで主が救われたのは事実だ。どうか受け取って欲しい』
「そこまで言うならそうするわ」
『うむ。感謝する。さて、話はここまでにしてまず簡単にこの場所について説明しておこうか。ここは精神世界であるから死ぬことはないが、それなりの苦痛は味わう事になる。それから武器はイメージで作りだせる。試してみるといい』
ブラドの説明を受けてアリサは自身の所有している聖剣イグニスレイドを手に召喚した。軽く振って感触を確かめるアリサは本物と遜色ない感触に満足そうな顔で頷いた。
「うん、この感じは確かにイグニスレイドそのものね」
『把握したな。では、始めるぞ』
「ええ、望むところよ」
『アリサよ、お前が天才だというのは分かっている。ゆえに手加減は一切せん』
「上等! そうでなきゃ契約した意味がないってものよ!」
『ふっ、頼もしい限りだ!』
魔剣を構えたブラドと聖剣を構えたアリサ。開始の合図はなかったが、先手はアリサが打って出た。獰猛に笑うアリサはブラドに剣を叩きつける。もっと強くなれると嬉しそうにアリサはブラドと戦うのであった。
時同じく、アリサと同様に精神世界へ足を踏み入れたシエルは聖剣エルレシオンと向き合っていた。以前、助けてもらった時は声を聞いただけであったが、今回はその姿を目にしてシエルは驚いていた。
「エルレシオン様はこんなにもお綺麗な方だったんですね!」
『ウフフ、ありがとうございます。ですが、この姿はかつて私の所有者だった者を形取っているだけですから、正確には私ではありません』
「そうなんですか。どのようなお方だったんですか?」
『そうですね~。アリサとシエルを足して割ったようなお方でしたよ。口調は貴女に似ていましたけど性格はアリサに近かったです』
「へ~、なんだか親近感を抱いちゃいます」
『ふふ、そうですね。私も懐かしく思ってますよ。さて、雑談はここまでにして本題へ入る前にお礼を。マスターの心を救って頂き、ありがとうございます」
「いえいえ! 私は別にそんな大層な事はしてませんよ。むしろ、ライさんには私の方が沢山助けられてます……」
『似た者同士ですね。マスターも同じように思っていることでしょう。では、シエル。この世界のルールを貴女に教えます』
ブラドがアリサにしたような説明をシエルに話すエルレシオン。彼女から精神世界での説明を聞いたシエルは聖杖ルナリスを手元に再現して見せた。
『飲み込みが早くていいですね。それでは、杖術から体術といった武芸全般を貴女に叩き込みましょう。時間は少ないですからね。厳しく行きますよ』
「はい! よろしくお願いします、師匠!」
『師匠……! いい響きですね! では、行きますよ!』
基本、脳筋である彼女達は肉体言語による指導しかなかった。シエルはかつて得た聖剣からの記憶を頼りにエルレシオンと交差する。何度も叩きのめされることになるが、シエルはライの隣で一緒に戦うと覚悟を決めたのだ。だから。たとえ何十回、何百回、何千回、叩きのめされようとも彼女は立ち上がり、エルレシオンに喰らい突くのであった。
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