第109話 ドスケベめ! そんなに抱かれたいか!
ライが二人の下へ辿り着いた時、何故か二人はボロボロであった。その近くで頭痛でもしているのか頭を抱え込んでいるヴィクトリアの姿がある。一体何があったのだろうかとライは首を傾げるが、今はそのような事よりも重要なことがあると彼は二人に話しかけるのであった。
「あのさ、二人に相談があるんだけど、今いいかな?」
「相談? 何かしら?」
「全然いいですよ」
「アタシがいても問題ないのかい?」
「あ……。う~ん」
『特に問題ないのではないか?』
『そもそもダリオスが知ってましたから彼女も知っているのでは?』
その可能性は高いというより既に二人が全部話している。とはいえ、ライはそのような事を知らないので判断が出来ない。話すべきか、話さないべきかと唸っていたらアリサの方からライに声を掛けた。
「どうしたの? ヴィクトリア姐さんがいると不味い話なのかしら?」
「いや、その、う~ん、何て言ったらいいのかな……。昨日の事で話したいことがあるんだけど」
そう言ったら何故かヴィクトリアが顔を赤くした。ライはそれを見て目を手で覆い隠す。どうやら、既に知られていたらしい。もう、この際だからヴィトリアがいても関係ないと話すことに決めた。
「あ~っと、昨日の事なんだけど、二人とずっと一緒にいられるのかなって思って。ほら、ダリオスさんが知ってるってことは皇帝陛下も知ってるから、何か言ってきそうだし……」
「あー、私達と別れろって言われるのを心配してるのね。それなら問題ないわよ」
「え!? なんで?」
「ライさん。今の時点で特に何も言ってこないということは特にお咎め無しなんですよ。恐らくですが陛下は私達の反感を買うのを恐れているんだと思います」
「ええ!? そうなのか!」
「まあね。私達って一応人類最高戦力でしょ? その三人が結ばれたからって引き離すような事はまずしない。戦線を離脱されても困るからね」
「仮に戦争が終わったとしても問題はありません。私達の力を知っているなら強引な手段は取らないでしょうから」
「まあ、お前ら全員爆弾みたいなもんだからな。多分、陛下も頭を抱えていたんじゃないか? お前らをどうしようかって。アリサは貴族だし、シエルは聖女だから利用方法なんていくらでもあったろうに……」
「なるほど。そっか~」
「なに? もしかして、その事が心配で来たわけ?」
「ええ~、そうなんですか、ライさん?」
嬉しそうにニヤニヤしているアリサとシエル。二人の言葉は正解だったようでライは恥ずかしそうに顔を赤くして答えた。
「そ、そうだよ……。二人と離れたくないに決まってるだろ」
二人の気持ちを知った今、ライは二人と別れるなど微塵も考えていなかった。最悪の場合は二人を連れて逃げ出す覚悟もしていたのだ。その杞憂も無駄に終わったが。
ライのその態度はいけなかった。昨晩、激しく愛し合った三人だがアリサとシエルは殊勝な態度のライに胸がキュンとする。当然、下腹部に熱を帯びる。そのような可愛らしい反応をされると我慢できなくなる二人の心情はライを滅茶苦茶にしてやりたいだった。
ライは気付いていないが、すぐ傍で二人を見ていたヴィクトリアは気がついた。二人の目が獲物を捉えた肉食獣のようにギラギラと輝いてる事に。
これは止められない。恐らくヴィクトリアが聖武具を装備して本気を出したとしても止めることは出来ないだろう。彼女は心の中で合掌する。ライよ、無事に朝日を拝めるようにと。
「ねえ、ライ。今晩、暇よね?」
「え? まあ、いつも通り鍛錬したら寝るだけだと思うけど」
「うふふ。でしたら、その後大切なお話がありますので伺いますね」
「ああ、わかった。待ってるよ」
せめて何かヒントでも与えようかとヴィクトリアは口を開こうとしたがやめた。後で二人にどのような仕打ちをされるかわかったものではないから。ヴィクトリアは再度ライに向かって心の中で謝罪をするのだった。
「(すまん! この二人は止められそうにない! 無事に生きててくれ!)」
そもそもライは一度二人との激闘から生き延びている。だから、心配はない。あるとしたら新しい門を開きかねないことだけだ。外でするようになったら、その時は是が非でもヴィクトリアには止めて欲しい。
その夜、ライは鍛錬を終えて汗を流そうとしていた時、メイドから二人がやってきたことを知らされる。
特に何も考えていなかったライは汗を流すまで待っていて欲しいと言うのだったが、二人がそのままでいいと言うので、それならと二人を部屋に招き入れてしまった。
二匹の肉食獣を。これから始まる肉の宴。もはや、誰にも止められないだろう。なにせ、三人は人類最高戦力だ。
城の人間全員を総動員しても止められない。もう終わるまで静かに待つしかないのだ。
「ごめん。ちょっと汗臭いかもだけど」
「大丈夫よ。むしろ、その方が興奮するわ」
「ええ、いい塩梅です。滾りますね」
「ん? そうかな?」
二人の言葉の意味が良く分かっていないライは汗をかいている自身の体を匂っている。自分では分からないけど、もしかしたら臭いかもしれないと思っていたのだ。
全くの逆である。二人からすればライの汗は芳香剤でしかない。いや、むしろ、興奮剤と言っていい。
そう、ムラムラするのだ。
スケベな匂いを漂わせて誘惑でもしているかのと問い詰めたいくらいに。
まあ、これから致すのでその必要はないが。
「あ、忘れてたわ。ねえ、貴女。人払いをお願いできる?」
「畏まりました」
「(あー、そうか。内緒話するもんな)」
『いや、違うと思うぞ?』
『もう少し洞察力を磨いた方がいいかもしれませんね』
二人が何を言っているか理解できていないライは頭にクエスチョンマークを浮かべている。
アリサに命令されたメイドはドアを閉めると急ぎ足で人払いをするのだった。
これで準備万端。邪魔者はいないし、ここでなら無断外泊にもならないから安心だ。一つ問題があるとすれば隣の部屋にいるダリオスに聞かれてしまうことだけだ。まあ、流石に部屋に押しかけてくる事はしないと思うので明日の朝にお叱りを受けようとアリサとシエルは顔を見合わせる。
「さ、それじゃ、始めましょうか」
「今夜は寝かせませんよ」
「え……? それって……まさか!」
気づくのが遅かった。二人は話し合いをしに来た訳ではない。そのようなことなら昼間で十分だ。このような時間帯に来たのは別の理由がある。ライはようやく理解したのだ。彼女たちが何故この時間帯を指定してきたのか。
しかし、今更気がついたところで意味がない。もう二人は止められないのだから。
もっとも、ライも別に嫌ではなかった。あの快楽を知ってしまった以上、止める理由などなかったのである。
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