第45話 町長宅にお泊り
町長のフーガとの話を終えたライはひとまずあと一日だけ町に滞在することにした。食料や水、お金などを貰う為もあるのだが、それ以上に服を買うためでもある。最近の激しい戦闘のせいで持っている服はほとんどが破けてしまった。
だから、新しい服を調達する必要がある。といっても特に拘りはないので最低限の服さえあればいい。ただ、ライも年頃の男なので見た目はそれなりのものを選ぼうと考えている。
フーガに一言告げてライは町へ服を買いに出た。既に謝礼金も頂いているので懐は暖かい。これなら多少はいい服が買えるだろう。まあ、今後も戦い続けるならば服は何枚合っても足りないが。
「おばさん。これください」
「はいよ」
しかし、やはりそこまで大きくない町なので服の種類は少なかった。ライはそこから無難なのものを選んで購入する。意外と高くて文句を垂れそうになったが、服屋は他に見当たらないので我慢する事にした。
それから、町長宅へ戻り、精神世界で鍛錬に励んだ。鍛錬を終えると、汗だくになっていたのでメイドに汗を流す為の水を貰う事に。桶にたっぷり水を入れてメイドが運んでくる。それを受け取ったライはタオルを水に浸して体を拭いていく。
「(なんか体つき変わってないか?)」
『言ったではないか。カーミラによって破壊された箇所が我の再生で変質していると』
「(聞いたけど……)」
聞いてはいたが、まさかここまで変化しているとは思わなかった。ライは精々筋肉が固くなったくらいしか考えていなかったのだ。それが、筋肉の量や骨格までも変わっている。
「(まあいいか! 強くなるに越したことはないし)」
マイナスに考えるのはやめてポジティブに考える事にしたライ。目的である復讐を果たすには力がいる。それこそ、今の何倍も必要だろう。カーミラから得た情報ではあの日村を滅ぼした魔族はヴィクターという魔人族。
しかも、カーミラの口ぶりからすると彼女と同じく四天王である可能性が高い。むしろ、四天王であると考えた方がいいだろう。
前回、カーミラに勝てたのは運が良かった。突飛な戦法に加えて魔剣と聖剣の能力を知られていなかったのとカーミラ自身の慢心があったから勝てたものなのだ。何か一つでも欠けていたら、まず勝てなかった。
純粋な身体能力、技量の差、強大な魔法、それらの障害が今だ高くライを阻む。覆すにはライも魔族に負けない力を手にしなければならない。魔剣と聖剣があろうと今のライはまだまだ弱い。魔族と組み合ったら間違いなく力負けする。
ライには闘気もなければ魔力もない。自身を強化する手段は魔剣と聖剣の能力しかないのだが、その能力も闘気や魔力を必要とする。どちらも持ってないライは余所から補う必要があるのだが、その方法は相手から吸収するのみ。常に命賭けなのだ。
だが、しかし、今回の戦いでライの体も大きく変化した。魔剣の再生能力の弊害か、それともライの体質が特異なせいか。どちらかは分からないがライにとっては有りがたい話だ。たとえ、それが最後には己の身を滅ぼす事になろうとも復讐が果たせるのならライは構わないだろう。
体を拭き終えたライは汚れた水を捨てに行くとメイドに伝えたが、メイドが自分の仕事ですからと桶を持って行ってしまった。やる事がなくなってしまったライは部屋に戻りベッドに転んだ。
「暇になってしまった……」
『でしたら、シュナイダーにでも会いに行ったらどうです?』
「ああ、それいいかも」
という訳でライは早速町長が移動させたというシュナイダーの下へと向かった。町長宅にある馬小屋にシュナイダーはいた。シュナイダーはライを見つけると嬉しそうに鳴いて、それを聞いたライも嬉しそうに笑う。
「ハハハハ、一日会ってないだけで凄い久しぶりな感じがするな~」
懐かしそうにしながらライはシュナイダーと戯れる。シュナイダーもライのことを気にっているのか、どことなく楽しそうにしている。
「もし、何もかも終わった後、お前と一緒に旅をするのもありかもな~……」
寂しそうな声で到底叶いそうにない未来に思いを馳せた。それを聞いていたのはライの中にいるブラドとエルレシオンを除けばシュナイダーだけ。賢い馬は哀愁漂う仮初の主を思って悲しそうに鳴いた。
「ふふ、そうか。お前も同じ気持ちだったらいいな……」
しばらく、シュナイダーと戯れたライは満足したのか部屋へ戻って行った。
部屋に戻るとメイドが待っていた。どこに行っていたのかと聞かれたのでライは馬小屋に自分の馬の様子を見に行っていたと説明するとメイドは特に何も言わずにどこかへ行ってしまった。
一体なんだったのだろうかと首を傾げるライだったが気にするだけ疲れると考えるのをやめた。
それから、晩御飯の時間になりメイドがライの部屋にやってきて食堂へ案内された。フーガとフーガの妻と子供達と一緒に食事を楽しんで、ライは部屋へ戻った。いつものように寝る前に精神世界で鍛錬を行ってから眠りに就いた。
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