第8話:告白

「いつまでもつきまとわれては迷惑です。

 一度で終わらせますから、遅れずについてきてください」


 私がそう斬り捨てるように言いきると、皇太子は顔色を悪くしました。

 皇太子を戴冠させるために選び抜かれた騎士、親衛隊ともいえる十騎は憎々しげに私を睨みつけています。

 中には武器を手にしている者もいますが、知った事ではありません。

 以前狩ったダンジョンボスの素材を渡せば簡単なのですが、親衛隊の中に他の皇子のスパイがいるかもしれませんし、脅かしておく必要もあるでしょう。


 私は皇太子と親衛隊がついて来る事のできる最速の速さで走りました。

 遭遇する敵は私が瞬殺するので、こいつらの息が上がっても関係ないです。

 前世の記憶を活用して桁外れの力を手に入れた私です。

 斃したモンスターのドロップ品は念動力で回収して魔法袋に保管です。

 十階層、二十階層、三十階層と攻略するごとに、皇太子だけでなく親衛隊も驚愕の表情に変わってきました。


「ダンジョンボスを斃せば戴冠ですね、軽く斃してあげますから、もう明日からつきまとわないでください」


 このダンジョンは広大な階層がないので、速度重視で進めば五日で攻略出来ます。

 五日かけて九九階層まで攻略しましたから、後は百階層にいるダンジョンボスを斃すだけです。

 もう親衛隊の連中も私の言う事を否定する気力もありません。

 少し睨んでやるとガタガタと震えるようになっています。


「まってくれ、本当の事を言う、皇位なんかどうでもいいんだ。

 私の望みは、初恋の君と一緒にいたかっただけなんだ。

 どうかダンジョンボスは斃さないでくれ、お願いだ。

 斃してしまったら、私は皇城から出る事もできなくなる。

 ずっと君の側にいさせてくれ」


 なるほど、そういう事でしたか、最初からおかしいと思っていたのです。

 難癖をつけるようにして側にいようとするから、私の実力を察して自分と国のために囲い込もうとしているのだと思っていましたが、そっちの方でしたか。

 皇太子と会ったのは、皇国に挨拶に行った七歳の頃でしたね。

 皇太子を利用して御姉様の結婚を支援する方法もあるのですが……

 メルスリアが仇を見るような目で皇太子を見ていますから、下手な返事はできませんね、どうしまようか……


「私は皇太子殿下の事を何とも思っていません。

 今回の遣り口も女々しく腹立たしいです。

 はっきり言って全く好みではありません。

 皇太子の地位や権力を振りかざして命令しようとしたら、本気でこの国を滅ぼしますよ、私の実力はここまでの狩りで分かっていますよね」


 皇太子だけではなく、親衛隊も睨んでやったら、首振り人形のようにガクガクと縦に首を振っています。


「本気で私が好きなら、漢気で私を惚れさせなさい、いいですね。

 それと、狩りの税金を払わなくてもいいように、皇国の爵位を寄こしなさい」

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姉が可哀想なので、婚約者を譲る事にしました。 克全 @dokatu

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