第7話:パーティー結成

「殿下、何故殿下がここにおられるのですか?!」


 冒険者ギルドに皇国の査察が入った翌日、私とメルスリアには関係ない事とダンジョンでに入ろうとしたら、そこにゲティス皇太子殿下が待ち構えていたのです。

 普通は冒険者ギルドの不正程度で、一国の皇太子が出てきたりはしないのですが、この国の収入の柱がダンジョンの収益ならば、分からない訳でもありません。

 ですがそれなら、殿下は取り調べに参加するのが普通です。

 現在ギルド関係者に厳しい取り調べが行われているのに、ダンジョンの入り口で私達を待ち構えるなんて、何か腹に一物なければあり得ない事です。


「簡単な話だよ、君たちのダンジョン攻略に加わらせて欲しいんだよ。

 皇国では皇位継承に厳しい条件を設けていてね。

 皇位継承権を持つ者たちの中で、最も深くまで潜った者が戴冠するのだ。

 今のところは私が一番深くまで潜っているのだが、君達のパーティーに加えてもらえれば、ダンジョンボスを斃すことができると思ったのだよ」


「私達はまだ七階層までしか攻略していません。

 そんな私達に加わっても殿下の願いはかなえられませんよ」


 殿下の言っている事が本当なのか嘘なのかが分かりません。

 多分本当の事なのでしょうが、私達はダンジョン攻略に重きを置いている訳ではなく、生活費を稼ぐために狩りをしているのです。

 殿下に何か思惑があるのかもしれませんが、正直迷惑なのできっぱりと断らせていただきました。


「いいのかな、私も皇位継承の大事がかかっている。

 やりたくはないが、脅迫してでも手伝ってもらうよ」


「私達がここにいるとフレーヌ王国に伝える心算ですか」

 

 確かに御姉様の事を考えれば、フレーヌ王国の追手が来るのは面倒です。

 御姉様に幸せな結婚生活をしてもらおうと思えば、追手を殺す事はできません。

 ですが逃げる事は簡単ですから、脅迫のネタとしては弱いです。


「その程度の事でエリーゼ嬢を脅迫できるとは思っていないよ。

 エリーゼ嬢が大切に思っている、ロアリナ嬢の事で脅かすのだよ。

 エリーゼ嬢は毎日ロアリナ嬢に使い魔を送って連絡を取っているね。

 その事がシュバッハに伝わったら、婚約が破棄されるんじゃないのかな。

 エリーゼ嬢は聖女メルスリアを連れ出しているんだ。

 ロアリナ嬢が共犯を疑われてしまうかもしれないよ」


 この野郎、ここで殺してしまいますか?

 ですが、私と御姉様の連絡を嗅ぎだすほどの策士ですから、殺された時の報復を準備しているのは確実ですよね。

 それは当然私が一番大切にしている御姉様に関する事でしょう。

 まあ、メルスリアの前で、私が一番大切に思っているのが御姉様だと明かさない配慮ができる男ですから、組んでも邪魔にはならないでしょう。

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