第6話:皇太子
「なにかあったのですか」
私達が千頭を越える魔猪を狩ってギルドに戻ったら、ギルド前に冒険者達があふれていました。
「ああ、お前さんか、ギルドに皇室の査察が入ったんだよ」
皇国の査察ですか、私が叩きのめす前に皇国が介入してくれましたか。
ですが、証拠は多い方がいいですね。
「みなさん、私はギルドの不正の証拠を持っています。
道を開けて中に入らせてください」
冒険者達は直ぐに道を開けてくれましたが、ギルドの前にいた兵士に邪魔されてしまいました。
しかたないので力づくで道を開けてもらいました。
そこで想像外の相手に出会う事になってしまいました。
「なぜここに殿下がおられるのですか?!」
事もあろうに、この国の皇太子であるゲティス殿下がおられたのです。
皇太子殿下ともあろう方が、たかだか冒険者ギルドの査察に来るのはおかしい。
「ここは俺の国だ、どこかで会っても不思議ではない。
それよりもエリーゼ嬢がここにいる方が不思議であろう。
噂は聞いているが、婚約破棄されて追放されたのだろう。
しかも聖女を連れだしたというではないか。
もっと遠くの国に逃げたと思っていたのだがな」
「別に無理矢理連れ出した訳ではありません。
この通り仲良く一緒に冒険者をしていますから、恥じる事などありません。
それよりも、このギルドの不正の証拠を持ってきました。
このギルドでは、才能のある新人をダンジョンで死んだと見せかけて誘拐し、どこかに売り払っていたようです。
私達を攫おうとした連中を返り討ちにして魔法袋に入れてきました。
不正の証拠の一つとして使って頂けたら幸いです」
私は返り討ちにした四十二人の遺体を殿下にお渡ししました。
殿下の側近達は驚き慌てていましたが、殿下自身は平気で笑っておられました。
そしてその遺体を証拠の一つとして冒険者ギルドを追い込まれた。
本来なら死人に口なしで、生かしておいて証言させないと証拠能力はないのだが、殿下は私達を使って脅かして自白させたのです。
「別に罪を自白しなくても構わんぞ。
お前達がやっていたように、証拠の残らないダンジョンで始末するだけだ。
ここにいる冒険者達よりお前達の方が強いのかな。
騎士団や徒士団にお前達を殺せと命ずるのは難しいが、お前達に誘拐されそうになったこの者達なら、恨みに思ってお前達を殺してもおかしくはない」
私達はいいように殿下に利用されたが、それは御互いさまでした。
殿下は私と気安い仲だと言う事を冒険者や家臣に見せつけてくれたのです。
お陰でこの国で暮らすのに必要な安全を確保する事ができました。
これですべて解決したと思ったのですが……
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