第5話:殺人

「覚悟はいい、これで貴女は人殺しになるのよ」


 私がアイアンハートを使って魔法袋の噂を流したので、裏家業とつながりのある悪質な冒険者が、私達を攫おうと集まってきました。

 彼らが仕事をしやすいように、人のいない場所に移動します。

 手練れのモノなら誘いと見抜くのでしょうが、今集まってきている連中は、数を頼んで人を攫う三流の小悪人のようです。


「人殺しになる覚悟はできています。

 それに、ここで人攫いを殺したら、これから攫われる女の子を減らせるのでしょ」


 頼もしい事にメルスリアは覚悟ができているようです。

 ですが、今はその心算でも実際に人を殺す時には足がすくむかもしれません。

 そのような事がないように、私が背中を押してあげなければいけません。

 メルスリアだけに殺人の業を背負わせる気はありません。

 まあ、私の場合は初めて人を殺すわけではありません。

 公爵令嬢と平民冒険者の二重生活をしていた時に、私を犯そうと襲いかかって来た冒険者を、もう何人も殺していますから。


「では私から手本を見せてあげます」


 私の索敵魔法には、四十二人もの人攫いが反応しています。

 正直こんなに多いとは思いませんでした。

 ここの冒険者ギルドは性質が悪いのかもしれません。

 もしかしたら、ギルドごと裏家業に手を染めているのかもしれません。

 表向きは冒険者ギルドで、裏では犯罪者ギルドという事もあり得ます。

 まあ、そんな事は後で考えればいいですね、そろそろ連中が視界にはいります。


「やあ、お嬢さん達、今日の成果はどうだい」


 何気ない話をしながら近づく心算ですね。


「ええ、たくさん狩れていますよ、誘拐犯のみなさん。

 ノコノコと姿を現した以上、生きて帰れるとは思っていないでしょうね」


「な、何を言っている、俺達は同じ冒険者だ」


「よくそんな見え透いた嘘がつけますね、馬鹿なのですか、馬鹿なのでしょうね。

 中堅パーティーがいくつも合同でこんな浅い階にいる、見え見えですよ」


「ちっ、馬鹿じゃないようだな、だが分かっていてこんな人目のない所に来るなんて、愚かなんだよ、やっちまえ」


 ダンジョンの曲がり角に隠れていた連中も、一斉に襲い掛かってきました。

 私の分は二十一人、一瞬で脳を破壊してやりました。


「メルスリア、貴女の分ですよ、やれますか」


「はい、大丈夫ですエリーゼ御姉様」


 そう言ったメルスリアは、躊躇いも見せずに風魔法を次々と放ちました。

 鎧兜に護られていない場所を的確に狙い、風魔法を転回させて動脈を切り裂いたり心臓を貫いたりします。

 昨日の特訓が生きています。

 それなら一気に深い場所まで潜れそうですね。


「遺体を回収して、狩りが終わったらギルドに直談判しましょう」

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