最終話 最後に

 きたる卒業式の日、アウレリウスの奮闘の甲斐虚しく、事前に聞かされていた内容そのままの通りに断罪されたリリアーシャは目出度く(?)アザロスから婚約破棄を突き付けられ、処刑を言い渡された。淡い橙色のドレスを身に纏ったリリアーシャは、一切反論も抵抗もすることなく大人しくその場で捕縛され、王城に投獄された。紫の石の嵌った金の装飾品は、国王と王妃からの祝いの品だと一筆もらっていたので取り上げられなかった。



 後日、王城の玉座で、アウレリウスは一人ほっとしていた。なぜなら、たった一つだけ、リリアーシャの読みが外れた事象があったのである。



─── 婚約破棄されたのち、我が公爵家はこの国を離れますので。

─── いかんと仰られましても、わたくしは国外追放されるのです。



 あの時リリアーシャは「国外追放される」と言った。だが、彼女は今、処刑を前に投獄されている。何ひとつ良い状況ではなく、寧ろ最悪の状態なのだが、アウレリウスは「リリアーシャだって読みを外すことがある」と、完全な機械のように見えて完全ではなかった、ただのか弱い人見知りの、誰よりも賢く不器用な少女が一度だけ見せた笑みを思い出した。



 さらに後日、投獄されたリリアーシャに対し、新たにアザロスの婚約者となった特待生の少女の慈悲により、減刑が認められ国外追放を言い渡されることとなる。伯爵家取り潰しと一家追放の書類を前に、アウレリウスは頭を抱えることになるのであった。




終わり。

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悪役令嬢はすべてのフラグを把握した上で婚約破棄と国外追放を受け入れる からあげ定食 @ss_krag_ss

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