それは飯テロではありません

椎名 富比路

かろてんてー再び

 ごきげんよう、皆さん、またお会いしましたね。


「かろてんてー」です。


 みなさんは、飯テロ小説をお書きになるでしょうか?


「この米は〇〇産だな」

「チーズが伸びるぅ」

「このお酒は、フルーツみたいでまろやかだね」


 などなど、飯テロ「だと思って」書いてらっしゃる方が、いるかも知れません。


 ですが、残念です。


 それは、微妙に飯テロではないのです。


 あなたがたが書いている作品は、飯テロにあらず。



「食レポ」



 というのです。


 え?「同じじゃねえか!」ですって?


 全然違いますよ。


 何が違うのかって?



 読んでもらう「目的が違う」のです。



 まあ、私も専門家ではありませんので、厳密な分け方はわかりません。


 ですが、これだけはいえます。



「飯テロは、うまいがすべて」だと。

「うまい!」という言葉に、いろいろな要素を注ぎ込むのが飯テロかなと思います。



 私が思うに、


 食レポ:お店や料理の「紹介」。そのお店に行ってその料理を食べたいと思わせること。

 飯テロ:シチュエーションの「描写」。とにかく読者に空腹感を促す。


 と考えています。



 要は

「店・料理が主役なら、食レポ」

「食事シーンそのものが主役なら、飯テロ」

 か。

 あなたの描写は、そのどちらなの? というわけですよ。



 基本的に、食レポは「おいしい」なんて言ってはいけません。


「おいしいのは当たり前だから」です。

 お店の、料理の紹介なのですから。

 マズいお店なんてススメません。


 逆に、飯テロは「うまい」だけで成り立ちます。

 高い料理を食べに行く必要もありません。


 場末の中華そばでも、飯テロは成り立ちます。


「孤独のグルメ」で、路地裏の居酒屋に入ったりするでしょ?


 そんなに高くない店で、料理もこじんまりとしたものを頼む。


 でも、あんなにおいしそうに見える。


 あれが飯テロなんです。



「どううまいのか?」さえ描写すれば、飯テロになるのです。



 カイジが地下帝国でミニの缶ビールを飲むだけで、理性が崩壊して豪遊してしまう。

 地下帝国の過酷さが、伺える大事なシーンです。


 このシーンが浮かぶだけで、焼鳥が食べたくなるでしょ?

 コンビニの肉じゃがを求めて走りたくなるでしょ?

 軍手のままポテチの袋に手を突っ込みたくなるでしょ?

 

 あれは、食レポですか? 違いますよね?

「『こんな』コンビニの肉じゃがが!」とか行ってますし。


 個人的に、最強の「飯テロ」描写はあのシーンかと思っています。

 孤独のグルメを軽く凌駕するかと。

「ビール一本のためなら、強盗だってする!」なんて、至極の一言に付きます。


 逆に、スピンオフマンガ「トネガワ」の「ハンチョウ」だと、「食レポ」に近くなるかと。

 工夫しますからね。



「飯テロといえばこの人」と有名な、とあるラノベ作家さんの作品を例に上げると、

「これは食レポだ」

 という感想をもった作品も。


 飢えて死にそうなやつがハンバーガーを貪り食った後、

「このバンズは。肉のジューシーさはうんぬん」

 とか、いきなり冷静になって「料理の説明」を始めたんです。

「ん?」と思いました。

「飢えて死にそうなやつなら、食レポをやる余裕なんてないですよね?


「賢者タイムに突入しちゃったんですかね?」

 と思ってしまい、結局私はその作品にリアリティを感じられず、読了できませんでした。



 私の作品を例に挙げさせてもらえば、

「防波堤で魚釣りのシチュエーションで、少年がカップ麺をすする」

 描写を、したことがあります。


 父親に無理やり釣りへ連れてこられたインドアクソガキ少年が、寒空の下でラーメンをハフハフいいながらすする。


 こういうのでいいと思っています。

 特別な味じゃなくていい。

 みんなが「おいしそう!」と想像できる料理のほうがいい。



 夜中に卵かけご飯をかきこむシーンなどは、こう書けばいいかなと。


 ・おなかすいた

 ・自分以外の住人、嫁がいる。

 ・嫁は寝起きが悪く、起こしたらキレる。

 ・普段から「夜中に起きるんじゃねえ」と説教食らってる

 ・なので、ラーメンのような音のなる料理は食えない。

 ・かといって、コンビニに行くのもめんどい

 ・理由:暑い。寒い。この時間不良がたかってる等

 ・手頃に食えるものは……。

 ・ツナ缶! でも音がなる。ボツ。

 ・卵が一つ。救世主!

 ・ごはんは、ちょうど一膳分! 救世主!

 ・そっと割って、おしょうゆ少々

 ・いただきます。

 ・嫁をおこさないようにススっと一気に

 ・愉悦! ごちそうさま

 ・翌朝、ジャーが開きっぱなしで嫁にバレる

 ・「ちゃんとつけておいてよ!」と怒られてエンド


 これがいいというか、これがいい。

 味が想像できる方が、飯テロとして効果的かなと。


 飯テロの利点は、高価なものや珍味、特別な料理でなくても成立する点にあります。

 むしろ、手頃な料理ほど「優勝!」と、喜ばれるかと。


 みなさんも、深夜の飯テロ描写で優勝なさってみては?



補足


 ちなみに食レポと飯テロに優劣はありません。

「美味しさを伝えるベクトルが違う」

 だけです。


それぞれの目的


食レポ:読者に「おいしそう。この料理食べたい」と思わせること。

飯テロ:読者の「お腹を空かせる」コト


 ですからね。

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