かつて英雄と呼ばれた男

「号外だよ!号外」

小さな村の集会場の前で配達人が声を上げて道ゆく人に新聞を配っている

受け取った人は新聞を眺めながら仕事に向かっていく

農具を担ぐもの、役所の仕事に向かうもの、服装からいろんな人が集会場の前を通るが配達人はそこを通るすべての人間に渡した

「お嬢ちゃんもこれ貰って、学校とかの子にも見せてあげて」

学校に行く途中に通ったエルに配達人は新聞を渡した

エルは気になり新聞の目を通した

【イスパニア大聖堂で襲撃事件発生、犯人は未だ逃走中】

と言う見出しだ

『昨夜未明、首都イスパニアにある大聖堂が襲撃にされ、皇帝ミコット・コーエンが軽傷を負いました。襲撃犯は未だ逃走中。

現在、調査隊は襲撃者の行方を追っており、情報提供を呼びかけています』

その新聞の裏面には襲撃者の手配書も書かれていた

「……!」

裏面の手配書に書かれていた人物にエルは言葉を失った

かつて、統一戦争で人々を導き、今ある平和の基礎を作った英雄

その男

【サルバドール・ファルコーネ】

……———————

エルたちは遺跡の隅で息を潜めた

やってきた人物が何者で、何が目的かはっきりとしていない以上、下手な手を打つより様子を窺っていた方が賢明だからだ

光に照らされた人物は天井を見上げた

「星電球か…どおりで今も光があるわけだ」

声の主はどうやら男のようだった

コツコツ

男が石の通路を歩む

その度に足音が部屋に響く

その男が祭壇についた時が逃げるのには絶好のチャンスだ

祭壇からこの部屋の出口まで距離がある

スタートダッシュで遺跡の外までは逃げ切れる

今は焦らないことだ

ただじっと待つだけだ

二人は口に手を当て、静かに呼吸をし震えをなんとか抑えた

コツ…コツ…

男は祭壇に向かう途中で立ち止まる

(どうしたんだろう?)

エルは男の動向をうかがった

耳をすませて気づいた

男の鼻口が広がり、あたりの匂いを嗅いでいることを

そして男は再び祭壇に向かう

コツ…コツ…

「アンジュ先に行って」

エルは同時に動くことのリスクを減らすため、あえてアンジュを先に出口にむかわせた

それに頷くとアンジュは腰を落として移動する

その間エルは男を監視していた

(服装から見て、やはり調査隊の人じゃない。オーパーツを狙いにきたトレジャーハンターだろうか?)

アンジュが出口にたどり着いた

向こうはまだ気づいていない

このまま何事もなくこの場を後にできるはず

エルが移動し出口に付近に差し掛かったときだ


「それをどこに持って行く気だ?」

男は後ろ姿からエルに話しかけた

「……!」

エルはまるで氷漬けにされたように背筋が凍り動けなくなった

「悪い事は言わない、そいつを俺に渡せ」

男は振り向きエルたちに顔を合わせた

エルは光にあたったその顔に見覚えがあった

黒く艶のある髪、赤く燃える炎のような瞳をした男

この世界の歴史を知るものなら彼を知らないものはいない

かつて、統一戦争で人々を導き、今ある平和の基礎を作った英雄

そこにいた男は

「サルバドール・ファルコーネ…」

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レジデント・オブ・ケージ Happy psycho @kotonari_

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