白日

「ねえ何で私から離れるの。もしかして嫌になった。…我がままでごめんなさい。」

違う僕は傷つけるのがもう嫌なんだ。だからまた後退りをした。

「違うんだ…僕といると確実に嫌になってしまう…それを避けたいから…」

僕はこの先必ず傷つける。だからもう関わらないでくれ。

「ねえ…私ずっと引きずり込んでいたんだ。いくら忘れたって吹っ切っても忘れられなかった。ねえ我がままてっ分かってるけど…また一から出来ないかな。」

僕はそうしたいけど…これから先苛まれるだろう。だからこう言おう。

「だからさようなら。」

僕は帰ろうとした。…手首には懐かしい温もりがあった。

「ねえ帰らないで…その傷つけてもいいから私と一緒にいてよ。…傷つけない人なんて居ないんだか…もう誰かに取られるのは嫌なの。大希。」

「琥珀僕を許してくれるのか。…こんなに屑なのに。」

…でもどうして良いのか分からない。

「この本まだ持ってくれてたのね。…嬉しい。」

その一言でずっと凍らせてた本心が溶けていった。

「そうだよ。…ずっと忘れられなかった。僕は琥珀の事が好きなんだよ。…本当はそうしたいけど……またこうなる…それでも良いのか。」

「誰だって取り返しがつかない過ちは一つや二つあるから。私もそうなんだよ。…許してくれる。」

「それでも嫌なんだ。傷つけているという事が。だから友達としてまた僕の名を呼んでくれ。」

手を引きずり込まれた。

「…え。」

僕は琥珀を抱擁してしまった。…どうしようこれ。…琥珀は怒ってるだろう。…恐る恐る琥珀を見ると嬉しそうだった。

「…鈍感だから困るよ。また一緒に笑ってくれるよね。…傷ついていたら私が癒してあげるから。…大希もそうしてね。約束だよ。」

春風が舞う白日に戻ることの出来ないと思っていた過去に戻る事ができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

途方もない間違い探し 楓 紅葉 @sperk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る