第14話 百合痴女を後ろからド突く

<これまでのお話簡易版>

 学園に入学した柔子(やわこ)は芽出(めで)に一目ぼれ、めでたく百合カップルになりました。


 芽出は自分のご先祖であるメデューサをひどく憎んでいます。


 学園に秘蔵されているメデューサの首を盗んでぶっ壊そうとしますが返り討ちに遭い石化されました。


 学園理事長ヘルメースの魔の手が伸びますが、芽出の叔母ステノが現れ、柔子共々芽出を救出します。


 ステノのおかげで首から上の石化解除に成功。


 そこへスマホが鳴る。 

 相手はヘルメースで、残りの石化解除をしてやる、という話でした。


 「断れ」とアドバイスするステノが何故かヘルメースと口喧嘩、売り言葉に買い言葉の末、三人は学園へ向かうことになったのでした。


 続きは↓



「うう~、喉渇きました~」


 はっ! そういえば石化もあって水分取ってなかったよね、こりゃやばい! 

 でもここはステノさんが運転する車の中、飲み物なんて無いし。

 あっ! あるじゃない!


「芽出ちゃん! あ、あたしの唾を飲ませてあげる!」

「え?」

「本当は母乳をあげたいんだけど、あたし妊娠してないし。じゃあ口移しで飲ませてあげるね」

「ええ~!」


 芽出ちゃんが真っ赤にした顔を横に振ってる。

 安心して、あたしも顔が火照って真っ赤っかだよ。

 

「何やらかそうとしてんねん! このボケカスあほんだら!」


 ヒィッ! ステノさんに怒鳴られた。


「飲みモンなら後ろにあるさかい、飲ませてえや」

 

 後部座席から身を乗り出しラゲッジスペースを覗き込むと、折りたたまれたビニールシートやなんかに混じってペットボトルが数本あった。


「えーっと、こっちはコーラだからダメっと」


 芽出ちゃんの苦手なものキチンと知ってるの、だからいつ結婚しても大丈夫。うっへっへ。

 とニヤケながらレモン水を手に取る。


「これでいい?」

「はい~」

 

 キャップを捻って外す。


「真上向いたまま飲ませたら水責めになっちゃうから顔横にして」

「水責め! わ、わかりました~」


 横を向いた芽出ちゃんのお口にペットボトルを近づける。

 

「わっ!?」


 ブレーキの音がして体のバランスを崩した。


「いしゃ~!」


 レモン水が芽出ちゃんの可愛いお顔にぴしゃと掛かちゃったよぉ!


「芽出ちゃん! ごめーん!」

「目が、目が~!」


 慌てて上着の裾で芽出ちゃんの目を拭いた。


「ちょ、ステノさんどうしたんですか?」

 

 運転席に目をやると「いやあ、曲がるとこ通り過ぎてもうたわ」と頬を掻いていた。

 

「伯母さん、また間違ったんですか~?」

「そや、またや。これが平常運転いうヤツや、間違い運転なのに平常運転。ではははは!」


 何がおかしいのかさっぱりわかんない。


「よっと!」

 

 ギアをバックに入れたステノさんが勢いよく車を後退させると、本来行くべき道へタイヤを鳴らしながら曲がった。


「それにしてもこの車、左ハンドルだから外車でしょ。変わったデザインでちょっとハデだし」

「イタリア車ですよ~、サソリマークを気に入った伯母さんが決めたんです~」

「何か高そう……って芽出ちゃんには宝石化能力あるもんね」

「母が出ていってから伯母さんにはお世話になりっぱなしですからね~、少しでも恩返ししたくて」


 律儀で健気過ぎっ! 胸がきゅんきゅんするぅ。

 やっぱりあたしが一目惚れした芽出ちゃんだよぉ。


「ど、どうしたんですか柔子ちゃん?」


 やばっ、キスしたくてじーっと唇見てるの気付かれちゃった。


「ではははは、芽出ちゃんに発情したんやろ、なあ柔子ちゃん?」

「な、何言ってるんですか!」

「でもちびっとは発情したんやろ」

「ま……まあ」

「ちびっとでもウチの芽出ちゃんに発情するとか何やねん! このボケカスあほんだら!」


 ヒィッ! 

 

「何びびっとんねん。冗談、軽い冗談や、ではははは!」


 ステノさんの剣幕、全然冗談に見えないんだけど。


「もうすぐ着くで」

 

 正面を見ると、学園の門が見えて来た。

 

「でひゃあ、ヘルメースがけったいなカッコしておるで」

 

 ホントだ、門のところでヘルメースさんが背中を向けながらロックスターみたいに人差し指を真上に向けている。

 

「でりゃあ!」

 

 ちょっ!? 急加速してヘルメースさん撥ね飛ばしたんだけど!


「ステノさん、いいんですか!?」

「んあ? 何眠いこと言っとんねん。あいつオリュンポス十二神やで、こん位ノーダメや」


 えー、でも撥ね飛ばされたヘルメースさん、手足がありえない方向に曲がってるんだけど……。


「あっ、しもたっ!」


 今更そんなこと言っても手遅れですよ……って何で芽出ちゃん見るの?


「思わずド突いてもうた、修理代堪忍や」

「全然かまいませんよ~、全然~」


 芽出ちゃん微妙に口の端がヒクついてるよ!

 そういえば中学の先生が外車乗りで、修理代高い高い言ってたの思い出したぁ。


「余の腕がーッ、がでうーッ、なんちゃって」


 わっ、ヘルメースさんが折れ曲がった腕をグルグル振り回してる!


「もっかいド突いたろか」

「芽出ちゃんの怒りが増えるから止めてください」

「そやな」


 ステノさんが折れ曲がった腕をクルクル回すヘルメースさんの隣に車を止めた。


「来てやったでヘルメース。で、どんな勝負でケリつけんねん」

「ケリつけんねん、んねんけつリケ、なんちゃって。およよ、冗談だよーん、怒んないでよステノちゃーん」

「はよ言えや!」

「わかったよーん、とその前に」


 痴女みたいに大きくはだけた胸の谷間に手を突っ込んだ。


「芽出ちゃんの石化を何とかしないといけないよよーん」


 うわ、ラジコンのプロポ取り出した! どう考えてもそこに入る訳ないのに。


「レディース&マドモアゼル! ご覧ください、リボーンしたメデューサちゃんをー!」

「いっしっしっしっし」

 

 開け放たれた正面玄関からメデューサの首が飛び出してきたぁ。

 ちょっとマジですか、トイザマスとかに売られているバギーラジコンの上に首が装着されてるんだけど。


「いっしっしっし、見たかい、この恐ろしい機動性を! ケンタウロスも真っ青さね、いっしっしっ――しゃわ!!」


 縦横無尽に校庭を走り回っていたラジコンメデューサが勢い余ってひっくり返ったぁ。

 

「ありゃりゃー、意外と難しいのねーラジコンって。ンコジラ、なんちゃって。どれペルちゃん」


 ヘルメースさんがパチーンと指を鳴らすと玄関からペルセウスさんが飛び出してきた。


「任せるであります、ヘルメース様!」


 そして地面とキスする形でひっくり返っているラジコンメデューサを元の姿勢に直した。


「べっべっ! 気が利くじゃないかペルセウス。後であそこをほじくるようにナメナメしてやろうかい?」

「むっ! 吾輩をたぶらかそうとするとはいい度胸だ、アテナ様の敵め!」

「そういやアンタの飼主はどうしたんだい? もしかしてヘルメースのナメナメに参って鞍替えしたのかい?」

「何をぬかすであるか! 吾輩はアテナ様のナメナメしか受け付けん体になっておるのだ!」


 うわぁ、何て会話してるのこの二人ぃ!


「ペルセウス!」


 声に振り向くと、パラスさんを従えた会長が正面玄関で仁王立ちしていた。


「アテナ様!」

「わたくしの断りもなく、そんなバケモノと口をきいているとは何ごとです?」

「ははー! どんな処分も謹んでお受けする次第でござりまする!」


 お白洲の罪人みたいにペルセウスさんが土下座した。


「いっしっしっし! こんな健気で憐れな下僕がいてよかったじゃないか性悪ブサイクアテナ! いっそのこと結婚しちまいな」

「いま何ていいました? この下劣で淫乱なバケモノが」


 ひぃっ! 会長とメデューサの間に火花がぁ!


 つづく

 次回予告

「お前ぜってーそのアテナって奴に洗脳されてるよ、悪い事言わねーからアタシと一緒に警察いこ?」なペルセウスを巡ってアテナとメデューサが大激突!    

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メデューサちゃんに一目惚れしたあたし 恋の邪魔をするなら神々とも戦います! こーらるしー @puru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ