7F 我ら昇降機の不良達! 2
おぉはぁよぅございまぁすっ。皆さんっ、おぉはぁよぅございまぁすっ。凝り性のギャル氏がケープを仕立て上げるのに深夜まで掛かった結果、蒸気都市に発つ朝しか動けないたった一度のチャンス。
狙うは朝の登校時間か朝食の時間である。早朝の『
「青騎士殿までおまけで要りますかな?」
「いるっしょ、ほらこれ、最新版のアリムレ大陸の旅行本に今回の盗賊祭りの勝者の写真でカップルコンテストの写真使われてんし」
「ほんまや」
「いやぁ、アレだわ。外から見た時アリムレ大陸み強過ぎだわこの格好。アリムレ大陸ではよかったけどちょっち寒いし、改造してぇ〜。いいデザインないかなぁ? あーしもソレガシみたいにセーラー服に脱着できんの足したいわ。すれば学校にも着て行けんし、スカイらーくって感じ、マジ飛翔天使の羽だわ」
「まぁ
「それな。ソレガシもそろそろまた学ラン改造しよ? とりま蒸気都市行くんなら蒸気都市感足そうよ」
「ギャル氏も武侠都市風味にしてみては?
「それは良きかも。また左肩出そっかなぁ、どよ?」
「悪くないかと。
「殴っておけまる?」
「本当にすまなかったと思うっ」
「おはー……っ⁉︎ ……ってレンレンとソレガシね。びっくりしたっ」
ギャル氏のケープ制作に付き合い
一番目はマロニー殿。一応今は『
クララ様はテーブルを挟み立っている
「朝の日課ですかな?」
「まぁね、ラジオ体操の代わりみたいなものよ。にしてもソレガシマジで一瞬誰か分からないからねそれ。レンレンと並ぶと美女と怪人って感じ」
「しずぽよさぁ、ソレガシとも話してたんだけど新しい制服の改造どうする? そろそろファンタジー風の完成目指したいんだよね。ソレガシみたいな脱着式で揃えない?」
「あー……賛成だけど、私はソレガシみたいな蛮カラ風はパスかな。ただ肌の露出はちょっと増やしてもいいかも。眷属の特典的に肌晒してないと特典の利点がゴミ屑化待ったなしだから」
「クララ様も会長化ですかな?」
「痴女と一緒にしないで。踏むよ?」
「本当にすまなかったと思うっ」
「おぅ、おはよッ⁉︎ ……ってソレガシかっ、一瞬マジでビビったぁ、盗賊祭りみたいに盗賊でも襲って来たのかとっ」
男子部屋から一番に起きて来たグレー氏が一瞬肩を跳ね上げ構えるもすぐに手を下ろす。盗賊祭り中商人の一団に同行しロドネー卿と砂漠都市に来たと言っていたが、盗賊に襲われるとかやる事やっていたらしい。深度十一の眷属魔法とか使ってたし、地味にダルちゃんやギャル氏に次いでパーティー内で深度高い可能性まである。
「おはよあられくん! 昨日はお疲れみたいだったけど大丈夫?」
「昨日はちょっとな、サンキュー
「新しい制服の改造案みたいな? グレーはなんか学ランの改造にリクエストある?」
「お、俺もか? そだなぁ……エスキモー的な? 俺こう見えて寒がりで」
「それでよくぞっとしたいなんて言えますなお主……」
綿毛みたいな頭髪と同じでモフモフ好きなのか? 面がいいだけに何着てもグレー氏には似合いそうで羨ましい。
「それで参謀殿? 作戦は決まったのか?」
「ポポロの登校中か朝食の時を狙おうかと、ギャル氏と共に凸ですぞ」
「おぅ、なら朝食の時がベストと見た。朝食の時なら幼王様以外にも全員揃ってるだろうし、見せつける的な意味だとその方がいいだろ。一応は昨日できなかった出立の挨拶って意味もあるんだろ? どうだ
「他の方への迷惑も……いや、この際考えなくていいですな別に」
「おはようござい……ま、す、わ? え? あえ? ちょちょ……」
女性陣三番目の起床者はゆかりん氏か。クララ様より早いと思っていたが、昨日夜遅くまで本を読んでいただけに少しばかり起きるのが遅れたらしい。体育祭前とか毎朝五時から走ってるぐらいだからな。前日に一度
「〜〜〜〜ッ、素敵ですわ素敵ですわ! 未来版オペラ座の怪人? 中はソレガシさんですの⁉︎ はぁ〜ヤバイですわ〜……
「…………鋼鉄の腕で
「きゃああああっ‼︎ しますわしますわっ‼︎ はぁ〜今日は
「あかぁぁぁぁぁぁああああんッ‼︎」
女子部屋の扉を蹴り開ける勢いでりなっち氏が談話室に飛び出してくる。普段被っているキャップ帽は流石に被っておらず、寝癖の付いた頭でふらふらとりなっち氏は
「体育祭でうちら青組が勝ったんやからダーリンは軽音部やよ! ただでさえ人魚姫さんにダーリン寝取られ気味やのに演劇部には寝取らせんえ! んぅ、ふぁあっ、ん? なんの話やったっけ? ……ん? ……ん⁉︎ うぇ⁉︎ なんやドえろうゴツいのおる⁉︎ ダーリンどこ⁉︎ まさかそいつダーリンを食べッ⁉︎ いややぁ⁉︎」
「朝から元気ですなぁりなっち氏……」
格好は一度パンクなのに、壁際まで足早に後退るりなっち氏の姿に肩を
「朝飯ぞね⁉︎ 献立はなんちや‼︎ あてが茶碗には山と盛れ‼︎」
「風ちゃん会長殿……」
間違いない。りなっち氏の『食べッ⁉︎』に反応したな。りなっち氏よりも盛大に跳ねまくっている長い髪の寝癖を振って談話室の中を見回すと、
「げに豪勢な朝飯じゃき‼︎ いただくぜよ‼︎」
「寝ぼけてるんですよなッ⁉︎ そうだと言ってッ⁉︎ 風ちゃん⁉︎ 風ちゃんやめれ⁉︎」
「えぇ〜? なにを意地悪言うぞねぇ? レン、ヤマがケチぞな」
「いや、アンタあーしごと巻き込もうとしてたよね? 生徒会長ならもっとしっかりしろし、脳味噌あんだよね?」
「はぁ? あてはこれでも一年時の年度末試験学年七位ぜよ?」
「ふ、ふ〜ん……」
ギャル氏に致命傷与えてんじゃねえッ。口閉じちゃっただろうがッ。ただ良かったッ、セーフだセーフッ。
朝っぱらから急激にクララ様とギャル氏の顔色が悪くなっている。ギャル氏の髪色と同じく青々しい。あぁ、引き起こしていたりなっち氏の膝が崩れ落ちてるッ。耐えられなかったんだッ、元の世界、異世界関係なく服を破り脱ぐ本能で生きる痴女よりテストの点数が悪いという現実にッ。
「これはぁ? 夢なんかぁ? 早く起きなぁ」
「りなっち氏しっかりッ! カンニングで十五位のりなっち氏ぃぃぃぃッ!……グレー氏は平気そうですな?」
「俺は学年五位だったぜ」
「オーホッホッ!
「はいはい学年三位学年三位」
「ソレガシはなんで平気そうな顔してんしッ‼︎」
「
「ハァァァァッ⁉︎ ドヤ顔ドチャクソムカツキングダムッッッ‼︎」
いやぁ気分いいわ‼︎ 晴れやか‼︎ かつてこれ程までにギャル氏にマウント取れた事があっただろうか? いや、ないッ。転がれ転がれ絨毯の上をッ! 地平線まで大草原ッ‼︎ ギャル氏に加えてクララ様まで……あれ? クララ様ストレッチの体勢のまま身動ぎ一つしなくね?
「あられくんどころかっ、ソレガシより、下……っ、私がゴミ屑だったってわけね……カモンリサイクルショップっ」
「えっ、そっち?」
会長殿より
愕然としていると男子部屋の扉がゆっくりと開く。取手に手を掛けたままぶら下がるように地に崩れているまっちー氏の姿。扉が開き切ると同時に取手から腕を落とし僅かに痙攣する。なにこれ怖いっ。
「ソレガシどころか
「酢橘って確か学年二位だろ?」
「俺の葬儀は豪華にしてくれ……っ、ガクッ」
「まっちー氏ぃぃぃぃッ⁉︎ ガクッてリアルで言う奴はじめて見ましたぞ⁉︎」
「トドメはしっかり刺してやらないと可哀想だからな」
グレー氏容赦ねえなッ。まっちー氏に何か恨みでもあんの? 体育祭の前から何度も絡まれてたらしいからな、溜まってる何かがあるんだろう……。
そんな中、早朝から寝起きなのに永眠ごっこに忙しいまっちー氏の横で女子部屋の扉が開くと、欠伸混じりにずみー氏が姿を現し、まっちー氏を踏み渡りながら暖炉のソファーの前まで歩いてくる。ずみー氏も容赦ねえな……。
会長殿より更に寝癖が天元突破し
「天使の寝顔だ……ッ、もう悔いはないッ、見てくれこの指の震えをッ、なんでだろうなッ、暖かさも冷たさもッ、感じないんだッ」
「お主隠す気ないですな⁉︎ なんでお主が一番ダメージ受けてんですかなマジで⁉︎」
「しずぽよぉぉぉぉッ⁉︎ しっかりしろし⁉︎」
「あらあらしずぽよさんたら、ストレッチで白目など剥いてはいけませんわよ? もう少し体を鍛えませんと」
「ゆかりん氏それ違う」
多分体は関係ないわ。心の方の問題だわ。ってか朝から死体出過ぎなんだよ‼︎ ここは地獄か? 陽も上りきらない内に四人夢ではない別の世界に旅立ってんだけど⁉︎ 最後に女子部屋から顔を覗かせたダルちゃんは、少しの間談話室を眺めると「めんどくさー」と、気怠い魔法の言葉を残して扉を閉め女子部屋に戻ってしまう始末。
「あぁもう作戦の準備開始ですぞ‼︎ ポポロに挨拶したら『雲舟』の港に行かねばならないのですからな‼︎」
「なにぃ⁉︎ ヤマァ⁉︎ まだ朝飯食ってないぜよ⁉︎」
「朝飯はなし‼︎」
「なん……っ、じゃてっ?」
あっ、会長殿も崩れ落ちた。会長殿は……会長殿は崩れ落ちててくれた方が平和でいいな。
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