2F ビーレジーナ 2
ギャル氏に蹴られた頭を摩りながら椅子に座り直し、今一度姫君達と向かい合う。ゆかりん氏達への細かな異世界の説明や冒険者ギルドでの契約がある為、蒸気都市への出立までの間に僅かな自由時間を勝ち取った
組み手を条件に会長殿に
「……取り敢えず仕事の概要は分かりましたからな。姫様方。各王都の王族である姫様方にこそ聞きたい事があるのですけれどな」
「ふむ、なんだソレガシ?」
「
そう言えば隣でギャル氏が目を
「ダルちゃんのおかげで
「ソレガシきみ……本気で言ってる?」
「嘘付く必要ないですぞ。何より繋がりあるどころかもっと奇天烈な話ですけどな。
「ううぇ⁉︎ 亀の甲羅の背の上なのかよ同志⁉︎ 世界の果ては⁉︎」
「盆から水が溢れるかの如く海水は下に落ちてるそうですぞ」
パタパタ手を泳がせて驚きを表現するずみー氏を筆頭に、
「マ? 海水もったいなくね?」や、「すっぽん鍋食いたいぞな」といった暴投気味の幾らか飛び交っている的外れな感想はガン無視し、話を前に押し進める。
「世界構造の話は一先ず傍に置いてですな、姫様達にお聞きしたいのは、
「ちょっとちょっとちょっとッ! なによそれ、地続きってっ、歩けば着くような場所にあるって言ってるのきみ⁉︎ 実はここは異世界じゃなくてご近所だって? 嘘でしょっ、いや、ないでしょそれはっ、ない」
クララ様の言い分は最もで、
友人達が各々のリアクションを取る中で、顔を
「似たような話ならボクも聞いたことあるわね。ねえチャロ? ロド大陸の幽霊騎士団の話よ。してあげたら?」
「なんで知ってるのよ貴女は……? 我が城塞都市の極秘事項の一つだぞ?」
「あら、驚きを奪っちゃった?」
戯けるトート姫の視線を手で払うと、チャロ姫は大きなため息を一つ吐いた。トート姫が極秘事項とやらを知っているのが気に入らないのか、それともそれはブラフで情報を渡したくないからか、少しばかり沈黙をチャロ姫は挟んだが、
「数百年前の話だ。大戦中突如として所属不明の部隊が城塞都市近辺に出現してな。見慣れぬ武器を持ち服を纏った人族のみで構成された騎士団。交戦の後生き残った数十名を捕縛し話を聞けば、ソレガシ、貴殿らと同じ異世界から来た者であると誰もが口にしたそうよ? 今でも城塞都市の交戦記録、尋問記録に残っている。曰く『我々は大英帝国陸軍のノーフォーク連隊である』とね」
「以来噂があるのよ、城塞都市には
ねえ? じゃないわ。チャロ姫の話はまだしも後半のトート姫の話完全に蛇足だよね? 知らない方がよさそうな話だよね?トート姫ったら極秘事項掘り起こして、いざという時は
「似たような話ならどの大陸にもあるわよ。ソレガシ、貴方の言う通り直結している出入り口がひょっとするとあるのかも知れないけれど、それを保有している都市があったとして、間違いなく極秘も極秘でしょうね。ボクでさえ御伽噺としてしかそんな話は聞いていないわ」
トート姫はそう言うが、あるのかもどころか、まず間違いなく直結している出入り口は存在すると見ていい。元の世界に戻っても、眷属として神との繋がりが切れていないのがその証拠。もしもそうだとするのなら……。
「面白くなってきたわねソレガシ?」
親指の爪を噛み頭を回す先でチャロ姫が微笑を浮かべる。好奇心のままに答えへ掘り進む。面白くはあるが怖くもある。
秘密の抜け穴のようなものを古くから保有している都市があるなら、某達の世界に何らかの神の眷属や異種族が潜んでいてもおかしくない。どの程度の量で? どの程度の人数が? したらは何故目立たず潜伏できる?
古来より書物などに記される錬金術師、陰陽師、シャーマン、UMAなどetc────それらの正体がもし想像の通りなら、現代で表立っていない事が不思議であるし、既に
「チャロ姫様、ダルちゃんとも話したのですがこの話は」
「大衆へは秘匿した方がいいだろうな。それこそ下手に吹聴すればなにが湧き出て来るかも分からないわ。ただ、雇うにあたり条件を足そうか。その話、『
細められたチャロ姫の目尻を見据え、
「大きな釣り針にする気ですかな? 餌は
「そマ? ドチャクソヤバたん過ぎんじゃないのそれ?」
「可能性の話よサレン。生憎とボクはアリムレ大陸で世界を渡る抜け穴の話は聞いた事がないけれど、もし保有しているなら各王都が第一候補、心当たりある奴らは動くかもね? いいえ、動くならひょっとすると」
「
背中に冷たい汗が伝う。もし本当に王都が保有しているのなら、いや、異世界『エンジン』でのコウガ=サブローの伝承を聞く限り、それこそ夜間都市あたりが保有しているか知っている可能性は相当に高い。
「おい
「あられくんに賛成。それこそパンドラの箱ってやつじゃないの? 異世界でのはちゃめちゃが元の世界でも起こるなんて言われたら流石に……でしょ?」
「ふふふっ、だがその可能性は低くはないぞ? アラレ、クララ、貴殿達も薄々察してはいるだろう?」
チャロ姫の含み笑いにグレー氏もクララ様も口を引き結ぶ。笑うタイミングよ。絶対笑う必要なかったろ今の……。
「ウトピア財団の登場で、母体となっただろう探求都市ウトピアが別天地への新たな扉とやらを開ける実験の過程で吹き飛んだのは周知の事実だ。別天地が貴殿達の世界の事を指すのなら、侵略戦争と言っても過言ではないかも知れないわね?」
「ただ問題はウトピア財団といずれかの王都が裏で手を組んでいるかいないかが問題ということですよな?」
ただそれらの仮定を加味した場合気になるのは、
「話すことに終わりはないけれど、予想を煮詰めてもなにも進まん。一手進めるとしようじゃない? 場所を移すぞ。これ以上は色々と危うい。まずは一人、敵か味方か貴殿達に依頼の中で判断を委ねるとしよう」
「と言いますと?」
「貴殿達が参加するのは諸島連合の会議だぞ? 『
ん……え? なに?
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