4F 我ら青組! 2
黒板に書き連ねられた種目名の群れ。綱引き、騎馬戦、玉入れ、棒倒し、大玉転がし、借り物競走etc────。
個人競技など徒競走ぐらいのもので、どれもこれもチームプレイ必須というボッチ絶対殺します競技ばかりが揃っている。ボッチへの殺意がもの凄いが、何よりも昼一番の応援合戦、二学年の応援団副団長に
「圧倒的ッ! 圧倒的大反対ッ‼︎ 正気かお主⁉︎
「あらあら? ソレガシさんたら、やる気があるのは結構ですけれど、応援団のメンバー決めは種目決めの後にしてくださいませんこと?」
「種目決めの前にもう決まっちゃってるんですけど⁉︎ 言ってる事が矛盾してますぞ⁉︎ だいたい
言ってて悲しくなってくるが、確信が持てる。事実
ただ「ソレガシとかなにができんの?」と言った奴前に出ろ。少なくとも
「全く、なにを言うかと思えば……俺が知らないとでも?」
青組二学年の意思が
「どうもここ一ヶ月、度々無断欠席が続いているそうだがソレガシ、お前がダンス部として武者修行に行っていたという情報は既に掴んでいるぜ!」
朝の
「その隣の子が武者修行で手に入れたダンスの留学生なんだろう? 俺には分かっている! ダンス部の対抗戦の噂もね。お前こそが
「お主はまず眼科に行け」
何も見通せてねえじゃねえかッ‼︎ 噂に
「何より俺の目下最大のライバルである
「何より応援団副団長はきっとモテるぜ? 羨ましい限りだ。俺が変わってやりたいくらいだよ。なにを隠そう俺がサッカー部に入っているのはモテるためだ」
「あっ、はい」
「モテる。それは男達の夢ッ‼︎ モテたくない男などいるものかだがしかしッ‼︎ 勝利のためには諦めなければいけないこともあるんだッ‼︎ そうだろう皆‼︎ 応援合戦に勝つためには、お前の力が必要だと俺は判断した‼︎」
「はわぁッ! 流石だよ勘助くんッ、普通言いづらいことをそんなにはっきりとッ! これはもう決まりだねッ!」
「ふっ、負けましたわ……副団長は貴方よソレガシさんっ」
あぁこれ断れないやつだ。誰もがしょうがねえなやってやんよみたいな空気を滲ませている。柚子町殿の背後にキラキラしたエフェクトが見えるが幻覚で間違いない。それと少し訂正しろ。
「やらいでかダーリンッ‼︎ うちのギターとダーリンの三味線があれば怖いものなどありまへんッ‼︎ 今年の応援合戦ッ、もろたっ‼︎」
「あっ、はい。もう種目決めしましょうぞ。
多数決の暴力マジで怖い。これこそ民主主義の闇だ。
「ダーリンは全員参加以外の競技は棒倒しに騎馬戦? 見掛け通り好戦的やんなぁ。得意なんか?」
「見掛けってそれフェイスマスクだけ見て決めただろお主。まぁ不得意ではないですな」
『
「面白くありませんわね。やるからには勝利を目指してこそッ、これより簡単な力比べをして誰がどの種目に出るか最終決定しますわよ‼︎ 異論はありませんわね‼︎」
「異論しかねえですぞ。挙手させた意味よ」
「栄光を掴むには力を示せって? ふっ、言ってくれるぜ。オーケー! 力がものを言う競技は腕相撲で決めようぜ男子‼︎ 青組二学年腕相撲大会開催だ‼︎」
「それって棄権ありですかな?」
棄権は当然却下らしく、ガタガタと机が組み替えられ、中央の空いたスペースに置かれる机が一つ。我こそはと男子達が群がる光景を茫然と眺めていると、隣のりなっち氏の椅子に柚子町殿が腰を下ろして来る。こっち来んな。そしてこっち見んな。
「まずは様子見か。ふっ、流石我がライバル葡萄原が認めた男。慎重だな。俺もまずはお前の力を見物させて貰うとするぜ」
居心地悪くなったのでさっさと席を立ち中央に歩み寄れば、人垣が割れ道ができる。そんな避けんでもいくない? 肘を机に着けて待ち構えている男子生徒を前に身を屈めて
結果──────。
「マジかソレガシ九人抜きだぞ⁉︎」
「柔道部の海道ッ、ボクシング部の鳩中までくだしやがったッ⁉︎ 剣道部の井出ッ、弓道部の酒井まで軒並みッ⁉︎」
「なんでまだ冬服着てんのかと思ってたが、あの学生服の裏にいったいどんな筋肉を隠してやがるんだ⁉︎ まさかあいつッ、着痩せするタイプかッ⁉︎」
「勘助はこれを見抜いていたと言うのかッ⁉︎ 流石だぜ名将ッ‼︎」
「そうはならんやろッ」
あれれぇ〜? 馬鹿なッ⁉︎ これは学校行事だし魔力での肉体強化してねえのにコレかよッ⁉︎ 異世界で体鍛え過ぎた? わざと負けるのは嫌だし本気出せばこれとはッ、どうやら
「流石葡萄原が認めた男だ‼︎ 俺の相手に不足はないようだな‼︎」
「名将がッ、名将が立ったッ‼︎」
「いやもう随分前から立ってましたぞ?」
だいたい三人目に勝ったあたりで最前列で観戦してたよ。実況者みたいに一番盛り上がってたよ? 机を挟み
「気付いたか? ふっ、俺はお前が疲れるまで待っていたのさ‼︎ 途中で気付かなかったか? 運動部との相手続けて六人はなにを隠そう俺が仕組んだッ!」
「せこいなお主ッ⁉︎ どこら辺が名将⁉︎ 迷将ですぞそれじゃあ⁉︎」
「もう遅いぜッ‼︎ さぁ勝負‼︎」
ドゴンッ!!!!
「……勝負は一瞬だった。机に叩き付けられる手の甲。片や立ち尽くし、片や勢いに負けて床に転がる。勝者は敗者を茫然と見下ろし、敗者は顔を両手で覆い天井を見上げた。そして小さく笑うのだ。ふっ、お前を新たなライバルとして認めようと、な? 俺のことは勘助と呼んでくれ‼︎ 俺が許す‼︎ ソレガシッ、おめでとう、徒競走以外の全種目ッ、お前が出ろ‼︎」
「そのモノローグ必要ないだろ常識的に考えてッ⁉︎ お主弱いな⁉︎ 俺が仕組んだとはなんだったんですかなマジで⁉︎」
「ふっ、俺はサッカー部でもキーパーだ。受け止めるのは得意でもッ、単純な力勝負には…………弱いッ‼︎」
「溜めた意味⁉︎ よくそれでドヤ顔できますな⁉︎ おいおいおいッ⁉︎
「安心しろよライバル‼︎ お前を一人には俺がさせないぜ? 俺も全種目参加する‼︎ 二人で青組を勝利に導こうぜ‼︎」
「名将とこれまで隠れていた無頼者が手を組みますか……、あらあら、見せつけてくれますわね? よくってよ‼︎ さあ次は全員外に出てくださいな‼︎ 足の速さを男女共々見せて貰うとしようじゃない‼︎」
「
三度どころか一度すら聞く耳持ってくれない青組大将に引き摺られるように外にぞろぞろ。少数意見を大切にしてくれ。全員それで本当にいいのか? 目をギラギラ輝かせやがってッ‼︎ ダルちゃんだけが肩に手を置いて
そんな一幕を挟み各々のタイムが出揃った結果……
「では結果を踏まえた上で最終決定を、
大丈夫じゃねえよッ。予想外だよ。去年は綱引きと玉入れにしか
ぼうっと教室に目を流せば、ゆかりん氏と勘助氏がぐっと親指立てた拳を掲げてくれ、横に座るダルちゃんも
やるからには本気でやるから面白い。勝ちを目指さぬ者などいない。ここでゴネたらクソダサいじゃないか。一度己が頬を叩きフェイスマスクを引き下げる。ぶっ! と何人か
ギャル氏達が敵だが偶には良い。楽しんだ者勝ち。青組勝利の為に微力を尽くそう。
「冒険してやりますとも。我ら青組、敵の血の気を引かせてやりましょうぞ‼︎」
続く歓声に笑みを返し掲げられる拳に拳を返す。
「では次は応援団のメンバー決めですわね。時間も押していますので、ぱっぱと決めるとしようじゃない?」
「……急に冷めましたなぁ」
ただこのノリに付いていけるかどうかは
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