37F ミス=ナプダヴィ=コンテスト
「昨日の料理ドチャクソ美味しかったね!」
「……
『溶けた蜃気楼』の料理は、店名と同じく蜃気楼のように味わえず、くらったのはギャル氏の回し蹴りのみ。朝陽を見つめながら吐いたため息は、足元から上ってくる熱気とアラブ民謡風の音楽に絡め取られ落ちずに空へ飛んで行ってしまう。
スルブゥア広場横の宿、『おどる砂嵐』ではなく目を覚ませば砂漠都市ナプダヴィの『塔』の中。味わえなかった食事会の前にロドス公に頼んでいた通り、宿ではなく『塔』に送ってくれたようで助かった。
起き抜けに胃袋を満たす為、『塔』の整備にやって来ている機械神の眷属に頼む買ってきて貰った
「食事会中お休みモードだったけどソレガシ大丈夫なん? もうすぐしたらミスコン始まっちゃうけど、ずみー達はもう会場行ってんよ?」
「おま言う。お休みモードにしたのお主ですな。まぁ昨日の作戦会議は主に顔合わせの意味が強いので問題ないですぞ。此方側の戦力のおさらい、と言うより、各王都の騎士達にグレー氏達の顔を覚えてもらう為とでも言いましょうか。細かな作戦は魔法都市でもう詰めているのですし、必要なのは微調整。
何も変わった記事はなく、内容の多くはミスコン一色。おそらくはナプダヴィの観光業の稼ぎ期。上から客足が死ぬような記事は控えろとでも言われているのか、洞窟網での魔神の眷属達とのドンパチは全く記事になっていない。ミスコンの開催も変わらず、審査員も変わらない。
「変わらず。ヒラール王、
ミスコンに合わせて魔法都市が炎神を殺す気なのだとして、成功しようものなら大衆の面前で眷属の繋がり消えた王と
逆に
「
「だから魔法都市の貴族達含めてゲーハー達にも喧嘩売るんでしょ?」
その通り。
要は乱戦の中漁夫の利狙い。魔法都市と砂漠都市がカチ合う中で、欲しいモノ全て奪ってしまおうという大胆不敵な大博打。チャロ姫君は喜びそうだが、生憎チャロ姫君程
「でも絶対やるんでしょ?」
「もちのろん。ここまで来たら開き直る以外にないですぞ。
「お祭りらしくてよきかなって! 楽しくなってきたじゃんね。んでいつまで待つし?」
「それは……」
「ソレガシ卿」
開き掛けた口が
「果報を寝て待った甲斐はありましたかな?」
「……トート=ヒラールがミスコンの本戦出場者お披露目に姿を現したおかげで、夜の内に動いたダルカス=ゴールドンに幾らかの護衛がつけられトート=ヒラール達と戦闘に。非公式の情報ですが、トート=ヒラールは討ち死にしたと」
「……護衛の面子は?」
「十数名の『
「貴族達は?」
「昨日の昼間に
「……結果は」
「これもまだ非公式の情報ですが、炎神の巫女は魔法都市の手に、トート=ヒラールの死体も確保されたと。ゴールドン家の者達に大きな怪我はなく、いかが致します?」
「……ソレガシっ」
ギャル氏の声を聞き流しながら、ゆっくり持ち上げた親指の爪を噛み──────噛み切る。口の中の爪を眼下に広がる砂漠都市へと吐き出し握り締めた手で見晴らし台の床を叩く。
やってくれたなッ‼︎
賽はもう投げられた。転がる賽の目が何を叩き出すのか、後は己が目で見に行くしかない。
『大変お待たせ致しましたッ‼︎ 第五〇回ミス=ナプダヴィ=コンテストッ‼︎ 只今より開催致しますッ‼︎』
熱に揺らぐ空気に混じって遠くから聞こえて来る
「さて……ギャル氏、止められぬ喧嘩の時間ですぞ。マクセル殿は確か三番目。遅れず飛び入り参加らしく飛び込んで見せるとしましょうぞ」
「んじゃ二番目のずみーのしかちゃんと見れねえじゃん。特技の披露ってずみー絵描く気満々っしょ? ドチャクソ見たい‼︎」
「……ギャル氏、今回は多少なりとも演技ですぞ? 青騎士殿よ」
「大丈夫だって! ゆかりんを信じろし‼︎」
それが一番信用ならねぇ……。青騎士装備の布少ないギャル氏と共に身を翻せば、小さく頭を下げる『
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