33F 洞窟網ブロール
「眷属魔法だけが魔法じゃなくてよ?
指を大きく横に薙いだマクセル=ブラータンの指先が描く光線が
他の都市と勝手が違い、アリムレ大陸の王都であるナプダヴィの中でただ暴れたぐらいでは途中で騎士や警備隊が仲裁に来るなどありえない。奪われる者が悪。通行人の
「他人を気にしてる場合かしら?」
「目の前で肉が弾ける様を喜んで眺める者などイカレでしょうよ! やってる事がただの乱暴者でアリムレ大陸らしいようで‼︎」
「野蛮人と一緒は嫌ね、気品と優雅さが違うのよ」
「どこが⁉︎」
箒の上に腰を下ろす姿が優雅だとでも言う気なのか、どう飛んでいるのやら、おそらく空神や風神の眷属魔法を研究した際の副産物。空飛ぶ絨毯と原理は同じか。物を浮かべる眷属魔法の魔法式を刻み、己が魔力を流して作動さえていると見た。
地から天井へまた下へ、円柱状の通路を回りながら魔法矢の群れを避けきり、腕で壁を叩きマクセル=ブラータンへ向けて跳ぶ。距離を縮めるのが第一歩。詠唱する暇を潰し近接戦を挑むのが魔神の眷属に勝利する為の最大の近道。
マクセル=ブラータンが指を振るい、向かってくる光の矢を鋼鉄の腕を薙ぎ弾き砕く。魔女の口端が歪むのを見つめながら、握る小太刀に力を込めた。魔力蒸気の劣化に耐える為の
ポキンッ‼︎
「うっそだぁッ⁉︎」
「私は寝技投げ技の方が得意でなぁ? 機械神の眷属の腕の骨が折れる音を聞くのは初めてだ」
「その前に自分の骨を心配しなよ、鎖骨丸見えスケスケじゃん?」
跳んで来たギャル氏が
背で感じる岩肌の感触。口から漏れ出る空気を噛み殺し、壁に鋼鉄の腕を伸ばし走りながら視界を正す。
「グリス=フェッタにロダン=ナハースッ。どうしても
「大人気じゃんウケるわ。どうすんよ?」
「逃げ切れれば最高ですがなッ」
「御守り部屋に置いてきぼりにしちゃったじゃんもー」
いや、今三味線あっても使えねえから‼︎
「なぜに空き瓶⁉︎ 空飛ぶ空き瓶とかシュール過ぎますぞ⁉︎」
「ふん低能の鼠め……箒が足らずこれしかなかったからだ‼︎」
「他にもっといいのあっただろ常識的に考えて‼︎ なんで偉そうなんですかなお主⁉︎」
「全くだロダン。なぜ君が魔神の眷属筆頭なのか理解に苦しむよ」
「魔神って頭イカレてね?」
ギャル氏のマジレスの鋭さよ。やはり異世界の神々は頭がおかしい。掛ける眼鏡を指で押し上げそのまま腕を伸ばすグリス=フェッタと、空き瓶の上でゆらゆら揺れながら腕を伸ばすロダン=ナハース、呆れたように
ふざけて見えても魔神の眷属筆頭達。見えぬ魔力量の底がいつ尽きるのかも分からない。数を増やし降り注ぐだろう魔法矢彩る景色に身構え噴き出す蒸気を裂き、空舞う橙色の閃光が空飛ぶ空き瓶の飲み口を掴んだ。
「私は無視か魔法使い? 気付けに一発‼︎」
「おいこらやめたまえッ⁉︎ 私の可愛い空飛ぶ空き瓶が⁉︎」
握る空き瓶を強引に引き抜き、体勢を崩し落ちるロダン殿を気にする事もなく、握る空き瓶をダキニ殿は魔女に向けて振り切る。割れる酒瓶と跳ね上がるマクセル殿の顔。気絶したのか背後へ仰け反り落ちる魔女を地を転がり起きたロダン殿が受け止め、転がる箒に飛び乗り戻って来る。
「マクセルが完全に伸びてしまったか。一番に飛び出した癖に重いからパスだグリス」
「おいロダン投げるな⁉︎」
「さあ選手交代私が相手だ蛮人共。追え追え無数の餌の群れ、その牙触れるまで止まること許さず、埋まらぬ飢餓を抱え永劫に腹を満たすべし。
「ふざけろッ⁉︎ チートや⁉︎ チーターですぞ⁉︎」
魔神の眷属が詠唱するは、矢神の眷属魔法が深度十。イチョウ卿が
右に避けても宙を跳ね右に、上に跳んでも付いて来る。その数が時間と共に数を増やす。ロダン殿の口を塞いでいる時間もない。それに加えて─────ッ。
「楽しくなってきたぞいい具合だ‼︎ 青髪の武人‼︎ その脚ポキっとへし折ってくれる‼︎ お前もついでだ機械神の眷属よ‼︎」
「あーしらよか先にあっちどうにかしろし⁉︎」
「試合場のギミックを壊すなんてもったいないな‼︎ あれは後だ。拳も握らぬ者に用はない‼︎」
「馬鹿なの死ぬの⁉︎ 意味不なんだけど⁉︎」
「戦さ場こそが武人の花道‼︎ 戦場で死ぬなら本望也‼︎」
「アンタドチャクソ嫌いだわぁ‼︎」
ウンザリした顔のギャル氏に目を落とし、足元に迫る水の
ダキニ殿の腹部を押し蹴りギャル氏が弾くも、宙で体勢を立て直し、再びダキニ殿が突っ込んで来る。上下左右跳ね回り追って来るダキニ殿と、水の
「くそ……っ」
奥歯を噛み締め、心の中で謝りながら洞窟内に横穴を掘ったらしい食品店の店頭に並ぶ品物達の中に突っ込み、鋼鉄の腕で品物を撒き散らす。
宙に舞う果物達。気にせず突っ込んで来るダキニ殿とは別に、水矢の群れが果物のチャフに突っ込み弾ける。
「プシィ──────ッ‼︎」
鋭く吐き出す吐息に合わせて魔法筒に送る魔力を絞る。照明として一度使用したが、射撃魔法として放つのは初めて。魔法を放つその感覚が掴みづらい。噛み合わせ弾く『カッ飛ぶ
「べんべんッ」
三味線の弦を弾くように、短く鋭く吹き出す呼吸に合わせて魔法の筒先が
「お喋りの時間はお終いですぞ、お次は
「三味線? よく分からんが構わないとも。『
「武闘会の時間だって‼︎」
「どれも可愛くなーい‼︎ 萎えみパないから全チェンジッ‼︎」
後ろ向きに鋼鉄の腕で走り魔法筒を向ける先、後方から箒に跨り追い付いて来た『
「べんべんッ!」
交差する魔法の閃光が洞窟内を色とりどりに染め走る。
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