一.五章 帰還volvo
G Return Match
無論、
それが四日前の話。
異世界から帰って来た際は朝だった為に学校へと登校したが、何より驚いたのは異世界で三週間過ごしたのにこっちでは三日しか経っていなかった事だ。
そんな訳で異世界から帰還し四日目の朝。元の世界では特に変わってもいない日常。
畳敷きの居間に置かれている食卓の前に座れば、目の前で
眉間に
「愚息よ、可愛い子には旅をさせろ。男子三日会わざれは
「……三日経っても親父殿の
「お義父上との約束だからな、愚息よ、お前にも分かる時が来る。入婿の辛いところだ。だが姫は褒めてくれるぞ」
「……
食卓に姿ない母親にため息を吐きそうになるのを、味噌汁を
愛とは偉大で理解不能だ。
「で?
「
「
「それは困るッ」
「困るのは兄者もじゃろうに、まるで他人事のように。母上が兄者を見たら
愉快じゃあない。眉を
全く兄に対する敬意に欠けている妹は、今日もまた学校があるのに着物に身を包んでおり、どこに行くのか分かったものではない。
「……妹よ、
「改造した学ランなぞ着ておる兄者には言われとうないですな。どうせ着るなら母上の織った着物を着ればよいのじゃ。三日会わぬ内に学徒の身分で墨なぞ頬に彫りおって」
笑い声と共に零された妹の一言に顔を歪め、白米を口へと掻き込み味噌汁で胃に流す。碗を置いて咀嚼の度に動く頬に触れれば、そこにあるだろう円の中に三本の黄金螺旋が刻まれた紋章。
異世界に行き、身分を得る為に冒険者となった事で契約した機械神の紋章。
どうなってんだ機械神の眷属。今もそうだ。
異世界から元の世界に戻って来たのに頬に刻まれた紋章は消えず、更に元の世界の者達から見えない訳でもない。おかげで
大草原以外の何ものでもない。
「それだ愚息よ、何故
「なにそれ草も生えない。親父殿、
「
「……これはこれでいいんですぞ」
異世界で変わろうと決めた証。座って傍観している事をやめ、己が色を決める為に、『絶対』に挑むと一人誓った
生き方も見た目も違うクラスの人気者。冒険者としての相棒。ギャル氏の青い髪もよく見えるように。そう、今も見えている。
……何故見えている? マジで見える。縁側の外、青い色をしたサイドポニーが気持ち良さそうに揺れている。
「やっほーソレガシ!ボーン!なに今なんかの撮影中? 住所あってんよね? ここアンタの家で合ってんの?」
「……少なくとも時代劇のセットじゃないですぞ。なぜにギャル氏がいるのですかな?あぁ……夢?そうでなきゃあ幻覚?……そうだここに病院を建てよう」
「……相変わらずなに言ってんか全然分かんないんだけど?」
それってなんともブーメラン。じゃあないッ。元の世界に帰って来たのに、何故朝から学校でもなく
遠慮という言葉を知らないのか?
「聞いてよソレガシ!三日留守にしただけでママもパパもお
「……いや、妹が」
「アンタの妹天才じゃね? あっ、あーし
何しに来たのこの制御不能生命体。初めて来たはずなのに来慣れてるみたいに振る舞うんじゃない。「あの盆栽風情みがぱない」とすぐに妹から目を移して庭を見ながら笑っているギャル氏を
「……ハイカラな娘御だな愚息よ」
「……ハイカラな娘御だのう兄者」
ハイカラとかリアルで言う奴初めて見たよ。しかもそれが家族とかっ。今何時代? 江戸時代?カレンダーを見れば年号は令和。良かった現代のままだ……。
口を閉じる事なく動かし続けるギャル氏と、無言で朝食を食べ終える
「なるほどな愚息よ、相分かった。だがそれは
「少なくとも
「ぐっ、お義父上の名を出すのは卑怯だぞッ。いかん、いかんぞっ、帰って来てからは
「ねえソレガシのお母さんは?」
「聞くタイミングよ」
親父殿が婿入り侍モードに片足突っ込んでるのに何を呑気な顔をしているのか。親父殿はナンタラ流の剣術免許皆伝だぞ。刀でも持ち出されたら笑うしかない。居間の床の間に正に置かれてるしッ。
「母上は
「
「……道場とな? 愚息よ、是非またその子には立ち寄って貰いなさい。どこの道場かな?
「はいはいはい、もう学校行きましょうな。秒で」
家で謎の武術談義などされては
背後から聞こえてくる妹の「また来て貰え〜」という必要のないお節介を聞き流し、家を出た。
純和風の屋敷である
そんなギャル氏の格好は、セーラー服だが、改造されてはいないただ着崩された物。
「ソレガシの家ヤバイね、今度ダチコと来てもいい? 浴衣とか映えそうだしパシャリたいわ」
「ギャル氏の道場とやらに呼べばいいのでは?」
「は? 呼べるわけないじゃん。バカなの?」
なんでや。ギャル氏の家に呼べないのに、なぜ
「それで? なぜにギャル氏は
「なにが? ダチコと居て何に
「あぁ……憂鬱な一日の始まりですな」
「は? 最高の一日の間違いっしょ? ほらバイブス上げて!」
「……ypaaaaaa」
ギャル氏に小突かれながら学校への道を急ぐ。頬に刻まれた紋章が周りから見えないように鞄から取り出した黒いマスクを掛けて。鞄の底に入れてある黒いレンチを一度撫ぜ、鞄を背負いギャル氏に並んだ。
また今日も新たに貼られたレッテルとの戦いだ。ギャル氏に勧められた黒いマスクの所為で不良っぽさに磨きが掛かっている気がしないでもないが、何かあったらギャル氏の所為にしてしまおう。
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