30F 冒険者の日常 4
「まさか断ったりしないだろうな姉ちゃん。武神の眷属ならばよう、
手を組み指の骨をポキポキ鳴らす厳つい
心の底からウンザリしているといった苦々しい顔を浮かべており、小さな咳払いを挟み、にっこり営業スマイルをギャル氏は浮かべると
「すいませんお客様、それ来月からなんですよ」
「あぁ来月か、なら仕方ねえな」
いいんだそれで!
よく分からないが、顎を一度撫ぜて
柔らかく手を振って営業スマイルを消したギャル氏の「ガン萎えるわ」の
ノリツッコミまでできるとは、異世界の住人は器が大きいなぁ。
「武神の眷属の癖にセコい姉ちゃんだぜ。武神の眷属のルールを忘れたとは言わせねえぞ」
「武神の眷属のルール?」
眷属ごとに決まったルールがあるのは知っているが、機械神の眷属ならまだしも、そう言えばギャル氏の眷属としてのルールは聞いていない。
教えて欲しいのにギャル氏は口を真一文字に引き結び
「武神の眷属は同じ武神の眷属から申し込まれた決闘を断る事ができないのダ。断れば神との繋がりが薄れル。負けようが勝とうが戦わねばナラン。己が武を示さねバナ。剣神や槍神の眷属なども同じルールがあったはずダ」
「oh……、良かった
ギャル氏の代わりに教えてくれたジャギン殿にそう返せば、ギャル氏に強く
「ちなみにジャギン殿、機械神の眷属のルールはなんですかな?」
「眷属同士借りパクは死刑。眷属同士強奪も死刑。必要以上の技術漏洩も死刑になる場合がアルゾ。
「……もう大丈夫ですぞ」
重いんだよいちいち罰が!神様が絡んでるから?死刑の見本市じゃねえか!蒸気で撃ち出す銃が普及してないのも己が利益の為じゃなくて死刑になるからじゃないの?とんだ秘密主義だな機械神!ほとんど暗黙の了解的なルールなのだとしても酷過ぎる!今聞いておいて良かった‼︎
ただ機械神の眷属の死刑大百科みたいなルールと違い、決闘を断れば神との繋がりが薄れるとは、武神の眷属のルールはそこそこ面倒だ。武神パートゥルー氏とは余程決闘が好きなのだろう。
「さあやろうぜ姉ちゃん。これ見よがしに肩の武神の紋章見せびらかせて強えんだろ? まあ紋章見りゃ分かるがな」
違うんです
いやぁしかし────。
「
「ふ、ふふっ、ソレガシそうゆうこと言っちゃうわけ? いいじゃんやってやんしワン公。ただあーしの下僕に勝てたらね!」
そう言ってギャル氏は
なのに疑問も持たず「いいだろう」と吐き捨て
迷いねえな‼︎ やるとも言ってねえよ
「ちょっとギャル氏⁉︎
「ゴーちんがいんじゃん。スライム同様ぶっ飛ばせば?」
「いやそれ
「黄金螺旋の線が三本、機械神の眷属としても中々やんのか? 見掛けによらず兄ちゃんも姉ちゃんもやるらしい」
なんか褒めてくれてるけど、
「サレンもソレガシも、短命な人族であるだけに成長が早いナ。ワタシが線三本に増えるまでには十五年ばかり掛かったのダガ」
背後から関心するジャギン殿の声が聞こえる。それ今言わなきゃ駄目なの? もっと先に知りたかったよ。そう言われて見れば、ギャル氏の肩に見える紋章も最初と多少変化している。
大きな丸の中、下から伸びている五本の線。その線の先にくっ付いている小さな三角形の下、真ん中の線に三角形が増えていた。
「じゃあやろうか兄ちゃん」
そんな風に観察してたらもう
思わず足を下げれば、頬を撫でる
……なるほどですな。後方にいるギャル氏を親指で指し、なんとか口の端を持ち上げる。
「やるな
「……つかえなー」
聞こえてんぞ!あんなの直撃したら
ギャル氏の敗北は流石に願いはしないが、一発くらいなら小突いていいと願いを込めて
見た目は厳ついが結構いい人っぽいぞこの人。
「はぁ、決闘とか意味不で萎えんけど、あーし売られた喧嘩は買う主義だから。やるんだったらさっさと終わらせるっしょ。来なよワン公」
伸ばした右手の指で
最初の頃は「
それこそがギャル氏の強みと言うか、まあただ図太いだけである。
それを前にギャル氏は笑みを崩す事なく、迷わずに地面に手を伸ばし、ある物をひょいと掴みと前に掲げた。
プシ──────ッ!
蒸気を吐く
ちょっと待って。一旦落ち着こう。
ゴイィィィィンッ‼︎
「ぐぅッ⁉︎」
待ってはくれずに響き渡る鉄の震える鈍い音と
一心同体であるらしい
硬いな装甲!だけでなくかなり重いはずなのに、なにを軽々ギャル氏は持ち上げているのか。
拳が砕けたのか腕を抑えて後退る
三回転して大地に転がる
ただそう……顎を
今日は赤だったか、何とは言わないが。言ったら蹴られるし最悪死ぬ。
「お見事ギャル氏、相変わらずの技の冴えよ」
「アンタはどのポジションなわけ? ま、スライムよりは蹴りやすいかな」
魔物討伐の仕事以降ギャル氏の方が
「あー、でもやっぱ前より錆びてんわ。音が違うんだよね。一年サボってたしブランク? もうやん事ないと思ってたからさぁ」
「それで錆びてるってどんな
「ハイィ? なにソレガシ喧嘩売ってんの?」
売ると買われるので売ってません。ギャル氏どんだけ中学の頃空手で鳴らしてたんだよ。全国大会優勝とか実はしちゃってる系じゃないのこれ。そんなのに喧嘩売らないわ。
だから
が、そうはならず、ギャル氏が
おかげで地面にレンチが落ちる。助かった。流石我が写し身。
ただそれと一緒に
「ム。魔力が切れたカ。
ああ、だから急に体が怠くなったのか。ジャギン殿そういう事は先に教えて。っていうか機械神との繋がり深めれば魔力消費抑えられるのね。
機械神との繋がり深める意味あったわ‼︎
何もしてないのに体力が底をついた
もっと運び方どうにかなんなかったの?
冒険者ギルドの受付で出迎えてくれたダルちゃんは、
マジでそういうとこだし受付嬢。
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