28F 冒険者の日常 2
機械神の眷属の魔法は
強化できるか、最終的な形状も召喚主次第とか機械神ヨタ様サボり過ぎじゃないの?
それとも、それだけ己の眷属を信頼しているから……とか絶対ないわ。だって部品の製造さえも眷属任せだもん。蒸気機関の本や専門誌も眷属が書いてるっぽいし。ぐう畜過ぎる。
「折角
いいの? 怒られない? 見ろよ何処にいるかは知らない機械神様よ。都市エトにいる眷属はご覧の有様だぞ。
だいたい神との絆が深まったところで使える魔法が増えないんじゃ機械神との絆深める意味ないのでは? 理解を深めれば勝手に絆が深まるだけって知識量の指標にしかならないんじゃないか?
「そう言えばジャギン殿の
とは言え、機械神の眷属誰しもが唯一使える魔法となると、同じ眷属であるクフ殿やジャギン殿の
ジャギン殿に至っては、紋章の黄金螺旋が二つの
百十年も眷属をやっているジャギン殿の事、改造、改良に情熱を傾けているガチ勢そうなあたり、相当形を変えていそうだ。少なくとも
だが、
「気になるのか? ソレはいいが見せられないゾ。ただ出すのでは目立ち過ぎるシ、警備部隊に怒られたくはナイ」
……そんなデカイの? ただ出すだけで警備部隊に怒られる
「
確かにッ!
最初都市エトに辿り着いた時に出会った衛兵も、手に持っていたのは銃ではなく槍だった。魔物討伐の依頼を受けた時も、朝に武器屋を覗きに行きはしたが、売っていたのは刀剣類ばかりで、遠距離用の武器は弓やクロスボウ。
確かに考えればおかしな話だ。
「機械神の眷属の奥の手を早々世間にバラせないのダ。剣や槍だけでも他の強大な眷属は多彩で強力な眷属魔法を使えるガ、ワタシ達はコレだけダ。無論バラせばそれだけ世の中は便利になるかもしれないガ、そうなるとワタシ達にできる事も減ル。要は己の利益の為ニ、機械神の眷属達は誰もがバラしていない技術があるとナ。見損なったカ?」
「……いえ別に」
別に見損ないはしない。己が利益の為。そうは言うが、街を豊かにする助けをしている蒸気機関を理解せず、機械神の眷属に良い顔しない者に毒を吐いても、クフ殿もジャギン殿も銃口を向けるような事はしない。する素振りも見せない。
それが機械神の眷属のルールであるのか、個々人のモラルから来ているものなのかは分からないが、きっとそれは扱っている技術を理解しているが故だ。
元居た世界でも、銃器の普及によって戦争や生活が大きく変わった歴史がある。異世界では伝統的に自然、魔法を重じているという背景があるからという事もあるのだろうが、それが正しいかどうかは余所者の
立つ鳥跡を濁さずである。理不尽に来てしまったのだとしても、後悔を残して去りたくはない。そう決めたのだ。
「見損なったり別にしませんぞ。先輩達はいい先輩で、
そう言えば、ジャギン殿は柔らかく目を細め、
「ソレガシはいい後輩だ。人族なのに
「
見逃したくない瞬間を無数の瞳で見つめられるというのはどういう気分なのか。少し羨ましい気もする。
首に回されたジャギン殿の腕が少し熱い。
「ム……そう言われると照れるナ。ソレガシは変人ダナ。冒険者デ、武神の眷属とも仲が良いようだシ、ソレガシのような男が居たナラ、ワタシも故郷を離れはしなかったのダロウガ」
「ジャギン殿の故郷ですか、どんな所か気になりますぞ」
「蟲人族の多くは森の中の都に住ム。ワタシもそうだっタ。色々あって故郷を飛び出し、眷属の組合に入ってからは色々な街を渡ったナ。今はココに派遣されているガ」
「え?ジャギン殿て派遣されてるだけなのですかな?」
「ワタシもクフもそうだゾ。人手が足りなくなった所ヤ、一定期間の契約で街を行き来スル」
「……へぇ」
「どうしタ?」
いや別に。眷属の組合って人材の派遣業務までやってるんだなあって。
そりゃ冒険者ギルドが
いや、だが眷属ごとの組合に入る為にはまず神と契約しなければいけない事を思えば、冒険者ギルドが今もまだある事に納得はできる。
でも、そりゃさっさと普通に働くなら組合行けってダルちゃんも思うわ。
ああ見えてダルちゃん結構親切だったんだな! さーせんやる気なさそうとか言って!普通に仕事面倒くさいから
「それにしても、クフは遅いナ。休憩時間が終わってしまうゾ」
「そうですな。管理人に呼ばれたかと思えば全然帰って来ませんぞ……厄介事の可能性が微レ存?」
「ヤメロソレガシ、今から気が滅入ル。徹夜作業などになったらやる気起きんゾ」
そう零して
おかげでジャギン殿と大分話込んでしまった。悪くはない時間だが、そうなって来ると帰りの遅いクフ殿が気に掛かる。
だが、丁度そんな話をしていると、視界の上で銀色が
見晴らし台を踏むクフ殿の重い足音と、眉間に刻まれた深い
ジャギン殿と一度軽く顔を見合わせ、ジャギン殿が数度牙をカチ鳴らしてから口を開いた。
「休憩時間は終了カ?大分面倒くさそうな話だったみたいだナ」
「ああ……休憩時間は終わりだよ。ソレガシ、ジャギン、今日はもうアガリな。今日の仕事はおしまいだ」
「えぇぇ……」
急な仕事の終了を告げ、それだけ言うとクフ殿は『塔』の下へと飛び降りて行った。
なんにせよ、何故仕事は終わりなのか理由を聞ける相手もおらず、
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