記憶
ヒガシカド
記憶
ここに来る度、私は苦しくなる。今の私と同じくらいの年、若くしておぞましい難病に侵され、死んだ母親。死に際に母の発した言葉。全てが思い出され、心臓が締め付けられる。
私を知る人なら笑うかもしれない。お前の母親は死ぬどころか、難病にかかったりなどせず今も健康で、全く元気ではないか。そもそもお前自身そう若くないだろう、と。
しかし本当にこの甦る記憶を偽りと断定して良いのだろうか。確かに私の母は健在だ、だがしかしもう若くはない。その意味で、若かった母親はもうどこにもいない。若い母は死に、老いた母と交代した。母は一度死んだのである。
そしてこの場所が私を苦しめるのは、ここが私の死に場所である故か…
記憶 ヒガシカド @nskadomsk
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