女神様とデート
「家でのんびりしていたい」
膝枕をさせてもらった後、絢音によって外に連れ出された。
せっかく優那に膝枕をお願いしようと思ったのだが、悠斗に選択肢はない。
基本的に絢音はワンピースが好きなようで、外に出る時もワンピースだった。
膝下まである丈だからか、今日はタイツをはいていない。
「文句言わないでください。他のとこでもなるか試さないといけませんから」
「やるのか」
物凄い面倒で、悠斗は「はあー……」とため息をつく。
何で家じゃなくて外でもしなくちゃいけないのか……そう思わずにいられない。
外でも力が抜けてしまえば、絢音はまともに歩くことができなくなるため、悠斗の手助けが必要だ。
「何でため息をつくのですか?」
今のところ手を握るのは問題なため、繋いでいる右手に絢音は力を入れてくる。
キリキリと擬音が出そうなくらい強く、手を離してしまいたい。
「だって休日は休むためにあるんだぞ。家でのんびりするのが普通だろ?」
「そういった人もいるかもしれませんが、全ての人がずっと家にいるわけではありません」
確かに休日の駅前は人でごった返しており、家族連れや友達同士、恋人同士と思われる人たちが行き来している。
基本的に悠斗は休日に外に出ることはなく、家で引きこもっていることが多い。
今の時代はテレビにスマホ、漫画など、インドアであっても暇つぶしはいくらでも出来る。
だから無理して外にでる必要はないというのが悠斗の考えだ。
「外で抱き締めるのか?」
「なっ……いきなりそんなことするわけありません。カラオケや漫画喫茶などがあるでしょう。今日はそこで試します」
耳まで真っ赤にして否定してきた。
外では人目が気になるだろうし、手を繋ぐだけで精一杯なのだろう。
その証拠に外に出て手を繋いでから頬が赤かった。
「どっちがいいんだ?」
「選んでいいですよ。どちらも人目につかずに長時間いれますし」
「じゃあ漫喫で」
理由としては沢山の漫画が読み放題だから。
抱き締めながら漫画を読ませてもらうことにした。
☆ ☆ ☆
「初めて来ましたけど、沢山の漫画があるんですね。ソフトドリンク飲み放題にアイスも食べ放題」
漫画喫茶に入った絢音は少し感動しているようだ。
沢山の漫画が読める他にも動画が見放題、シャワールームも完備、軽食もあって長時間いても飽きない。
「そうだな。ここで読めるぞ」
数冊の漫画と飲み物を持って希望した席に行く。
フルフラットのペアシートでイチャつくのには充分だろう。
一応個室の扱いにはなるだろうが、壁は天井まではなくて完全に仕切られているわけではない。
大きな声は出せないし、イチャつくにしても限度がある。
「では早速お願いします」
絢音は両手を広げて抱きついてほしそうにアピールをしてくる。
いきなりか? と思ったが、確かめるために来たのだから、すぐにしたいのだろう。
逆らうことはできないし、悠斗は頷いて絢音に抱きつく。
昨日から沢山くっついているが、女の子の体は柔らかすぎて不思議だ。
同じくらいの体型の男の子がいて抱き締めたとしても、柔らかいと感じないだろう。
同性に抱きつきたいと思っているわけではないが。
「ふにゃあ……」
だらしない声を出し、絢音は力が抜けたようにもたれかかってくる。
どうやら場所を問わず力が入らなくなるらしい。
触られると全くと言っていいほど力が入らなくなるなど非科学的で、本来であれば起きることではないだろう。
だけど絢音は悠斗に触られてしまうと、真面目な彼女からは想像がつかないくらいにだらしない顔になって力が抜ける。
優那と一緒にいれる時間は減ってしまうが、絢音の顔は妹が甘えてくる時と同じ感じで可愛い。
「頭を撫でてください」
「はいよ」
断る理由もないので、悠斗は絢音の頭を撫でてあげる。
さらに顔はだらしなくなって蕩けていき、何で力が抜けているのか考えている余裕があるのだろうか。
今の表情を見る限り、とてもじゃないが何かを考えているようには見えない。
むしろ彼氏に甘えられて幸せな彼女……というのがしっくりくる。
昨日の夜に頭がポワポワすると言っていたので、後で考えるのかもしれないが。
「これは……ダメです。幸せ過ぎてずっと抱き締めていてほしい……」
(おい、あくまで確かめるためじゃないのかよ)
思わず大声を出してしまいそうになったが、漫画喫茶で声を荒げることは出来ないので我慢した。
力が抜ける代わりに幸せが襲いかかる……依存をしても仕方ないかもしれない。
ヤンデレ気質みたいだし、絢音は悠斗に依存してしまったのだろう。
恐らくこのまま押し倒しても、大声をだして抵抗するようなことはしない。
「悠くん、ずっとぎゅーってしててください」
もし、力が抜ける原因がわかったとしても、悠斗は絢音とイチャつかないといけないようだ。
女神様は俺に触られると力が抜けて蕩けるヤンデレ体質でベタ惚れになったらしい しゆの @shiyuno
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